都市マップを「球体に描く」スゴ腕アーティスト
旅先で出会った建築物をモレスキンのノートにペンですらすら描いていくAmer(@TendToTravel)。ハイクオリティな彼のラフスケッチは、数年前から海外メディアで多く取り上げられ話題となっていた。そのAmerの新たな手法がおもしろい。
3Dの地球儀のような球体マップの上を旅してみたい。
Hong Kong
一見すると何が描いてあるのかわからない。が、これは香港島セントラル(中環)を中心に球体に描いたマップ…らしい。
香港経済の中心地に集中する高層ビルを、1本1本手描きで仕上げているそうだ。高さ415mのランドマークタワー「国際金融中心」や、三角のパネルを組み合わせたような「中国銀行タワー」のリアルさからも、いかにありのまま忠実に描いていっているかが分かるはず。
地上から放射線状に空へと伸びる、高層ビル群。その隙間を縫うように南北へと伸びる道路、豆粒のような家屋もちゃんと描かれている。
Paris
凱旋門を中心に、そこから放射線状に広がる街並みが特徴的なパリ。マップ下に流れるセーヌ川、ほとりにはエッフェル塔がそびえている。さながら映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場するデス・スターのようだ。
Dubai Marina
Melbourne I
Melbourne II
Tokyo , Shibuya
さてこのAmer、じつは結構な日本ツウらしく、過去に2回来日した経験があるという。詳細は未定だが、2017年に来日を予定しているそうだから、どこかで彼の作品に触れるチャンスがありそうだ。
そんなAmerへの取材のなかで、こんなサプライズプレゼントが届いた!
なんと、TABI LABOのオフィスを中心とした渋谷周辺のグローブマップを、わずか数日で仕上げ、写真で送ってきてくれた。渋谷ヒカリエや渋谷マークシティの立体感が分かる?
Google マップから球面を想像し
都市を描き出していく
Google マップを参考に、縮尺を球体上におこし直し、建物一つひとつを精巧に描いていくのは気の遠くなるような作業に違いない。Amerにこんな質問をしてみた。
──マップを球体化して描く、Globe Mapはどこからスタートするの?
まずは地図上のメインストリートとなる幹線道路をGlobe Mapに落とし込んでいきます。だけど、全部を細かく引いてしまうのではなく、5本〜10本といったところ。それから平面の地図が球体になったとき、どんなビジュアルになるかを、とにかく頭に想い描くところからスタートします。
そこから大ざっぱに五点透視図法を使って、建物を描いていく。最後に窓や車、街路樹などの細かなところを仕上げるイメージですね。
──ひとつのGlobe Mapにかかる制作時間はどのくらい?
平面と比べて圧倒的に工数はかかりますね。だけど小さいものであれば数日、大きな作品となると、根を詰めてやっても2ヶ月近くかかることも。作品が大きくなるにつれて、中心部をきちんと仕上げなければいけませんからね。描いていて自分でもたまにめまいがしてくることもあるんです。方向感覚がなくなるというか。
子どもの頃、NASAが発表する宇宙空間から捉えた地球の美しさに魅了され、映画『スター・ウォーズ』シリーズに心奪われていたAmer。
建築家を志し、単調にマップを描いている日々のなか、イーロン・マスクの宇宙開発や、火星移住計画に触発され、アーティストへ転身。前職のスキルを活かしてこの技法にたどり着いた。
難解なパズルのピースをはめ込むように
世界ができあがっていく様子
AmerはGlobe Map制作に挑む気持ちを、難解なパズルや心理ゲームをしているときに例える。精神を研ぎ澄まし、イメージを働かせながらキャンバスに向かい、ひと息に描いていく。ひとつのGlobe Mapが完成すると、いつも数週間はペンを持たない休息に充てるそう。
気の遠くなるような制作の過程は、以下の動画でチェックできる。こちらは空想の世界都市のようだけど、スフィンクスからコロッセオ、五重塔など和洋折衷。Amerにしか表現できない緻密で繊細なマップができあがっていく様子は、ため息しか出ない。