「嘘」について描かれた極上の映画

「真実やわかりやすさばかりが求められる時代に、嘘についての映画を作りたかった」

そう語るのは、人気、実力共にフランスを代表する監督になったフランソワ・オゾン。『婚約者の友人』は「嘘」について描かれた映画だ。第一次世界大戦後のフランスとドイツを舞台に、嘘が罪滅ぼしになったり、破滅を導くこともある側面を様々な伏線を張りながらストーリーは展開される。一つ嘘を見破るたびに、ヒロインと共に観る者も意外な真実に近づく感覚を味わえるはずだ。

嘘の種類は
いくつかに分けられる

6446c7f80d6912c85d1a0b1a070becab45622325

人がつく嘘は、心理学的に分類されているという。

約束を何かの理由をつけて断るなどの予防線、失敗を責められた時にする言い訳などの合理化、ありもしないことを言うその場逃れ、金銭が絡んでいる場合に自分が得をするための利害、自分を理解、擁護してもらうための甘え、犯してしまった過ちを隠す罪隠し、相手との関係で自分が優位に立つために嘯かれる能力や経歴、自分をよく見せたい虚栄心からの見栄、相手を傷つけないための思いやり、笑って済まされるからかいや冗談の引っかけ、自分の知識不足などから生まれる勘違い、そして、意図的ではないが約束を果たせず結果的に嘘になってしまう約束破りだ。

実際、本作品にも、この中の数種類の嘘が仕掛けられている。

944767a2475ce16a03258be83e5b5a6c1197dba4

モノクロとカラーが
交錯する映像美

07ebbeb473b7923c1024475556f0e44ca0991a01

モノクロとカラーが交錯する映像美は、すべてオゾンがこだわり抜いた計算によるものとのこと。オゾンによれば、モノクロは、1919年という時代背景のリアリティを追求するために不可欠なものだったという。その副産物として、ロケ地の風景は奇跡的に生まれ変わったようだ。一方で、カラーは強い感情を表現する手段として使われたとのこと。嘘のシーン、回想シーン、幸せなシーンなどでは、色の鮮やかさが印象に残る映像となっている。

第一次世界大戦における
ドイツとフランス

C43c38c7892d58efa83e56e7afacc41455981421

最後に物語をさらに深く理解するために、時代背景について少し触れよう。

第一次世界大戦とは、1914年から1918年まで続いた、人類史上最初の世界大戦だ。ドイツ、オーストリア、オスマン帝国(旧トルコ)、ブルガリアで結成された同盟国と、フランス、イギリス、ロシアを中心とする連合国に分かれて戦った。その後、日本は、イタリアとアメリカと共に連合国側として参戦した。大戦勃発後、ドイツ軍は優勢だったが、パリの近くまで進んだ時にフランス軍に猛反撃を受ける。両軍は、長期戦に突入して膠着状態が続き、両国の若者が次々と前線に送り込まれていったのだ。その状況は、本作の中で重要なシーンとして描写されている。

158d639765f8d40584029d38b23b92f17b647eb7A2d769917644a83dc2947c898a67958752c5eb25

ヴァイオリンで奏でられるショパンのノクターン。美しい音の調べに乗せて優雅に表現されるのは、愛、喪失、裏切り、迷い、手放すこと、決意、生きようとする意志。極上の一本は、ぜひ、劇場で堪能してほしい。

『婚約者の友人』
シネスイッチ銀座ほか絶賛公開中。公式サイトは、コチラ

© 2015 MANDARIN PRODUCTION – X FILME – MARS FILMS– FRANCE 2 CINEMA - FOZ-JEAN-CLAUDE MOIREAU
 
© Mandarin Production – FOZ – X FILME Creative Pool GmbH – Mars Films – France 2 Cinéma – Films Distribution
Licensed material used with permission by 婚約者の友人
デヴィッド・リンチ。映画を愛する人なら、誰でも彼の作品を観たことがあるはずだ。本作品『デヴィッド・リンチ:アートライフ』では、彼のインタビューや家族の写真...
アウシュヴィッツ強制収容所でのホロコースト。もしも、加害者と犠牲者の孫世代が恋に落ちたら…。映画『ブルーム・オブ・イエスタディ』は、タブーの扉を開けた挑戦...
船尾修さん。アジア・アフリカでドキュメンタリー作品を撮り続けている写真家。彼は撮影でフィリピン・ルソン島の世界遺産に登録されている棚田に訪れた時、そこがか...
ユニセフが2016年9月に発表した「移民・難民危機レポート」によると、世界では約5,000万人もの子どもたちが、ふるさとを奪われているそうです。しかし難民...
原作は、ドイツ国内で220万部以上を売り上げた大ベストセラー小説『14歳、僕らの疾走』。ドイツ児童文学賞をはじめ多くの賞を総ナメにして、舞台版でも最多上映...
監督を務めたのは、黒人女性監督のディー・リース。人種差別や偏見を真正面から描いた本作品は、2017年のサンダンス映画祭でプレミア上映された際に絶賛の嵐だっ...
TABI LABOライターのJeff Kidoが、古今東西のカルチャーについて独自の視点から好き勝手に論じる『ジェフの勝手にカルチャー論』。1分で読める記...
「人は10分間に3回嘘をつく」と聞いて、ドキッとしたんです。そんなに頻繁だなんて信じたくないけれど、社交辞令が多いこの社会のなかで「嘘」を奪われたら、円滑...
人は誰でも多かれ少なかれ、嘘をつくものです。そして、嘘をついた方が人間関係がうまくいったり、嘘をつかざるを得ない場面もあるでしょう。とは言っても、あまりに...
ホームレス、売春、恐喝、アルコール中毒、窃盗、傷害、詐欺、嘘、裏切り…。この映画は、現代におけるすべての闇の要素で構成されている。主人公は、引きこもりのホ...
激しい愛、官能的な描写、そして、胸を締めつけられるような結末ー。大人の恋愛映画をお家芸とするフランスから、待望の傑作がやってくる。それが『モン・ロワ 愛を...
主演と監督のクレジットには、アベル&ゴードン。何を隠そう2人は夫婦なのだ。夫は、ドミニク・アベル。妻は、フィオナ・ゴードン。また、2人のバックグラウンドが...
『エターナル・サンシャイン』で監督を務めたミシェル・ゴンドリー。彼がiPhone7のみで撮影した11分の短編映画「Détour」が、Apple社の公式Yo...
NYのメトロポリタン美術館(通称メット)では、毎年5月第1週目になるとアート・ファンとファッショニスタが注目する美の祭典『メットガラ』が開催される。このオ...
飛躍的に増えた外国人観光客は、2020年開催の東京オリンピックでひとつのピークを迎えると言われている。国際社会における「ホントのおもてなしとは何か?」とい...
ビーチに設置された300インチの大型スクリーンで、星空の下、海風を感じながら映画を見る──。ゴールデンウィークにいつもとちょっと違う体験がしたい人には、開...
アレハンドロ・ホドロフスキー。カルト映画の巨匠とされるチリ出身の監督は、今年、88歳を迎えた。とはいえ、この年齢になっても精力的に映画をつくり続ける姿は、...
ブロガーVishnu Subramaniam氏は断言します。この世には、鵜呑みにしてはいけない「7つの嘘」があると。じつは彼、数年前に人生のどん底を経験し...
小学校のカリキュラムに「映画」が追加されたアルゼンチン。「VARIETY」によると、7つの州に限定されていますが、2016年の8月からプログラムはすでに開...
ヨガをしたこともなければ、それがなんたるかも実際はよく分からない。自分のような人間がヨガ映画を観るなんてこと、普通であればまったく想像できません。でもこの...