マフィアに愛された「タルト」。失敗のはずが、なぜ大成功に?
ナポリの真南、ティレニア海に浮かぶ小さな島・カプリ島。イタリアきっての観光地「青の洞窟」でも有名なこの島が発祥のチョコレートタルトがあります。その名は「トルタ・カプレーゼ」。
小麦粉をはじめ、穀粉をいっさい入れないでつくる珍しいレシピに、健康意識の高い欧米人たちは、「グルテンフリーのケーキ」として注目しているようです。
さて、ここではトルタ・カプレーゼのレシピ、ではなくこのタルトの誕生秘話にご注目。起源について諸説あるようですが、「Food 52」で紹介されていたマフィアと密接な関係のあるこのエピソードが最高。
マフィアとスイーツの
蜜月な関係
それは、今からおよそ100年前1920年代のこと。3人のイタリア系アメリカ人のマフィアたちが、風光明媚なカプリ島を訪れた時のこと。
彼らはボスであるアル・カポネの命を受け、この島にスパッツを買いに来ていました。今のものと違い、当時のスパッツは短い靴の上からかぶせるように装着するもので、19世紀末から20世紀初頭にかけてファッションとして流行していました。
ピンストライプ地のスーツにフェルト製の中折れ帽、そしてこのカプリでつくられる白いスパッツが、この時代のアル・カポネのトレードマークだったようです。
致命的なミスから一転
結果オーライが生んだ味
さて、この島には腕利きのケーキ職人がいました。Carmine di Fioreがその人。ある日、彼はアメリカからやってきた例の3人に、チョコレートとアーモンドのタルトをつくることに。
そこで、ある事件が起きたのです。
じつはCarmine、マフィアたちの雰囲気に萎縮した訳ではないでしょうが、本来ならば材料に入れるはずの小麦粉をうっかり入れ忘れたことに気がつかず、タルトを焼いて彼らに提供してしまいました。
ボウルに用意されたままの小麦粉を目にしたときは、すでにあとの祭り。すると、テーブル席からCarmineを呼ぶ声が。自分の失態を責められる、きっと生きた心地がしなかったはず。なんせ、タルトを振舞っているのはフツーのお客ではないのですから。
ところが…失敗は成功のもと?マフィアたちは、これまで口にしたこともない甘く濃厚なタルトをいたく気に入り、Carmineを厨房から呼び出してまでレシピを聞きたかったと伝えたそう。
外はサクサクの食感、なのに中は驚くほどにしっとり。この日、マフィアが感激した味こそ、のちにトルタ・カプレーゼと呼ばれるものだった、というお話です。
5つの材料を混ぜて焼くだけ
アーモンドプードル(粉末にしたアーモンド)にチョコレート、バター、砂糖、あとは卵。すべて同じ量にして混ぜて焼くだけ。レシピなんてなくてもOK、材料さえ覚えておけばすぐにだって作れちゃうはず。一応、丁寧につくり方を書いてくれている、Emiko Daviesさんのレシピをこちらに。
シンプルながらデカダンを漂わす見た目とユニークなエピソード。今度はブラウニーでなく、こちらを試してみてはいかがでしょう。
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