宅トレをみんなの日常に。パーソナルトレーナー・門脇妃斗未インタビュー
目次
私たちは忙しい。
お金と時間は、いつも足りない。
だけど、自分の体のことを考えてあげる時間は絶対に必要だ。なぜなら仕事、旅行、生活、趣味、どれをとっても「体が資本」だから。健康な体は、ただ痩せているというだけじゃない。本当の意味で健康な体を手に入れるべく、まずは自宅で簡単に取り入れられるトレーニングをSNSやYouTubeなどで紹介し、人気を集めているパーソナルトレーナー・門脇妃斗未さんにお話を伺った。
「下半身太り、O脚、短足、扁平尻、土偶のようなスタイルだった私は、痩せたら綺麗になると信じてた。痩せて手に入れたのは摂食障害だった。昔の私のようにならないで!綺麗になる方法は食べて動くこと」
そんなメッセージを発信している彼女の、自身がトレーニングで大事にしていること、トレーニングをしている人へのメッセージやアドバイスなど。
パーソナルトレーナー。YouTubeやInstagram、Yahoo!などで、自宅でできるトレーニング動画を配信。2019年には、DMMオンラインサロンも開設し、ダイエット中の食事の相談なども行なっている。明るいキャラクターと、ユーザーに寄り添う指導が大好評。著書は「なかなか痩せない人程、脂肪がどんどん燃える 燃焼系HIITダイエット/PHP研究所」。愛猫は18歳のオス猫・GOちゃん。
HP:HIIT ME FIT
多くのダイエット失敗を経て
たどり着いた「筋トレ」
——門脇さん自身も、過去に何度もダイエットに失敗した経験をお持ちですよね。
「私もダイエット歴は長くて、食事をメインにありとあらゆるものを試しましたよ。バナナ、リンゴ、トマトスープ、マイクロダイエットなど……。
子どもの頃から器械体操をやっていたので、痩せなければならないというのが体に染み付いていたんです。すごく体格が大きくて、合宿でみんなに出るおやつが私には出ませんでした。水も飲めなくて、サウナスーツだけひたすら着せられて、我慢。でもそれが当たり前と思っていたから嫌ではありませんでした。
20代前半には食生活アドバイザーの資格をとって、自分の身長・体重にあった栄養やカロリーを摂りながら、体重をコントロールできるようになったんですが、そのあと“無茶食い症候群”に。砂糖、小麦粉、ソースレベルのものまで全部平らげようとするんです。それが、25〜26歳まで続きました」
——最終的に正しい道を見つけられたきっかけは何だったのでしょうか。
「通っていたジムで、初めて“筋トレ”を始めたんです。そしたら、メンタルの安定もあったし、食べても太らない体になったことに気づいて。そこから、筋トレをひたすらやるようになりました」
得意なことと経験を活かして
選んだトレーナーという仕事
——その後、トレーナーになって「人に教える」という職業を選んだ理由は?
「29〜30歳頃までは、何の仕事が合っているのかすごく悩んでいました。手に職をつけたいと思って経験したワーキングホリデーを通して、好きなことより“得意なこと”をした方が良いという考えになったんです。
自分の得意なことは“運動”。だから、ネットでひたすら運動のキーワード検索をしてみたら、ダイエットパーソナルトレーナーという職業があることを知りました。その指導をしている人のサイトを見たら、まさに自分がやりたいことだった。
だからすぐにその方に連絡をとって、働きながら知識を覚えることはできませんか?と尋ねたら、キャリアや持っていた資格なども助けになってOKがもらえたんです。いろんな知識を持った方でとても勉強になったんですが、私には小さい頃からトレーニングの経験があったので、この時改めて勉強しながら、まるで答え合わせをしているような感覚がありました。この動きってこういう意味があったのか、とか」
——トレーニングをする上で&教える上で「大事にしていること」は何ですか?
「私は運動が得意だけど、得意じゃない方に教えることが大半。相手の立場に立って、その人がどういう覚え方が得意なのか、今何が必要なのか、というのを考えるようにしています。
例えば私が『お腹を締めて』という指示を出して、相手が意識しているつもりでも、実際に見てみると、締まっていないことが多い。でも『お腹小さくして』『お腹へこませて』と言うとみんなできるんです。と思ったら、年齢層が変わると、『お腹を締めて』の方が伝わりやすかったり……。
こういった、現場で実際に起こったことなどは、今動画を配信したりオンラインで指導をしたりする時に活かすようにしています」
自宅トレーニングのメリットは
お金や時間をかけずできること
——門脇さんは今、ジムではなく、オンラインで自宅でのトレーニングを指導していますが、そのメリットを教えてください。
「健康って、本来お金がかからなくても手に入らなきゃいけないことだと思うんです。外に通いに行くと、時間やお金がかかってしまう。お金を持ってない人が健康になれないってことは、絶対ない。
例えば産後のママって、時間もお金も厳しいかもしれない。でもそんな方こそ大切な体。
基本的な体の管理や、自分の体を維持する基本的な筋肉を作るトレーニングは、全員が周知していてほしいんです。それも、一日5分とか10分とかささっとできるもので維持できるのがいいと思うんです」
——トレーニングを、特別なものじゃなく、“日常のこと”にするという感じ。
「そうです。だって、健康なことって、何よりも大切。元気な体があって全てが始まるから。なのに、何でみんなに知識を周知する環境が当たり前のようにないんだろうって思うんです。自宅トレーニングなら、いつでも、たとえ部屋が狭くてもできることがたくさんある。
それと、わからないことだったり、やったことがないものって、“大変”ってイメージがありますよね。でも実際はそうじゃないし、必ずしもツライ思いをしたから結果が出るというわけではない。楽しい範囲で終わらせても、結果は出ますよ」
——門脇さんのオンラインサロンでは、個人の相談などもできるんですか?
「できますよ。コメント欄で、悩みを会員のみなさんとシェアできるので、自分が相談するだけでなく、聞けなかったことを誰かが聞いてくれたりもするんです。気楽に世間話をしているみたいな感じだけど、エクササイズ、食事、メンタル的なこと、ちょっとした気になることなどだいぶ幅広く出ていてとても参考になると思います」
家にある「アノ」家具でも
トレーニングはできる
——ちなみに、どこの家にもあるようなツールで、「トレーニング器具じゃないのに」実はトレーニングに使える!というものってありますか?
「何でも使えますよ!例えばツール。その上に仰向けになって腹筋をすれば、床の上でやる時よりも筋肉を伸ばしてから収縮させられるからすごく効く。
四つ這いで乗って足を上に蹴り上げるお尻のエクササイズでも、そのままの四つ這いだと、腰を痛めることがあるけど、ツールの上に乗ってやると、その心配はないのでおすすめ。
ベッドは、上に乗ってスクワット、ランジなどをすれば、足元が不安定で揺れるので、バランス系のトレーニングになって体幹を鍛えられます。クッションの上なども同様です」
——外出先でも意外なものを使ってできるトレーニングがあったりして?
「はい。公園のイスではディップス(後ろ向きで手をついてプッシュアップ)ができるし、階段ではクロスランジ、バーがあればプッシュアップやストレッチもできます。
それから、よく旅先で、バッグをウェイトがわりに使ってトレーニングしてたりもします。女性のバッグって、下手すると4〜5キロくらいになるので(笑)」
トレーニングで変わるのは
「見た目」だけじゃない
——今までトレーニングをしていて起こった「素敵なこと」って何ですか?
「食べても食べても痩せる体、トレーニング頻度を減らしてもキープできる体が手に入ることですね。本当にいいことづくしです。
でもそれ以外にもあって、人前でトレーニング教えるようになってから、こんなに私の体をいいねって言ってくれる人がいるんだと知れたのは驚きでした。私自身は受け入れていたんだけど、自分の体に自信があったわけではなかったから。雑誌とかテレビを見れば私より細い人がたくさん出ていて、いい体と言われていて、こういうのが世の中に求められている体なんだろうなとは思っていたから。
でもSNSの中の話なのかもしれない。個性的な方が評価されるふしがありますから。ユーチューバーも変わった方が多いですもんね(笑)」
——【食事編】でも伺いましたが(近日公開)、トレーニングをして得られるものって、筋肉がつくとか、脂肪が燃えるとか、体の表面的な話だけじゃなく、内臓とか、内面の働きも良くなるというのも意外でした。
「心臓の動きが強くなるので、末端まで栄養や酸素を流すことで免疫力もUPします。一回でも動いたら、本当に細胞に変化があるんですよ。内臓もだけど神経にも刺激が与えられるから、一瞬でも試しにやってみればいろんな効果がある。無駄なことなんて全然ないんです。
頭も使うなって思います。だからメンタルに影響する部分も大きいんでしょうね。普段事務仕事などをやっていて笑うことが少なかった人も、たくさん笑うようになったりもするんですよ」
——門脇さんは、ちゃんと向き合ってくれるトレーナーさんという感じがします。トレーナーさんによっては、置いていかれるような気持ちになって焦ることがあるけど、後ろ向きになった時でも、見逃さずにちゃんと手を引っ張ってくれる感じがする。
「そう思ってもらえると嬉しいです。でも私の言うことって、昔から世の中に反抗しちゃうようなことが多いんですよ。最近やっと食べることの重要性が言われるようになって来たけど、未だに食事制限とか、糖質オフを良しとする方がいっぱいいる中で、食べろ食べろと言ったり。
以前所属していたジムでも、他のトレーナーたちと正義が合わずにぶつかったこともありました。減量を目指していたお客さんに、状況を考慮し食べるようにアドバイスしたんです。
現場では猛反対にあった。でも、その方が何年か経って私を追いかけて来てくれて、やっぱりあの時のやり方が正しかったと言ってくれましたよ」
——正しいことを最初に言う時って反対の声がつきものだったりもするけど、絶対にみんなが気がつく時がやってくる気がします。
「怖かったりもしますもんね。減量してるのに食べるのって、怖かったりもする。でもそんなにずーっと食べ物のこと気にして生きてくなんて、嫌じゃないですか。考えることで余計にストレスになって、太っちゃったりしそうですよ!」
——定期的にインスタで発信してくれるメッセージにも、勇気付けられている人は多いと思います。(私は2020年2月10日の投稿が好き)
「うまい文章はかけないから、思うことをそのまま書いています。今はどこかに所属しているわけでもないから言いたいことも言えるし、皆さんが不安に思っているだろうなと思うことは大丈夫って言って応援してあげたい。
やっぱり、トレーニングはどのくらいやれば変わるの?っていう質問が多いんですが、ちゃんとやれば、直後から効果は出ますよ!」
【おまけ】
Instagramに度々登場する
“アノ猫”の正体
——じつは、門脇さんのインスタに度々登場する猫さんがずーーっと気になっていました。
「GOちゃんといいます。今18歳。私が19、20歳あたりの時に、ペットショップに捨てられた子たちが2000円で売られていたんです。そのうちの1匹だけ毛も薄いし涙もすごいしシッポも曲がってるし、ガリガリで、明らかに売れ残りそうだった。ちょうど映画(GOという作品)を観に行く前だったから、帰りにまた見てみようと思って戻ったら本当に残ってて。
ペットショップの人にも、この子は病気がありそうだし命の保証はできないよと言われたけど、どうせ死ぬならうちでの方がいいかと思って連れて帰ったら、2年くらいした頃からブクブク太っちゃって。大事なのは愛情ですね(笑)。たまにあげるサーモンのステーキ(刺身を焼いたもの)が大好きです」
——門脇さんの足裏に乗ってバランスを取ってる動画も。すごくデキる猫さんですよね。幼少期からアシスタントニャンコとして、トレーニングを重ねていたわけではないんですか?
「ないです(笑)。ゴーちゃんは高いところが好きなので、気分を良くさせるためのコミュニケーションとして、4歳頃から足裏に乗せて高い高い〜ってやってただけ。
あの動画も、わざとじゃなくて遊んでる時に撮りっぱなしになってたもので、あとでこれ使えるかもと思って投稿しました。
でも動物って、見てると勉強になりますよね。体の機能とか習性とか、私たちとの共通点も多い。一番大事な、生物としての根本を改めて考えさせてくれるから、彼らを見ているとトレーニングやダイエットなどの余計な情報やおかしな情報に左右されなくなりますよ」
——そういえば前職の上司が、「猫の飼い主はみんなデブだからな」って失礼なこと言ってたんですが(そんなことないもん!)、確かに猫と一緒に居たいと思えば思うほど出不精にはなるから、運動不足にはなりがちだなって……。
「あ、そういう時も自宅トレーニングはいいですよね。猫がよければ、ウェイトにもなってくれますもんね(笑)」
『HIIT ME FIT』
【DMMオンラインサロン】https://lounge.dmm.com/detail/2172/
【公式ホームページ】https://www.hiitmefit.com/
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