温泉熱のポテンシャルを物語る「奥飛騨のドラゴンフルーツ」

世界第5位のエネルギー消費国でありながら、原子力を除いたエネルギー自給率はたったの5%という日本。しかし、まだまだ活用されていない資源があるのを知っていますか?

それは温泉熱です。全国に3,000カ所以上の温泉がある日本。エネルギー源としてこれを利用しない手はありません。すでに全国各地で、温泉熱を利用したさまざまな取り組みが行われています。

なかでも興味深いのが、岐阜県の奥飛騨です。温泉地として知られるこの地域では、10年ほど前からその熱を利用して、ドラゴンフルーツを中心に熱帯果樹を栽培しています。

th_ph_Dこれがその農園。しんしんと雪が降り注ぐハウスの中で、まさかドラゴンフルーツが栽培されているとは!

北アルプスや白山山系に囲まれ、高地特有の寒暖差のある奥飛騨は、豊富な水源にも恵まれています。地の利を活かした農業も盛んな地域ですが、どうして南国のフルーツであるドラゴンフルーツを栽培することになったのでしょう?

そんな疑問に「アメリカで食べたドラゴンフルーツの味が衝撃的だったから」とすこぶる純粋で明快な回答をしてくれたのは、現在30種以上(!)のドラゴンフルーツを栽培している『フルージック』代表の渡辺祥二氏。

日本ではイマイチなじみの薄い果物のせいもありますが、ドラゴンフルーツに対して「美味しい!」というイメージを持っている人は少ないと思います。渡辺氏によると「それは本当に美味しいドラゴンフルーツを食べたことがないから」だそう。

th_ph_Bハウスの内観。ドラゴンフルーツの実のなり方を見るのは、はじめてという人も多いのでは? こんなふうにできるんですね。

th_ph_E パイプに流れる真水(循環水)を温泉熱で温めるシステムが採用されています。

そこまで言われると「味わってみたい!」と思いますが、残念ながら(?)、この『奥飛騨ドラゴン』は市場にはほとんど流通せず、95%が地元で消費されているそうです。岐阜の山間地で、日常的に南国フルーツであるドラゴンフルーツが食べられているなんて、ちょっと想像がつきませんよね。

つまり、奥飛騨が誇る、国産ドラゴンフルーツが食べたければ、現地に行くしかないのです。観光農園としてもオープンしている『フルージック』では、5~6種類(時期により変動)ものドラゴンフルーツの食べ比べができるそう。

th_ph_Cこちらが実際のドラゴンフルーツ。見た目からも多様な種類があるのがわかります。

なお、ドラゴンフルーツの旬は、8~10月とのこと。お取り寄せも可能なので、お中元やギフトとしても珍しく、喜ばれそうですね。

奥飛騨ではドラゴンフルーツの栽培以外にも、スッポンの養殖、チョウザメを飼育してキャビアを生産したりと、知られざる新たな名産品が生み出されています。温泉熱のポテンシャルと奥深さに脱帽です。

地域資源で新しい取り組みにチャレンジすることは、観光資源へとつながると同時に地元の若者たちの活力にもなります……が、まずは難しいことを考えずに、『奥飛騨ドラゴン』を味わってみませんか?

●有限会社フルージック岐阜県高山市奥飛騨温泉郷栃尾952http://www.frusic.co.jp/※詳細はお問い合わせください。
フードクリエイティブファクトリー

「大切な人との暮らしをもっと楽しく」を企業理念とする食のクリエイティブに特化した企画制作チームです。食の企画、レシピ・商品開発、執筆、メディア出演、イベントなどを手がけています。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。