大阪でただひとり。現役「刀鍛冶」が、包丁を鍛錬する姿を見にいこう。
あなたは今、どんな庖丁(ほうちょう)を使っていますか?きっと、百貨店やスーパーで販売されている量産品のものを使っている、という方が大半だと思います。今回のテーマは、そんな毎日の食卓を彩る「庖丁」について。
伝統技術により、ひとつずつ手作業でつくっている風景を撮影させていただきました。
人の手によってしか
生み出せないもの
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さまざまなものが機械化されている現在においても、人の手でしか作ることができないものが、まだまだ数多くあります。先祖代々受け継がれてきた伝統技術も、その最たる例です。
大阪府堺市で鍛冶職人として活躍している水野淳さん(40歳)も、そのうちのひとり。今では大阪で唯一の現役刀鍛冶でもあり、「水野鍛錬所」では、毎年11月に刀の公開鍛錬も行なっています。
ちなみに、堺市は昔から刃物が有名で、大阪市と堺市を結ぶ路面電車の沿線には、昔ながらの町並みもまだまだたくさん残っています。そのフォトジェニックな風景を求めて町を歩いていると、海外からのお客さんとすれ違うことも少なくありません。
くいだおれの街「大阪」。その名を根っこから支えているのは、この「堺の庖丁」なのではないか、と水野さんの姿を見て感じたのです。
「うちの庖丁を持ってもらったら、何年も使ってもらえるから。もう一生もんやね」
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こちらの写真、右から順に庖丁の加工工程順に並べられています。鉄を熱し、 鋼を付けたあと850度に熱しながら鍛錬し、ベースとなる形を作っていきます。
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「いい庖丁がプロの料理人の腕を引き立たせてくれるからね。板前さんの人生がかかってるわけやから、ボクらも丁寧に作っています」
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響く音と対話するように熱した鉄を叩く姿は、思わず息を飲みます。
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「自分で言うと嘘になるかもしれないけど、まぁまぁ修行はやったかなぁ(笑)。やっぱり失敗もするしね。失敗を繰り返してうまくなっていくものだから」
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水野さんは、「鍛冶職人」という職業について広く知ってもらうための活動も盛んに行なっていて、旅行会社のツアーや、修学旅行で訪れた学生に対しての作業現場の見学なども随時受け付けているそうです。
「修学旅行生の引き受けも、ボクの代から始めたんです。地場産業として、こういう仕事もあるんですよ、って知ってもらうためにね。社会奉仕の一環です。大人の遠足みたいな感じで、今日はこのあと40人来るんよ。役所が観光名所にしてくれてるらしいわ」