荒々しく、冷たい建築物をめぐる観光マップ
ここに紹介する観光マップは、ある視点をもって集めた都市ガイド。旅の目的は人それぞれだけど、どこか既視感を抱いてしまう名所旧跡に足を運ぶよりも、僕にはこっちの方が新鮮に映りました。
もしも、他人と違った旅をお好みならば、こんな観光地めぐりはいかがでしょう。
コンクリ打ちっ放しの荒々しさ
ブルータリズムという建築様式
街にとけ込むことなく、存在感をあらわにする。今でこそ珍しくなくなったコンクリート打ちっ放しの建築物。これらはおもに1950年代から70年代にかけて、世界の建築様式に登場したものだそうです。
第二次対戦後のヨーロッパ。再建、工業化に向かうなかで、拡大する都市部には大規模な公営住宅や公共施設が必要になりました。短時間で、しかもコストがあまりかからない建築工法が模索されるなか、登場したのがコンクリや鋼鉄を用いて設計された建物たち。
それまでにない無骨で、荒々しい、冷たい印象を与える建築様式を総称して、「ブルータリスト、あるいはブルータリズム」と呼ばれています。
都市に点在する
メガストラクチャー
現在も都市にたたずむブルータリズム様式の建物だけをマッピングしたのが「Brutalist Maps」。時代のアイコンとなるメガストラクチャーを、ロンドン、パリ、ベオグラード、シドニー、ワシントンD.C.の5都市で先行販売。
前述のとおり、30年あまりの間にブルータリズムは各地に広がりました。その余波は当然日本にも。
例えば、原宿の国立代々木競技場、同じく原宿の集合住宅ヴィラ・ビアンカ、竹橋駅に直結したパレスサイドビルなど、東京にもこの時代に建てられた現役のアイコンが数多くあります。
シドニー大学(1973年築)
ベオグラードの集合建築(1963年築)
パリ郊外《クレテイユ》の集合住宅(1974年築)
ベオグラード航空博物館(1989年築)
ワシントンD.C.のJoseph Mark Lauinger記念図書館(1970年築)
むき出しになったコンクリートは、荒々しく、時に冷たい印象を与えますが、この姿に魅了される人も多いんだそう。
こちらはロンドン市街地マップ。赤で表示されているポイントがブルータリズム様式の建築物ですが、こうして見ればどこかのエリアに密集して乱立しているわけではなく、市内全域で建築されたことが分かります。
背面には、建物の名称と設計者、住所、竣工年などの情報も。
この手の情報は、得てしてウェブの中にしかないもの。スマホを手にめぐることだってできるでしょうが、「あえてマップで」というのがいいなあ。