2023年に「僕が絶対行きたい博物館」――ベンのトピックス

2023年に「僕が絶対行きたい博物館」――ベンのトピックス

ニューヨークのブロンクスに新しい博物館がオープンします。

読者のみなさんは「どうしてベンは、東京から1万kmも離れた場所にできる建物を紹介するのか?」と思うかもしれません。だけど、きっとみなさんもこのプロジェクトには興味があるはずです。ここで展示されるのは、古代の歴史ではなく、ハイアートでもなく、ヒップホップです。

「The Universal Hip Hop Museum」は、ヒップホップが生まれて50周年にあたる2023年にオープンします。(ヒップホップって結構おっさんだよねw)

この記事では、1973年に生まれたムーブメントとそれを歴史として伝えることの重要性を僕なりに書きたいと思います。

ヒップホップのパーティーは、ディスコのライブよりも簡単だった

1973年の前にも、ビート、リズムやベース音がある音楽もあり、スポークン・ワードとラップを使った音楽もあり、ギル・スコット・ヘロンのようなジャズポエマーもいました。

だけど通説によると、「ヒップホップ」 という概念は1973年8月11日の夜に生まれたと特定することができます。

その日、クライヴ "DJ Kool Herc" キャンベルは、妹の新学期パーティーでDJをする約束がありました。場所はブロンクスのアパートビルの娯楽室。少ない人数の小さなパーティーでしたが、革命的な一夜になりました。

DJ Kool Hercは2つのターンテーブルを同時に使って、新しい「ブレークビート」を作りました。そのテクニックは、当時人気があったディスコミュージックを永遠にダンスができるビートへと変えることができるものでした。そこからDJの想像力によって、いつでもどこでもダンスできる音楽が作られる、そんなムーブメントが生まれました――これがいろんなところで語られるヒップホップの誕生です。

黎明期の「オールドスクール・ヒップホップ」は、単なる音楽、ダンス、ファッションだけのカルチャーではありませんでした。それは社会的、経済的に恵まれない若者にとって入りやすいコミュニティ(accessible community)でした。

当時のブロンクスはいわゆるスラム街。そこで行われるヒップホップのパーティーは厳しい現実からの脱出だったことが想像できます。だから、DJ Kool Hercの初めてのパーティーのように入場無料、ストリートでの「ブロック・パーティー」が中心でした。ディスコのライブには、ライブハウス、楽器、バンドメンバーなどいろいろ必要です。だけど、ブロック・パーティーは簡単です。

DJ+ターンテーブル=オールナイトパーティー!

© Naomi Nemoto

個人的にヒップホップという文化がとても優れていると思うのは、自分の状況や人種のアイデンティティについて声をあげることができなかった人たちに新しいプラットフォームを提供したことです。

70年代という時代を想像してみましょう。50〜60年代のアフリカ系アメリカ人の公民権運動があったとはいえ、社会はまだまだ不平等だったはずです(残念ながら今も)。そこに登場したのがヒップホップです。

進化したこの文化は、80年代には小さなコミュニティから飛び出し、ヒット曲を生むようになりました。

カーティス・ブロウの「The Breaks」 (1980年) は、ハードな日常についての曲だし、グランドマスター・フラッシュ・アンド・ザ・フューリアス・ファイヴの「The Message」(1982年)はニューヨークでのライフスタイルを過酷なジャングルに例えた曲です。この2曲はどちらもノリがよくて聴きやすくてとてもポップだけど、リアルな社会問題に関係するラップソングになっています。

その後に続いたエリックB&ラキムや90年代の2パックやノートリアス・B.I.G.などからもわかるように、ヒップホップは、リリック(歌詞)が上手いMCたちとレアなサンプルを使うDJたちがリスペクトされる文化へと進化していきました。ヒップホップは単なるノリのいい音楽じゃなくて、誰でもに知性的に、芸術的に自己表現ができるツールになっていったのです。

現在では、ヒップホップは商業的にもロックを超えています。僕はこれを必然だと思います。現在のロックスターは60年代から90年代の音楽にならっています(もちろん進歩的なミュージシャンもたくさんいるけれど、全体像としてはそうでしょ?)。だけど、ヒップホップはいつも前向きで、その時代のリアルを反映している音楽だからです。

そんな進化を続けるヒップホップは、ブロック・パーティーの時代と現在で見た目としては全然違うけど、その精神性は通じることがあると思います。

90年代にヒップホップを発見した僕と1973年にDJ Kool Hercのパーティーを体験したブロンクスの若者たちにはきっと繋がりがあります。だから2023年にオープンする「The Universal Hip Hop Museum」は、とても重要な役割を担っていると思うのです。

博物館の理事はカーティス・ブロウです!

この博物館の理事を務めるのは、伝説のMCカーティス・ブロウです。

下の動画は、米テレビ番組の『ソウル・トレイン』でのライブパーフォーマンス。曲はもちろん「The Breaks」です。

70年代のヒップホップのカッコよさが凝縮されてますよね!

(もしもみんなが興味あれば『ソウル・トレイン』は、将来のベンのトピックスになる可能性もあります)

Top image: © Naomi Nemoto

ベンが書いた、ほかの記事はコチラ

世田谷在住のイギリス人・ベンのトピックス読んで!
ニューヨーク市議会によって、ヒップホップの聖地でもあるブロンクス地区に建設される複合施設に『Universal Hip Hop Museum』と名付けられ...
みなさん、ベンのトピックスにお帰りなさい!今日はベンの告白の日です。イギリス人のイメージと言えば紅茶ですよね。綺麗な庭での優雅なアフタヌーンティー、真冬の...
2019年のフェスティバル・シーズンのピークになってますよね!今週、ベンはサマーソニックに行ってきます。で、 今回のトピックはベンが何回も行ったことあるし...
ことわっておくと、僕はヴィーガンではありません。肉が大好物だし、牛乳もたくさん飲みます。けれど、ヴィーガンへの理解を深めたいと思っているひとりです。
もしも2〜3年前にペルー料理の名前やうまいペルビアン・レストランの名前を挙げろと言われたら、きっと僕は「セビチェ……」としか言えなかったと思います。しかし...
みなさん、ベンのトピックスですよ!今回のトピックは、いま世界中のシングルさんの日常生活に普通にあるものについてです。ということで、テーマは「マッチングアプ...
僕がこの記事の中で「Love Symbol #2」を使っていることをお許しいただけるといいのですが……。
みなさん、ベンのトピックスにおかえりなさい! 今日のトピックは、日本メディアですでに話題になっているけど、この記事で違う視点で紹介したいっていう内容……...
恋愛が似合う街、パリ。これに頷けるかどうかはさておき、チュイルリー庭園やルーブル宮殿、エッフェル塔やモンマルトルの眺望にロマンティックのかけらもないという...
日本でも80'sカルチャーが見直されていますが、それはヨーロッパでも同じ。エリオ・フィオルッチによって1967年に設立されたブランド「FIORUCCI(フ...
「Professor of Hip-Hop」の名前で知られているA.D. Carsonは、ヒップホップが研究分野。Ph.Dを獲得したクレムゾン大学に提出し...
「シークレット・シネマ(Secret Cinema)」は、ファビアン・リガルがロンドンで始めた映画上映アトラクションです。2007年にスタートしてから、観...
シャネルが、ファンデーション、アイブロウ・ペンシル、マットな仕上がりの保湿リップクリームの、3つの製品で構成される「ボーイ ドゥ シャネル」を立ち上げまし...
ハロウィンが終わると、ほとんど日を置かずにクリスマスの気配が漂い始めます。お店にはクリスマスのための新商品が並び、食品陳列棚もクリスマスの食べ物、至るとこ...
僕はいまでもApple iPod Classicをつかう古い人間なのかもしれません。ただ、リスニングコンテンツを楽しむのは、イギリス人でもけっこう早くから...
僕は新しい環境に慣れるのは上手なほうだと思いますが、それでも大学に入学した頃はつらかったし、TABI LABOで働き出した時もつらかった。もっと若い時には...
日本でも話題となった「#MeToo」のムーブメント。ショッキングな事例が次々と明らかになりましたが、問題はもっと根本的なところにあると考える女性たちも多い。
ロンドン市民でさえほとんどの人はその存在を知らないと思います。自分たちの大切な文化だというのに!
世界最大級の大英博物館で、2019年、大規模な日本の漫画展が開催予定!展示内容は、ポケットモンスターやONE PIECE、ボーイズラブまであるとのこと。
人気のある音楽ジャンルと聞くと何を思い浮かべるでしょう。ポップスか、はたまたロックか。音楽史において最も影響力のあるジャンルとは一体…。これは、2015年...