40年前のベストセラーが教えてくれる、料理上手になるために押さえるべき5つの基本

「いまや女たちの料理力はどんどん退化して、無能な男レベルに近づき、おいしいものをみずからの腕でほしいままにする自由を喪失している」。約40年前に発売されたにも関わらず、現代にも通ずる提案を投げかける書籍『聡明な女は料理がうまい』。料理上手になるために、まず押さえておきたいポイントって…?

01.
すぐれた料理人の条件とは…

まず料理とは「果敢な決断と実行」の連続である。ところが女性的な主婦は、毎日グズグズと献立を考えあぐね、朝食で満腹したばかりの亭主に「今晩のごはん、なんにしましょうか」と聞いたりしてうるさがられ、テレビの料理番組など見てみるが、なにやらややこしげな手順に意気沮喪(そそう)し、買い物に出ると目移りし、結局めんどくさくなってシューマイの冷凍を買って帰ったりする。

「大胆で柔軟な発想力」があれば、たかが一年三百六十五日ぐらい、毎日新しい献立のアイディアがメラメラわきすぎて困るほどわいてくるだろう。少なくとも現在の市場には、あらゆる材料があふれ返っているのだ。よくさがせば、いつでも必ずといってよいほどなにかしら安い物が見つかる。それを発想の原点にして献立を考えればよいのに、本やテレビに教えられた献立の材料をその指示どおりに集めてまわろうとする。

たとえばサラダといえば、何がなんでもレタスとトマトという妙な固定概念にとらわれて、一つ二百円もしてしかも青くて味気ない冬トマトを買う。ほうれんそうでも大根でもマッシュルームでも山いもでも、おいしいサラダになるというのに。

02.
料理によるコミュニケーション力は
あなどれない

私が知る限り、有能な職業人ほど、また有能な主婦である。みんな忙しいから家事に使える時間は少ないが、短い時間に圧縮空気が噴出するような勢いでチャカチャカッと活躍し、一日じゅうのんべんだらりと家にいる主婦よりも、むしろ手ぎわよく家事を処理してしまう。ともかくやることにメリハリがきいているのだ。

彼女たちにとっての家事は「ジジフォス神話」の重苦しい岩塊ではなく、一種のスポーツのようなレクリエーションである。とりわけ料理というのは、個性や才能がメリメリと生きる創造的な仕事だから、他の家事はともかく、料理だけは他人にまかせたくないと、意欲的な女なら思うものである。

一生の間、日々新たに自己表現の機会を与えられつづけるというのは、ほんとうにすてきなことだ。その表現力をアプリシエートしてくれる家族や友だちに恵まれるのは、さらにすてきなことだ。性欲が灰になるまでつづくかどうか私には自信がないが、食欲のほうはよほど不運な病にでもとりつかれない限り一生ものだから、この情熱をシェアし、料理によるコミュニケーションを確立した間柄が最も長もちしやすい人間関係だといえるかもしれない。

03.
暇つぶしでもいい、
料理書を読み流すべし

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いくら料理の本を読んでも実際に作りたくなるような料理はそうたくさんあるわけではない。一冊読んだ中に、五つか六つあればいいくらいかもしれない。

しかし、一生縁のないような料理の作り方だって一度ぐらい読んでおいてソンはない。読むはしから忘れてしまうだろうが、異国の街を歩き雑踏にもまれているだけでもその国のことがなんとなくわかってくるように、おびただしく通り過ぎた料理の印象がかすかなチリのように心にたまって、無意識のうちに理解の土壌を作っていく。

ふだんの暇つぶしにジャボジャボ料理書を読み流す習慣を身につけておけば、袖ふれ合うも他生の縁で、おりにふれてなにかしら思い出し、それが献立のヒントになることは多いはずである。

04.
献立は買い物をしながら
インスピレーションで決める

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私は献立を考えてから買い物に行くより、市場を歩いてそのときどきの肉や魚や野菜の表情をながめながらインスピレーションがわいてくるのを待つ。きょうはこれがおいしそうだなとか安いなとか思う材料と、頭の中にたくわえてある料理の知識や経験がピーンとふれ合ったときに献立が決まるのだ。

だからたとえ漠然とした印象だけでもいいから、できるだけ多くの料理を心にとどめておけば、それだけでピーンとふれ合う快いインスピレーションの鈴の音がにぎわいを増し、食卓がゆたかになる。アイディアさえ得られれば、作り方のほうはあらためて本を見ればよいのだから、初めに読むときにいちいち覚えておく必要はない。

05.
台所の主体はあくまで料理

台所用品というものは、さまざまな料理を主役として送り迎えする舞台装置であり脇役なのだ。だから台所用品自体はなるべく中立的で簡素なものにしておいたほうがよい。料理によってこそ最も美しく彩られる台所であってほしい。初めから色見本みたいな台所では料理の色が冴えなくなる。

しかし、ニュートラルといっても白とは限らない。病院と台所は白かどぶねずみ色という発想はもう古い。色見本では困るけれど、台所も明るい彩りを持ったほうがよい。まっかっかな台所というのも気分がはなやいでいいものだし、あたたかいオレンジ色や黄色の台所も陽気で楽しいし、渋いグリーンや茶色でまとめた台所のおちつきも魅力的なものだ。ただし、テーマカラーを定めたら、それ以外の色に浮気しないことである。わずかに他の色を加えるとしても、必ず基調色との調和を厳格に配慮しなければならない。

※書籍からの引用にあたり、一部表記を編集しております。


聡明な女は料理がうまい
コンテンツ提供元:アノニマ・スタジオ

桐島洋子/Yoko Kirishima

文藝春秋に勤務の後、フリーのジャーナリストとして海外各地を放浪。70年に『渚と澪と舵』で作家デビュー。72年『淋しいアメリカ人』で第3回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。以来、メディアの第一線で活躍するかたわら、独身のままかれん、ノエル、ローランドの3姉弟を育て上げる。ベストセラーとなった『聡明な女は料理がうまい』や、女性の自立と成長を促した『女ざかり』シリーズをはじめ、育児論、女性論、旅行記などで人気を集めた。

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