ブラジルのおいしいお酒を飲むなら「Bar TRENCH」へ――ブラジルのお酒と料理 特集
――Bar TRENCHは、どんなお店?
TRENCHには、塹壕という意味があります。
敵は前にいるけれど、塹壕にいれば少し時間を稼げます。前に進んでもいいし、残ってもいい。どうするかは自分次第。準備のための場所をイメージしています。隠れ家とか、潜り酒場というイメージではなく、もっとオープンですね。
ぼく自身が世界中で集めてきた、すばらしいお酒とTRENCHに合う音楽を、一緒に楽しんでいただけます。
――月曜の夜も賑やかでした。英語も飛び交っていて開放的。どんなお客さんが多いですか?
ご近所のかた、都外からわざわざ起こしくださるかた、それから、海外からのお客様も多いですね。
あえて言えば、日本の若い男性は少なめの印象です。バーに、オーセンティックでVIPなイメージが強く、なかなか入りづらいのかもしれません。カジュアルな雰囲気で、クオリティーの高いドリンクを提供するバーですので、気軽にドアを開けていただきたいです。
――ロジェリオさんから見て、日本と海外のバーの違いは?
普段の生活に根付いているか、いないかだと思います。海外のバーは、日本よりもハードルが低く、日常生活の一部ですから。クリエイティビティの自由さやおおらかさを日本以上に感じますね。
個人的に感動したのは、8年ほど前に行ったデンマークのRUBYというバー。みんなタバコを吸わないし、お店にはミントの木やバジルの木があって、その場で摘み取ったものをカクテルに使っていました。見ていて感動しました。
ブラジルも日本のように個人経営のバーが多いのですが、それは、アメリカやイギリスのバーで働いていたブラジル人が、経済状況の悪化とともに自分の国へ戻り、バーを開くようになって、5~6年前に一気に増えたからなんです。ブラジルでバーを経営している人は、そのほとんどがアメリカやイギリスに住んでいた人たち。ですから、日本のバーよりカジュアルで、賑やかな雰囲気です。
日本のバー文化は、オーセンティックで、少しハードルの高い印象があります。とは言え、もう少しくだけたライブバーのようなお店では、バーの雰囲気や本格的なカクテルは楽しめないかもしれません。Bar TRENCHは、その中間を意識しています。
――カクテルメニューのこだわりはどんなところ?
日本のバー雑誌には「メニューがないのは基本」と書いてあることがあります。Bar TRENCHはその逆です。メニューにお店のすべてが書かれています。
――その理由は?
マンハッタンが好きだと言うお客さんにマンハッタンを作って、その繰り返しになってしまったら、お客さんもバーテンダーも進化しません。同じストラクチャーで違うおもしろさのあるカクテルは、いくらでもあるんです。
例えば、マンハッタンが好きならブルックリンもオススメできます。ブルックリンはあまり知られていませんが、マンハッタンと同じくらいおもしろさがあります。TRENCHは、ブルックリンから始まるような場所ですね。そこからさらに、バリエーションを広げて、もう一段階上の飲酒体験を提案したいんです。
――冒険ができるということ?
そうです。“いつもの”を注文するのではなく、冒険をして世界観を広げて欲しいと思っています。
――ロジェリオさんはブラジル出身。ここでは、どんなブラジルのお酒が飲めますか?
サトウキビの蒸留酒カシャッサは、10種類ほど揃えています。どこのお店にも1本くらいはあるものですが、これでも一時期と比べると少ないほうです。
有名なブラジルのカイピリーニャというカクテルも作れますし、ホシコ デ イパネマのほかに、カサッシャサワーも。レモンサワーみたいな名前ですが、ここで出すサワーは卵白を使う1860年代のカクテルなので、出てくるものは全然違います。みんなびっくりすると思いますよ。
――カシャッサの人気はどうですか?
あまり知られていないお酒ですが、注文する人もいますよ。もっと流行って欲しいですね。
ジンやカシャッサは世界的なブームで、世界的にお酒を作る小さな会社が増えたこともあり、種類が豊富になってきました。ウォッカブームのあと、ここ5年くらいは、プレミアムクラフトジンが盛り上がりました。
お酒は、少しづつ慣れていくものでもあります。カシャッサも、ラムのジャンルとしてカテゴライズされているのですが、アグリコールラムとか、マルティニークとか、樽の匂いがなくクセが弱いホワイトラムも、海外ではよく楽しまれています。そういった楽しみかたも、徐々に知られていくのかもしれません。
――ホワイトラムは飲みやすくて日本でも人気が出そうですよね。ありがとうございました。
おいしいクラフトジンやカシャッサ、ブラジルのカクテルを飲みたい人は、ぜひBar TRENCHへ行ってみてください。