生命力あふれるモノクロ写真 額装なしの直貼展示で観るヨヘン・レンペルト国内初の個展
クレマチスの丘にある「IZU PHOTO MUSEUM」に行こう。
そこは、静岡県三島市に隣接する、花・アート・食がコンセプトの複合文化施設。庭園やミュージアム、レストランが集まっていて、ベルナール・ビュフェ美術館、ヴァンジ彫刻庭園美術館、井上靖文学館、そしてここで紹介する「IZU PHOTO MUSEUM」がある。現在、この美術館では、国内初となるヨヘン・レンペルトの写真展が開催されている。
レンペルトは、10年以上にわたる生物学研究を経て、ドイツ・ハンブルクを拠点に活動している写真家。動植物、昆虫、人間といった多様な生きものと自然現象をモチーフに、一貫してモノクロフィルムを用いた作品制作を行っている。自身でフィルムからプリントしており、そのアナログな質感から被写体の存在感を確かに感じられる。
生きものと自然現象がモチーフのモノクロ写真
その“質感”をじっくりと観る
この展示「Fieldwork — せかいをさがしに」では、額装をせず壁に直貼した作品が鑑賞できる。ストレートフォト、フォトグラム、フォリオグラムといった多様なアプローチでバライタ紙という厚紙にプリント。作品はテープを使って壁に貼り付けられている。
いわゆる、光が反射しにくいマットな仕上がりで、黒は深く、白は眩しい。中間色の灰色はしっとりとした落ち着きのある印象だ。印画紙そのものを自由に閲覧できるため、有機的でやわらかく、しゅっと背筋を伸ばしたくなるような堂々とした存在感を感じる。
科学的知見に支えられた記録写真としての情報とともに、あらゆる生命に対する温かな眼差しを感じる写真は、組み合わせて並べることでその関連性をもイメージさせる。例えば、眼球に似たベラドンナの実は、ある種の生物からは顔として認識されているという。そこにリスの写真を並べることで、人間とは異なる“見え方”を連想させるような作品もある。ぜひ会場で確かめてみて欲しい。
現代美術作家の杉本博司氏によって設計されたモダンな展示空間で作品を鑑賞した後は、国内美術館で初の個展を記念した限定1,000部の写真集『ヨヘン・レンペルト Field Guide』を手にとって見てみよう。学芸員によるギャラリートークでは、展覧会と作品についてわかりやすく解説してくれる機会もある。あわせてチェックしておきたい。
【展覧会概要】
■展覧会
「ヨヘン・レンペルト|Fieldwork — せかいをさがしに」
■期間
2016年10月28日(金)~2017年4月2日(日)
■営業時間
11・12月/10:00~16:30
1月/10:00~16:30
2・3月/10:00~17:00
4月/10:00~18:00
9・10月/10:00~17:00
入館は、閉館30分前まで。
■休館日
毎週水曜日(祝日の場合は営業、その翌日休)
2016年12月26日(月)より2017年1月6日(金)まで、クレマチスの丘の全ての施設は休業。
■会場
IZU PHOTO MUSEUM
静岡県長泉町東野クレマチスの丘347-1
(Google Map)
■ギャラリートーク日程
12月10日(土)
1月14日(土)
2月11日(土)
3月11日(土)
時間:14:15—(当館受付カウンター前集合、約30分間)
■料金
当日の入館券のみ、申込不要。
■webサイト
http://www.izuphoto-museum.jp/exhibition/217877468.html