麦雑穀工房からの贈り物。美しいクラフトビールを召し上がれ。
埼玉県の小川町に、茶色い屋根の建物が、ぽつんと建っている。「土地と建物は借りているけれど、それ以外のことは全て自分の手で作っています。なんでも自分でやらないと気がすまないんです。」麦雑穀工房(ざっこくこうぼう)マイクロブルワリー創業者の馬場勇さんはそう言って照れた。ガラガラと引き戸を開けると、工房の中は、エル字のカウンターやビール瓶などが、使いやすく誂えたキッチンのように調和されていた。
すっきりととのえられた明るい空間。
百の土仕事からはじまった、
ひとつのビールづくり。
馬場さんは、ある時、たまたまハイキングに訪れた小川町で、山の中腹から見下ろした里の姿に深く感銘を受けたという。子育てが落ち着いたら、自然が豊かな、空気のきれいなところで暮らしたいという夢を持っていた馬場さんにとって、この地はまさにぴったりの場所だった。「ああ、なんていいところなんだろうと思ったんです。」引っ越してから庭で作物を育てていると、そのうち、畑でやってみないかと声がかかるようになった。はじめは、野菜と果物だけだったが、そのうち穀類にも広がるようになり、憧れであった百の土仕事(百姓仕事)をはじめることになった。
手書き風の大きな文字が目印。
作物と対話を続けてきた馬場さん。
麦や雑穀は、籾摺り(もみすり)や精白、製粉など、ひとつひとつの工程に、とてもデリケートな作業が伴い、食べるところまでもっていくことがとても大変である。育てた麦や雑穀は、どのように利用していくのが良いのだろうか。製粉する効率をもっと上げたいと悩んでいた矢先、DIYショップで偶然見つけたのが、ビール缶だった。麦の利用方法はこれじゃないかと、ひらめいた瞬間だった。
穀類を美味しくいただくにはどうしたら良いのだろう。
理想のクラフトビールを
追いもとめて。
もともと別の仕事に就いていた馬場さんは、畑仕事とビールづくりを独学で学び、醸造免許取得した翌年に、58歳の時に退職した。そうして2004年に始まったのが、麦雑穀工房マイクロブルワリーだ。地域の原料を使って作るというのが地ビールという言葉の発祥なの
タンクはいつでもぴかぴかに手入れされている。
手づくりのパンと一緒に、
味わってもらいたい。
酵母からくる甘い香りが心地よい看板メニューの『雑穀ヴァイツェン』は、角のないまあるい味。大麦のほかに小麦、ライ麦、さらにアワやキビなどの雑穀も使って醸造された。ライ麦を加えることで、とろみがつき、やわらかくまろやかな味わいになったそうだ。タンクのはじめと終わりで味わいが変わる、生きているビールだ。
あっさりとして、とても飲みやすい。
店内では、ビールと同じ小麦やライ麦を使って造られた美味しいパンもいただける。アルコールが入っているかいないかだけで、パンの材料は、ビールとほぼ同じである。そう考えると、液体と個体のパンを両方味わえる場所とも言えるだろう。
やわらかいオリーブの食感が、ビールとよく合う。
ビールを日常的にいただくことを考えると、スーパーなどで気軽に手に入る缶ビールが一般的だろう。クラフトビールは、そのていねいな手仕事から、特別なもの、一部のビール好きのための嗜好品といったイメージが拭えない。たとえば、商店街の喫茶店を想像してもらいたい。地元の人たちが集まって、今日あったことや、未来のことについて話をする時、そこに、街のビールがあったらどうだろうか。
たった一杯のビールが、人と人、人と地域をつなぐ役目を担ってくれるだろう。こんなふうに、クラフトビールも、自分たちの味わいとして楽しんでもらえたらと願う。「大家さんは、細かいことはなんにも言わず、見守ってくれているんですね。ここが繁盛すれば、こんないいことはないって。」麦雑穀工房のビールを飲んだら、きっともっとビールが好きになる。そんな魔法にかかってしまうビールなのだ。
【イベント開催情報】
「TABI LABO YEAR END PARTY 2016」にて、麦雑穀工房マイクロブルワリーのおいしいクラフトビールがいただけます。ぜひ、お立ち寄りください。
日程:2016年12月18日(日)
時間:12:00〜14:30(11:30より受付開始)
場所:9STORIES
住所:東京都渋谷区元代々木町22-3
※イベント詳細、及び、お申し込みはコチラをご覧ください。