「月の動き」と造る、究極のオーガニックワイン

「ビオディナミワイン」を知っていますか?最近人気が高まっているオーガニックワインの中でも農薬や化学薬品を一切使わず、月や天体の動きに合わせてスケジュールが組まれるという「究極のオーガニックワイン」です。どのあたりが「究極」なのか。知れば知るほど味わってみたくなるビオディナミワインの秘密に迫ります。

「天体カレンダー」に合わせて
決められる畑仕事

農薬や化学薬品を一切使わないのがオーガニックワイン。その中でもビオディナミワインを特別にしているのが宇宙の動きを気にしているところです。畑は生命体であり、その状態は人と同じように月の満ち欠けに左右される、というのがビオディナミの考え方。

たとえば満月のときは、土の中に住む微生物の動きも活発になるので畑仕事にうってつけの日。新月や月食の日は微生物が眠ってしまうので畑仕事には向かない日、というように。

このような月や星の動きを記した天体カレンダーに合わせて、畑の土を耕す日や収穫の日が決められるのです。

撒くのは農薬ではなく
畑にとっての「ハーブティー」

ビオディナミでは当然農薬は撒きません。かわりに撒くのは「プレパラシオン」という調合薬。これは自然の鉱石や、どくだみやカモミールの花、ドクダミの葉といった人の健康にもよいもので、いわば「畑にとってのハーブティー」。花や葉は煎じてディナミゼーションを施したものを、ワインの木にスプレーします。春になると畑を起こすために調合したお茶が、ブドウの木が弱っているときは病気や害虫に対する畑の抵抗力を高めるお茶が撒かれます。

他にも雄牛の角に牛糞を詰めたものを土の中に埋めることで、土の中の微生物や虫などの繁殖を助けて大地を活性化させたりもします。もちろんこれらのプレパラシオンを撒く日も天体カレンダーに沿って決められるのです。

それは、東洋医学に通じるワイン

プレパラシオンを撒くのは、土の微生物やブドウが持っている力を引き出すため。人間にも自分で自分の体を治す「自己治癒力」があるように、畑やブドウの木もバランスの良い栄養と休息がとれていれば、自分で調子を整えることができます。

ブドウが病気にならないために薬を撒くのではなく、畑をよく観察して土のバランスを保ち、ブドウの木の免疫力を高めるようとするのが、ビオディナミ。つまり、東洋医学ととても似ています。

味わいにも「宇宙」が関係する

畑が生命体なら、当然ブドウからできたワインも「いきもの」と考えるのがビオディナミ流。「ビオカレンダー」には、満月・新月に加えて、花の日、実の日、葉の日、根の日が記されています。

実の日はワインが一番バランスよく美味しく飲める日、花の日はアロマが香りやすい日、葉の日は味がしなやかにタンニンも落ち着く日、根の日はワインの構造がしっかりわかってミネラルが際立つ日など、天体の動きによって、ワインの味にも違いが生まれるんです。

ちなみに新月はワインの風味が閉じてしまうので、この日はテイスティングに向かないのだとか。究極に美味しい状態でワインを飲みたかったら、ビオカレンダーを参考にしてみては?

南仏を代表するビオディナミワイン
「ドメーヌ・カズ」

ドメーヌ・カズはまだまだオーガニックワインでさえ怪しいものとされていた20年前にビオディナミに転換したビオディナミワインの先駆者。ビオディナミを選択したのは、農薬を使わないことが畑で働く人たちにとって優しいから。自然に優しいのなら、もちろん人にだって優しい。それは飲む私たちにもきっと。試行錯誤を重ねて改良が続けられたワインではいまや世界中の三つ星レストランにも認められ、オンリストされています。

現在の畑の管理からボトル詰までの責任を一手に追っているのはオーリーさん。スペインやボルドーのワイナリーで経験を積んできた彼女は、ルーションのビオディナミワイナリーで働くことが長年の夢だったそう。

女性がワイン造りのトップになったことで、カズのワインはより繊細な味わいになったと評判です。「月の満ち欠けに影響されるのは女性だから、月と土の関係も本能として理解できるわ」と笑うオーリーさん。そんな彼女と仲間達が造るオーガニックワインは、マッチョさが一切なくて上品で飲みやすい。飲み過ぎ注意。でも是非味わってみて。