世界的トレイルランナーに学ぶ「食の考え方」

どのような食生活が合うかは人それぞれですが、世界的ウルトラマラソン・トレイルランナーVlad Ixelさんにとってのそれは「ヴィーガン」だったそう。

過去5年怪我なく走り続けている彼のスタイルを、米メディア「Gear Patrol」によるインタビューから紹介します。

ランニングを極めるため
煙草と肉を断った

鶏のムネ肉を食べなさい、エビを食べなさい、ホエイプロテイン(牛乳を原料としたプロテイン)を摂りなさい、バランスの良い食事をしなさい。スポーツ業界では、このような言葉が行き交います。

ただ一番パワーを発揮できる食事は、人によって違います。例えば、健康を保ちながらエネルギーを増加させるには動物性食品をカットするのがベストだ、と言われたらどうでしょう?まさにそう主張するのは、ウルトラマラソン・トレイルランナーであるVlad Ixelさん。彼は肉を断ち、ランニングとヴィーガニズム(完全菜食主義)にどっぷりハマりました。

彼のライフスタイルはどんなものなのか、走るときに気をつけていることは何なのか。その謎を探ってきました。

ーーヴィーガニズムはいつ始められたのでしょう?アスリートとして、必要なエネルギーを摂取するのに苦労しませんでしたか?

始めたのは、4年半前です。ちょうどクリスマス辺りに「まずは2週間」と決めて、試してみました。そうしたらたったの2週間で活力が増し、よく眠れるようになり、トレーニングやレースからの疲労回復も早まったんです。以来、ずっとヴィーガンですね。

最初の3日間は何を食べればいいかわからなかったので大変でしたが、以前よりよく眠れるようになったので、エネルギーだけはありました。あとは、以前まで奮闘していた昼食後の疲れも消えましたね。

ーーヴィーガンを試してみようと思っているアスリートに、アドバイスをお願いします。

まずは一度試してみるといいと思います。2〜4週間ほどやってみて、体の反応を見る。友だちや家族など、お互いに励まし合える人と一緒に始めて、サポートし合えるとなおいいでしょう。

ーーレース前は何を食べていますか?

過去130のレースでは、ピーナッツバターをぬったパンとバナナがお決まりでした。でも最近は炭水化物を減らして脂質を増やそうとしているので、パンを少なめ、ピーナッツバターを多めに。あとはアボカドも付け足してみようかな、と考えています。

ちょうどこの炭水化物少なめ・脂質多めスタイルを試している最中なので、レース前もこちらに切り替えてみようかなと。

ーー長距離のランに必ず持参する食べ物は?

トレーニングの際には、何も持たないようにしています。なので30km以下のランには、ほとんどの場合、食べものも水も持っていきません。30キロを越えるようであれば、ほんの少しのお水と、エナジージェルをいくつか持っていきます。個人的にジェルはあまり好きではないのですが、ほんの少しの量で適度なエネルギーが摂取できるので手軽なのは確かです。

ほとんどのランは、朝食抜きで走ることが多いですね。そうすることで、体は食べ物に頼らなくなりますし、炭水化物でなく脂肪を燃やせるようになるので、脂肪燃焼にも効率的です。この食生活を私は数年前から実践していて、長距離を走る方には特におすすめですね。

ただしこれは、6ヶ月以上かけてゆっくり慣らしていった食生活です。私は、1週間の長いマラソンの時に試しました。何もお腹に含んでいない状態で臨み、始めは10キロほどの地点でエネルギーを摂取しました。その後半年から9ヶ月ほどかけて、徐々にその距離を40キロへと延ばしていった感じです。

日々の小さな積み重ねが
誇らしい結果に繋がった

ーーヴィーガンになってから、ランナーとしてより良い結果を出せていると感じますか?

回復力が早まったおかげで、より質の高いトレーニングに取り組めるようになったので、その点ではランニングも強化されたと思います。あとは体重が落としやすくなりましたね。何せ体重と体力の比率がすべての世界ですし、1キロ落とせるだけでレース中に運ばないといけない体重も減るのですから。

私が思うに、ヴィーガンは20歳を過ぎてからランニングを始めた人に効果的なのではないかと。10代の頃からランニングをしてきた人は、成長期から鍛え上げているので、その過程で回復力に磨きをかけられていると思うんです。すでに必要な素質が揃っているから、20歳を過ぎてからランナーになった人ほど明確な変化は感じないかもしれません。

ただ、ある程度年齢を重ねてからランニングを始めた人がヴィーガンになると、「回復力の早さ」が著しく変わるため、ランの結果向上には効果的です。

ーートレーニングの基本的なスケジュールを教えて下さい。

トレーニングの最も大きな要素は、走ることです。トレイルランニングとロードランニングの両方を織り交ぜながら、週に大体120〜150キロほど走ります。

あとは体にあまり負担がかからないトレーニング(クロストレーナーやバイク)を週に数時間やります。これは、いわば日々のランニングに休息をいれるようなトレーニングですね。あとは週に数時間ほどジムに通って体力をつけたり、安定力を鍛えたり。それからヨガなど、体を回復させる時間を1日の後半に取り入れています。

基本的なスケジュールは、こんな感じです。 

朝: 15キロ走る – あるスキルを重点的に磨くトレーニング (坂、スピード、テンポなど)
午後・前半:10キロ走る
午後・後半:ジムに行く
夕方:ヨガなどをして回復

ーーランナーになってから、最も達成感を感じた出来事を教えて下さい。

ランニングを始めた5年前から、煙草を断ち、年に5000〜7000キロほど走ってきました。過去3年で130以上のレースに参加し、ほぼ100回は表彰台に立つことができました。うち50レースは優勝です。もちろん、その間の怪我はゼロです。

ちょうど走り始めたばかりの頃、私は食生活や通常トレーニング、筋力トレーニング、回復トレーニング、睡眠、ランニングに適した靴、フォームなど、ランニングに関連することについて調べ尽くしました。どの分野においても「ベスト」を取り入れるようにしたんです。食生活においては、ヴィーガンがベストだとわかりましたし、靴においては、足の体力をフルに使い、裸足ランニングを強化できる、機能が少ないシンプルなものがベストだとわかりました。

これまでの私の目標は、様々な角度からランに磨きをかけて、怪我をせず走り続けることでした。なので、一度も怪我をせずに5年間走り続けてきたことが最も大きな成果ですね。

あとは、昨年オーストラリア代表としてIAUワールドトレイルランニングチャンピオンシップで25位を勝ち取ったことが、一番誇らしいことです。

Licensed material used with permission by Gear Patrol
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。