イチロー×豊田章男社長が語る「理想のリーダーと強いチームの条件」

マイアミ・マーリンズに所属するイチローとトヨタ自動車の豊田章男社長の“対談シリーズ”第3弾。

今回のテーマは「リーダーシップ」。野球界と自動車業界それぞれのフィールド­で戦い続けてきた両者が、それぞれの“リーダー論”を熱く語ります。果たして、本当に強いチームとは。そして、理想のリーダーとはーー。

「リーダーは“空気”のような存在が理想」

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豊田 私の理想では、トップの役割は「決めること」と「責任を取ること」です。社長の仕事とは何だろうと考える出来事はたくさんありましたが、最終的に自分に期待されているのはこの2点。社長は後ろに控えていればいいと言う人もいますが、私はそうではありません。逆に、前に出ることが格好いいと思っています。

イチロー だからこそ、人がついてくるんでしょう。僕の周りのリーダーと呼ばれる人たちの中にも、発言はするけれど行動はできない人がたくさんいるんです。下の人たちは、その姿を見ているじゃないですか?そんなリーダーにはついていきたくないですもんね。

豊田 はい。

イチロー リーダーになれる人というのは、本当に限られた人たちなんだと思います。メジャーリーグには30の球団がありますが、監督として上手くチームを引っ張っている人は、数えるほどしかいない。選手の中でのリーダーもそう。誰かがいてチームがまとまるのが理想なんですが、それができているところはほとんどないんです。だから、野球界では、自分たちで考えて「リーダーを必要としないチーム」になることのほうが手っ取り早いというか、強いチームになりそうな気がするんですよ。

豊田 リーダーがいるかいないか分からない、“空気”のような存在ですよね。どちらかというと、私もそれを求めています。もちろん、危機のときは前に出ますが、そうでないときは空気のような存在が理想。いなくなると困るけれど、いても別に何とも思わない。ところが、世の中の“リーダー論”では、「なんでも知っている」「なんでも自分が指示を出す」ということが語られがち。そういうのは少し違うだろうと思っています。

イチロー そうやって簡単に言われがちですよね。でも、強いリーダーというのは、実はそれほど効力を発揮しない。

豊田 チームワークはあるけれど、そうは言っても野球は個々の能力が第一。それが結果としてチームワークになる。

イチロー そうなんです。でも、それを分かってない人たちばかりなんです。

豊田 なるほど。

「チームのためではなく、“自分のため”でもまったく問題ない」

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イチロー 分かりやすく言えば、一般的に「俺は自分のためにプレーしている」と言うと、チームの輪を乱していると受けとられる。ただ、そういう人が集まったとしても目指すところが同じであれば何の問題もない。というより、それが一番強いと思うんです。目指しているところが違うとややこしくなりますが、最終到達地点が同じならそれでいい。

豊田 いやー、わかります。

イチロー そもそもプロ野球は、そこら中の一番上手い選手が集まってきているわけですから、エゴの塊なんですよ。それなのに「チームのために!」と言っているのが気持ち悪くて。

豊田 (笑)。

イチロー 俺は自分のためにやる、でも目指すところはみんなと一緒なんだ、というチームがなかなかないんですよ。きっと、それを表現することが怖いんですよね。「みんなのために」と言っているほうが安全というか。すごく不思議なことに、アメリカでもそうなんです。だから、チームとリーダーに関しては毎年考えさせられます。

豊田 20歳以上も歳の離れた選手とプレーすることもあるかと思いますが、“リーダー”の役割を感じますか?

イチロー 同じアメリカ人であれば、おそらくそうなると思います。でも、実際には言語や文化の問題がある。今は15歳くらい離れた選手が多いのですが、それは日本人同士であっても難しいんじゃないかなと。ただ、彼らには僕の足を引っ張ろうとするところがまったくない。だから、すごく気持ちがいい。

豊田 それは年齢の問題?それとも、実績があってレジェンドのような域にいるからですか?

イチロー 確かに実績、数字が僕を守っているところはあります。でも世代もあると思いますね。

豊田 純粋に吸収したいという感じ?

イチロー そういう感じも見受けられます。それは今までにはなかなかなかったことです。

“実績”が大事な理由とは?

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豊田 逆に、若い選手から学ぶこともあるんですか?

イチロー あまりないです。が、これだけ純粋に野球に打ち込めたらいいなというところはあります。ただ、逆に言うと、それは彼らがまだプロになりきれていないということでもあると思うんです。

豊田 これは勉強になります。

イチロー 子どもの時のように野球を楽しみたいのであれば、プロにはなってはいけない。プロなのに「俺は楽しんでいるぜ」と言っているような選手は大したことないと思います。

豊田 なるほどね。

イチロー 今の若い世代の人たちは情報がたくさんありすぎて、頭で覚える人が多い。こういう状況では、気持ちをこう持っていくとか。彼らはそれを体験しているわけではないので、頭でしか理解していない“弱さ”があるんですよね。だから、「何を言うか」を重要視しているように見受けられる。でも、何を言うかではなく、本来は「誰が言うか」ですから。プロで10年プレーして実績を残している選手とルーキーとでは、同じことを言ったとしても、重みや意味が全然違います。だからこそ、時間や実績が大事だということが言えると思うんです。

豊田 「誰が言うか」ということは本当に重要ですよね。私が何を言ったとしても、“私が言っているから”素直に聞いてくれるというところもあります。たとえば、公聴会で私が謝罪をすると、現在と過去、未来をまとめて謝罪しているように、あるいは仕入れ先と販売店、トヨタ自動車を代表して謝っているように聞いていただける。そこはある意味ではものすごく強みではないかと。

イチロー それを作っていくことが生きていく意味なのではないかという気がします。勉強して何を言うかというより、狭い世界でもいいので自分の中から何かが湧き出てくる、生み出されるような生き方ができたらいいなということが基盤にあるのではないでしょうか。


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