真摯に野球と向き合う、イチローの姿勢から学ぶべき「6つのこと」
米大リーグ通算3,000安打まであと「1」として迎えた、日本時間8月8日(月)のコロラド・ロッキーズ戦。マイアミ・マーリンズに所属するイチローは、第4打席にヒットを放ち、ついに大台に到達。史上30人目の偉業を達成し、珍しくベンチで涙を流す姿も見られた。
ところで私たちは、このニュースをただただ祝福して終わるのか。それとも、ここから何かを学び取ろうとするのか──。あなたが野球人か否かに関わらず、彼の生き方そのものが示唆に富むことは、疑いようのない事実のはずだ。
01.
結果を出しても、常に変化し続ける
結果を出しても、
イチローの代名詞は?と聞かれ、「振り子打法」と答える人もいるかもしれない。オリックス・ブルーウェーブ時代は、前足が振り子のような動きをする特徴的な打撃フォームで結果を残し続け、2001年にシアトル・マリナーズへ入団。野手として、日本人初のメジャーリーガーとなった。
しかし、その振り子打法は、日本でプレーしていた時だけのもの。米大リーグ挑戦の少し前から徐々に足の振り上げは小さくなっていき、アメリカへ渡ると完全に封印。日本での成功体験を捨て、新たな打撃フォームをもとに、2004年に年間最多安打記録という快挙を成し遂げることになる。
さらに驚くべきは、年間最多安打記録を打ち立てた後も、常に打撃フォームを変え続けている点。普通に考えると、「結果が出ているのだから何も変えなくて良し」が通説。ところが、イチローは決して現状に満足することなく、自身に変化を起こし続けることができる。
02.
周囲の雑音を「力」に変える
周囲の雑音を「力」に変える
これは日本時間2016年6月16日、日米通算4,257安打を記録したときのコメント。
「僕には子どもの頃から、他人に笑われていたことを常に達成してきた自負がある。
小学生のころ毎日野球を練習していたら、近所の人から『あいつ、プロ野球選手にでもなるつもりか?』といつも笑われていた。悔しい思いもしましたけど、最終的にはプロ野球選手になった。
その後、日本で首位打者を獲って、いざアメリカに行く時も『(アメリカで)首位打者になってみたい』と言うと笑われた。でも、それも2回達成した。常に人に笑われてきた悔しい歴史が僕の中にはあるので、これからもそれをクリアしていきたいと思います」。
03.
環境を言い訳にせず、「いまの自分」に目を向ける
環境を言い訳にせず、
2004年、米大リーグの年間最多安打記録を達成した直後のインタビュー。イチローは、他のメジャーリーガーと比較すると、決して体格に恵まれているわけではない。しかし、自分に足りない部分ではなく、「持っているもの」に目を向け、最大限の力を発揮することに注力している。
「身体の大きさや強さに対する憧れを持ち過ぎなくてもいい。身体が大きいことにそんなに意味はないと、アメリカに来てから強く思うのです。
憧れを持ちすぎて、自分の可能性を潰してしまう人はたくさんいます。しかし、自分の持っている能力を活かすことができれば、可能性は広がると思います」。
04.
言葉を大切にする
言葉を大切にする
イチローのインタビュー映像をいくつか見ていると、ある特徴に気がつく。質問されてから回答するまで、さらに回答し始めてから次の言葉を発するまでに「沈黙」が存在するのだ。
それは相手の質問に対して、しっかりと思考を整理してから回答しようと努めている証拠。公式会見以外にほとんどテレビ取材を受けないのも、中途半端なやり取りを避け、自身が発信する言葉を大切にしようとする意志の表れなのかもしれない。
逆にいうと、そうやって言葉にこだわるイチローだからこそ、その発言が多くの人の心に響き、話題となり、ポジティブな記憶として私たちの脳内に残るのだ。
05.
徹底的にやり続ける
徹底的にやり続ける
今年3月に、あるテレビ番組で放送されたインタビュー。「続けることの大切さ」を、野球から離れた場面を例に出して説明した。
「続けてみることってすごく大事なことだと思います。僕、同じことがずっとできるんですよ。シーズンオフで4か月間日本にいたんですけど、車の中や部屋の中、ずっと同じ曲をリピートで聴いていたんです。
でも、ずっと聴いていたら、好きなアーティストでも『おやおや?』と思うようになる。詩と歌手がマッチしないってことがだんだん見えてくる。でも、それってずっと続けていないとわからないんです。
合理的な考え方をしている人は、すごく単純な作業を省きがち。だから見えないものもいっぱいある。狭い世界でもずっと見ていたら、いろんなことがわかってくる。それははっきり言えると思います」。
06.「結果よりもプロセスが重要」
ではなく、
「結果もプロセスも重要」
ではなく、
「結果もプロセスも重要」
イチローが大切にするもの。それは打率ではなく「安打数」だ。
なぜか?打率は上がることもあれば、当然下がることもある。しかし、安打数は絶対に減ることがなく、増え続ける一方だから。言い換えれば、一つひとつ「積み重ねられるもの」だから。
これについては、一つの打席の結果に一喜一憂することなく、ただ上だけを見ることで上手くモチベーションを保っているという見方がある。その一方、「結果にコミットしている」という捉え方もできるはずだ。
たとえば、同じ打率3割でも、10打数3安打の選手もいれば、100打数30安打の選手もいる。前者がチームに貢献していないというワケではないが、後者のほうが、プロセス(打席に立つ)だけでなく結果(安打)にもコミットしている選手だとは言えないだろうか。
結果よりもプロセスが重要とされる風潮のある世の中。しかし、だからといって結果が出なくてもいい、というわけではない。当然のことかもしれないが、「結果もプロセスも重要」なのだ。
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