ひたすら海鮮を食べ続けなければならない「蒸し鍋」

寒い冬場においしいのが鍋料理。これって日本人的感覚なんじゃないでしょうか。なぜって、チゲにしても、タイスキにしても、火鍋だって、アジア一帯の国々では、高温多湿のなかでも汗をかきかき、はふはふしながら鍋を囲むんですから。

何が言いたいかって、アジアを巡るならば鍋料理を食べなきゃ損!ってこと。

正真正銘
“スチームする”鍋料理

マレーシアで鍋といえば「スチームボート」を指します。ダシを満たしたお鍋にお肉、海鮮、野菜を入れた、日本で言うところの寄せ鍋のようなもの。よくあるタイスキ鍋のように中央が煙突状にせり上がっていて、そこからシュッシュと蒸気船よろしく湯気が立ちのぼることから、この名がついたそう。

でも、ここに紹介するボルネオ島コタキナバル(サバ州の州都)で遭遇した鍋は、まったくの別物。

獲れたて新鮮な魚介を生簀(いけす)から選び、豪快に蒸して火を通し、唐辛子とニンニクを入れた醤油ベースのタレにつけていただく、蒸し料理のようなスタイル。形から連想するスチームではなく、こちらは正真正銘のSteam(蒸す)する鍋。「スチームボート・改」です。

シメのために注文を繰り返す
魔性の蒸し鍋

©Anon Prasert/Shutterstock.com

この蒸し器というか「蒸し鍋」がまたオモシロくて、スチーマーのような器具の鍋底には特製スープ(鶏ガラ入り)とお米が仕込まれているんです。穴の空いたステンレス製の蒸しプレートをかぶせ、その上に魚やエビや貝を乗せる。
わかります?単に魚介を蒸すだけじゃない。彼らから出てきた極上のダシを余すところなく、お粥状態になったごはんがキャッチしてくれるという仕掛け。

海鮮を食べれば食べるほど、シメのお粥が美味となる。つまり、最後のお粥をおいしく食べるために魚介をひたすら食べ続ける。知らずと食が進んでしまう、魔性の蒸し鍋料理。危険です(笑)。

マレーシアの物価は、だいたい日本の3分の1程度。観光地といえど、シーフードに限ってみればコタキナバルでも割安。日本で同じだけ食べたらいくらになる?
生簀から選んだ鮮魚を目の前で蒸す、エンタメとしても十分楽しめる。一人旅でもない限りまず外せません。いや、むしろ一人でも蒸しとくべき!

後から知った話ですが、正式には「海鮮蒸気鍋」という名で、山東省や江蘇省あたりの中国沿岸部にルーツがこの鍋料理にはあるようです。どうりで、お店にも中国人観光客が多かったわけだ。

肝心のレストランは、トゥン・ファド・ステファン通りを海沿いに、ハンディクラフトマーケットの正面、ル・メリディアンホテルの横。あとは、己の嗅覚を頼りに。

セイロで即席スチームボート

©iStock.com/Siraphol

仕組みさえわかれば再現はたやすいもの。がらスープとお米を深鍋に入れ、上にセイロを重ねて。ポイントはきちんとフタがしまること。お粥の水分が足りなくなったら、スープを差して加減するだけ。

再現料理:海鮮蒸気鍋
再現調理器具:セイロ
再現度:★★★☆☆

Top image: © iStock.com/Ho Hong Yun, 2018 TABI LABO
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。