ベッドが上から降りてくる?スペースが2倍になる「空間デザイン」
小さな空間を贅沢な別荘にするために、オーナーである建築家が考えた工夫とは?今回は、巻き上げ式ベッドや折りたためるテーブルなどの巧みなアイデアで、スペースを有効活用したリノベをご紹介。
フレキシブルに形が変わる
心地のよい住まい
シチリア島東海岸に面した広さ25平方メートルアパートメントを、別荘として改装した建築家のレナート・アリーゴさん。このスペースのなかに、4人家族が便利で快適に暮らすために必要なものは、ほとんど備わっている。
このプロジェクトの主要テーマは「フレキシビリティ」だ。家具が壁がフレキシブルに消えたり、形を変えたり、広がったりしながら、空間の美しさと機能性を失うことなく、家族や友人たちが心地よく過ごせる住まいをつくり出している。
![「フレキシビリティ」ベッド](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/92693/e18410b6bc54f7fcdb37a51b464c5cbd279cce49.jpg)
Photo by Houzz
今回リノベした家は?
・住まい手:建築家レナート・アリーゴさん、奥さまでエンジニアのナタリー・モリーさん、娘さんのエヴァさんとオフィーリアさん・所在地:イタリア、シチリア島にある小さな町、タオルミーナ。美しいビーチと紀元前3世紀にさかのぼる古代ギリシャ劇場で知られる。・リノベーション年:2011年・建築家:レナート・アリーゴ・規模:延床面積25平方メートル・プロジェクト費用:約27,700豪ドル
この改装プロジェクトは、名付けて「Space Is Luxury(スペース・イズ・ラグジュアリー=空間こそ贅沢)」。完成時に開いたお祝いパーティーは、まるで公開パフォーマンスのような結果になった。
招待するゲスト200人が、みんな同時にアパートメントに入るのはもちろん無理だ。そこで招待状に書かれたのは「家の中は狭いから、前の道路に集合!」。家の中に入る順番を待ちながら、ゲストだけでなく通りすがりの人たちまで、外に集まっておしゃべり。まるでフラッシュモブのようなイベントになった。
スペースを有効活用する
巻き上げ式ベッド
![「フレキシビリティ」ベッド](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/92695/39f1863f243c618fcc679b72b0e420419781a226.jpg)
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デザイナーが自分の家を手掛けるプロジェクトでは、さまざまなアイデアをより自由に試すことができる。思い描くイメージを現実のかたちにするのも容易だ。
このコンパクトなアパートメントの改装について、アリーゴさんは「スペースはほとんどなく、課題は山積みでした」と語る。
「機能性を追求するあまり美的側面を見失って、たとえば家電製品を詰め込みすぎたりしないように気を付ける必要がありました」
いちばんの難題は、ミニマリズムと便利な生活とを両立させることだった。
「この問題を解決してくれたのが、2つの発明です。その1つめは、リビングが寝室にもなるこちらのベッド。吊り天井と一体型になっているシンプルなウインチ(巻き上げ)システムを使って、ベッドの台を天井へと持ち上げると、部屋が広く使えます」
![「フレキシビリティ」ベッド](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/92696/bad424451724e6c00f5aae371ee9a2cfd565bfb8.jpg)
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ナチュラルなバーチ材の台にフトンを敷いたベッドは非常に軽量なため、吊り天井を補強する必要もなかった。寝るときになると、アリーゴさんが設計して特許を取得したウインチシステムを使ってベッドを床に下ろす。よく建設現場で使われている滑車装置を小型の電気モーターで動かす仕組みで、壁のスイッチで操作できる。
ベッドにはデザイン要素もある。フレームの裏側には「Space Is Luxury」のロゴがあり、ベッドを天井に上げているときには壁画のように見える。
![「フレキシビリティ」ベッド](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/92697/a2cddb4e92a7937490412c642844b6e354b3d674.jpg)
スツールはテリー・ドワンが「リヴァ1920」のためにデザインした「フィジースツール」
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「壁」を倒すと
テラスのテーブルに
![「フレキシビリティ」ベッド](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/92698/f62842345cf5d50ec3b07c26dabf38128ce729a2.jpg)
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2つめのアイデアは、こちらの幅の狭い壁。壁を横に倒してフレームに載せると、ダイニングテーブルをテラスに延長することができる。外とのつながりをつくり出し、内も外もみんなで楽しめるスペースに。
![アウトドアチェア](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/92699/4af6e1306340a87bee2648f0681c5eb7f7ce79fc.jpg)
アウトドアチェアは、フィリップ・スタルクが「ドリアデ」のためにデザインしたもの。
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「いかにも南イタリアらしいのですが、私たち4人家族はおもてなしをするのが大好きで、よく友だちをランチやディナーに招くんです。こうすれば、少なくとも10人分のスペースができます」
とアリーゴさん。キッチンには食器洗浄機、製氷機、冷凍庫のほか、洗濯乾燥機もある。
小技の効いた
インテリア家具
![インテリア](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/92700/049b035fdaf7070d1da94d8f0481583d60851cb7.jpg)
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娘さんたちが眠るのは、シンプルなチェアベッド。衣類はカプセルのようなクローゼットに収納している。夜は寝室エリアの間をカーテンで仕切り、プライバシーを確保できる。
![洗面所](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/92702/6704ba50cd3d8c33e658bed6fe2a77de7130e76a.jpg)
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家の中で唯一のドアは、バスルームへの扉だ。こちらでもスペースを大切に活用している。32×32センチのシンクの側面に隠れているようなくぼみ部分に、小物を収納できる。
![「フレキシビリティ」ベッド](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/92705/607013caf4801cc80f73aa3ae66c3d6cd5fb18d7.jpg)
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室内の壁はすべて、水洗い可能な白い塗料でシンプルに仕上げている。1つだけ例外なのは、クイーンサイズベッドのヘッドボード代わりにもなる、質感のあるグレーの壁だ。床には、厚さ1ミリの粘着ビニル床シートを使った。
クリエイティブで機能的、かつミニマルに、小さなアパートメントを便利な住まいへと変身させている。