「ビーチへ逃げろ!」台湾篇
台湾へ行ってきた。
台湾といえば、グルメと足つぼマッサージ。日本からの観光客も増えてブームとなっている。でも、そのほとんどは2〜4泊ほどのツアーなので、台北がベース。僕も、前回はこのパターンだった。
今回、旅の1番の目的としたのは、ビーチ。もう何年前にもなるが、旅人の1人から、台湾の最南端に美しいビーチが存在することを聞いた。地名は、墾丁(ケンティン)。何でも「台湾のハワイ」と呼ばれているビーチリゾートらしい。その時にした会話はずっと僕の中に残っていて、確かめに行きたいという気持ちはピークへ達しつつあった。
思えば、海外への旅も1年3ヶ月ぶり。こんなに旅から遠ざかったのは初めてのことかもしれない。久しぶりに大好きなビーチを訪れるのもいいだろう。いや、訪れるのではなく、逃げるのだ。
日常のすべてを忘れて、自分自身を極限まで解放したい。忙しすぎる都市生活から抜け出して心の赴くままにひと時を過ごしたい。とにかく、何もかもから自由になりたいのだ。僕は、そんな時に無性にビーチへ逃げたくなる。
言い換えるならば、1人になって、あるがままに、自分自身と向き合いたくなるのだ。往々にして、男には、そういう時間が不可欠なのだと想う。「ビーチへ逃げろ!」という響きには、そういった意味合いが込めてられているのだ。
エアーチケットを手に入れた瞬間から、出発日が近づくごとに「ビーチへ逃げろ!」という声は僕の中で徐々に大きくなっていった。
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LCCの「Peach」の早朝便で羽田空港から台北松山空港へ。墾丁は、台湾南部にある高雄(カオシュン)の方がアクセスがいいのだが、LCCなので台北から向かうことに。でも、一度は台湾新幹線に乗ってみたかったので、ちょうど良かったのかも知れない。
台北から2時間ちょっとで、終点の左營(ズゥオイン)駅に着いた。時間帯はランチタイム。早朝に羽田でビールを2杯飲んで以来、何も口にしていなかったので、隣接している新光三越に立ち寄ることにした。
それにしても、日本食レストランの多いこと。それらを避けてローカルの台湾人でにぎわう大衆食堂で、魯肉飯(ルーローハン)を注文する。美味い。異国の味は、旅がはじまったことを全身に感じさせてくれた。
腹ごしらえのお茶を買って、バス「墾丁快線」へ飛び乗る。日本はGWだけど、台湾は平日なので車内はガラガラ。こんな時は、1番後ろまで行って1列を独占するに限る。体を横たえると睡眠不足のせいか、うとうと…。寝ようと考えたのは、車内にトイレがなかったせいもあるのだがー。
2時間くらい経っただろうか。何だか眩しい。目を開けるとバスの中に差し込む日差しが強くなっている。体を起こすと、途中で乗り込んできた客が数名いるのに気づいた。僕は、1つ前の席に座っている女の子に「墾丁はまだかな?」と尋ねた。すると、土地勘があるようで「2つ先の停留所よ」とすぐに返事が帰ってきた。
カーテンを開けると真っ青な海が姿を現した。ビーチと平行に走る道から見える水面は、キラキラと光っている。すぐにでも飛び降りたい衝動を抑えて、ようやく停留所へ。バスを降りると、そこは人でにぎわう一本道。きっとメインロードに違いない。荷物は標準サイズのリュックと小さめのショルダーバッグだけなので、ホテルには歩いて向かうことにした。
チェックインを済ませて部屋に着くと15時半過ぎ。自宅から、羽田行きのタクシーに乗ったのが午前3時なので、約12時間ほどかかった計算となる。長時間の移動ではあったが、旅の高揚感のためか、疲労感はそれほど感じなかった。
部屋のバルコニーから見えるのは、風光明媚な海。サンセットを楽しむために向かったのは、目の前にある「シャオワンビーチ」。穏やかな波が寄せるビーチはコンパクトで、小高い丘やビーチハウスによって葉山の一式海岸にある「Blue Moon」を思い出してしまった。「ハワイじゃなかったっけ?」と1人で苦笑いすることにー。
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翌朝、気を取り直して、墾丁エリアで最も美しいといわれている「バイシャビーチ」へ向かうことにした。街中で電気スクーターを借りて、20〜30分ほど走ると「白砂-Baisha」の標識が見えてきた。それにしても不思議なくらいに人がいない。
「場所はあってるのか」と半信半疑のまま、スクーターを徐行させて砂地を進んで行く。すると、向こうから真っ白いビーチとエメラルドグリーンの海が目に飛び込んできた。その瞬間、僕は「ここだ!」と叫んでいた。スクーターを木陰に駐車して、歩きはじめると1分ほどでビーチへ辿り着くことができた。
ビーチへのアプローチは、ハワイのオアフ島にある「カイルアビーチ 」「ラニカイビーチ」にとても似ていると感じた。ちなみにこの2つのビーチは、オアフ島で一番美しい隠れ家的なビーチとされている。全米のベストビーチにも選ばれたほどだ。
実際、墾丁は、ハワイのカウアイ島と同じく緯度22度線に位置する。さらに、天然の白い貝殻でできた白砂、そして、透明感のある海はハワイの雰囲気とウリふたつ。
台湾人の家族連れがいたので、写真を撮ることを申し出る。それが、きっかけで会話がはじまった。聞くところによると台中在住で、ケイティンには何度も来ているようで「このエリアで1番美しいビーチはここだよ」と教えてくれた。裏には、キャンプ施設も完備されていて宿泊することもできるという。
その後、ビーチホッピングをして確認できたのは、やはり「バイシャビーチ」が断トツで美しいということ。しかも、人も少なめでとても静かなのだ。シークレットビーチと呼べるくらいプライベート感に溢れていてオススメだ。
最後に、台湾といって日差しをナメてはいけない。墾丁は、台北とは気候も気温も異なる南国だ。2〜3日なら大丈夫だろうとたかをくくって素のままでビーチにいたら、日焼けを通り越して、低温ヤケド状態に。墾丁に行くなら、必ずサンオイルを持参することをお忘れなく。
しかしながら、僕の「ビーチへ逃げろ!」という欲望は120%満足できたことをつけ加えておく。
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標識や看板の漢字表記を見なければ、まさにハワイ。南国を感じさせるパームツリーが爽やかな風に揺られていた。
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バイシャビーチに家族連れで来ていた台中出身の台湾人と絶景ポイントでばったり。「2人で写真を撮ろう」と意気投合した。今では、友だちとしてFacebookで繋がっている。