え、豆からも「ダシ」が取れるの?
和食の基本となる「だし」。その材料にはかつお、昆布、煮干し、干ししいたけなどが使われるのが一般的ですよね。でも、「豆」からもだしが取れるって知っていましたか?『キレイの秘密、「豆」生活」。 』 (幻冬舎)では、豆からとる「精進だし」が紹介されています。
豆を水煮したときのゆで汁がダシになる。
だしにはさまざまな種類がありますが、そのひとつに「精進だし」があります。この精進だしのルーツは禅寺で食べられる精進料理にあります。精進料理では動物性の食材、いわゆる「なまぐさもの」を避けます。そのため、一般的なだしとして馴染みがあるかつお節や、いりこの煮干しなどは、精進料理では使えません。そこで、植物性の素材だけを使ってだしをとります。それが、精進だしです。
じつは、昆布だし、干ししいたけだしは、私たちにも馴染みのある精進だしの一種です。これらの植物性の食材でとるだしは、動物性の素材に比べるとうまみが穏やかなので、複雑味をプラスするためにほかの素材と合わせて使われることが多いです。
たとえば、かんぴょうや豆を、昆布、干ししいたけといっしょに一晩水につけ、じんわりと味を引き出します。翌日、すべての材料ごと火にかけ、數十分煮たら、滋味深い精進だしの完成です。さまざまな素材から出る独特の香りとうまみが溶け合って、淡く、やさしい味わいのだしとなります。禅寺では、このだしで野菜を煮含めたり、炊き込みごはんを炊いたりと、さまざまな料理に活用します。かつおやいりこだしのように、分かりやすいうまみとは違いますが、料理のすぐれた下地となってくれるだしです。
また、豆腐に塩をまぶして干した保存食を、精進料理ではかつお節の代用品としています。これは、「精進ぶし」とも呼ばれ、山形県では「六浄豆腐」という名前で今も製造・販売されています。
つまり、豆からも、だしがとれるということ。豆を愛する私としては、豆のだしがあまり世に知られていないことは、とても残念なことだと思っています。
豆だしを簡単に味わうには、豆を水煮したときの茹で汁を一口飲んでみるのがいいでしょう。豆の甘み、うまみが溶け出してなんとも深い味わいとなっていることに気がつくはずです。イタリアではいんげん豆の茹で汁をソースとして使うパスタ料理もあるようです。きっと豆がおいしいだしとなっているのでしょう。
大豆を水煮にしたら、ぜひ、茹で汁も捨てずにとっておいてください。かつおだしで煮物をつくるときにちょっと加えるだけでも奥行きがプラスされ、さらに料理がおいしくなるはずです。