『クレイジージャーニー』出演者が語る、むき出しのスラム街・ファベーラ

極限地帯にいると、目の前の現象に感情が露わになる(丸山)

丸山

伊藤さん、もう当分はブラジル行く気ないですよね。

伊藤

行かないだろうね。

丸山

行くの、超大変じゃないですか。長いんですよね、とにかく移動が。

伊藤

中米行ってもう1本あるからね。そのまだ先だから。キューバとか、あのへんに行くのはまだ楽だよね。

丸山

本当にしんどいですね。伊藤さんはやっぱり中東経由?

伊藤

そう。だからなるべくトランジットで刻むよね。なるべく刻んで、泊まって、緩やかに行くようにしてる。まあ仕事だったらそうも言ってられないけど。

丸山

一昔前だと、アメリカかカナダ経由で入るのが比較的多かったけど、今は中東になりましたよね。中東はほら、空港泊とかできるから、わざと半日空けて寝てから行くとか。そういう人結構いると思います。そう考えると、まだ行きやすくはなったんだけど、やっぱりしんどいですよ。ブラジルは本当に。でも、行った分の面白さはありますよね。それが伊藤さんの写真集『ROMÂNTICO』にまとまっていましたね。

©DAISUKE ITO

ファベーラでおこなわれるブロックパーティー
(伊藤大輔写真集『ROMÂNTICO』より)

丸山

伊藤さん、聞きたかったんですけど、このタイトル「ロマンチコ」。

伊藤

「ホマンチコ」ね。

丸山

これ、どういう意味ですか?

伊藤

まあ“劇的”とか、英語で言ったら“ロマンチック”っていうことですよ。俺はたぶん、日本でサラリーマンをちょっとかじって、なんかそういう……やっぱりロマンを求めてブラジルに渡ったんだなって思った。振り返ったときに「そういうことだったんだな」っていう、本当にストレートなメッセージ。

丸山

ああ。やっぱり伊藤さんらしいところで付けたんですね。最初から迷いなくこのタイトルだったんですか?

伊藤

俺の友だちが「ホマンチコって、ちょっと響きが面白くね?」とか言って。響きがちょっとふざけてるし、面白いなと思って。そんな感じだよ。あとは知り合いの編集長とかが「お前の写真は劇的だなあ」とかって評してくれてたから。俺もやっぱり撮るんだったらドラマチックに撮ってやろうみたいなのがあって。

写真ってなんかゲームに似ているなって思ってて。一瞬の演出というか。光とか。ロマンチックなんだよね。精神的にもさ。自分はサラリーマンやってたから、なんかほら、大声だして怒ることとかってなかなかないじゃん。東京にいるとなおさら。

ところがこういうのを撮ってるとさ、怒りが充満してるわけ。メキシコシティの娼婦のところとかさ、空き瓶とか投げてくるんだよね。俺も本気で怒っちゃってる瞬間とかあって。それがちょっと心地よかったんだよね。タガが外れる瞬間っていうの?

丸山

分かりますよ。

伊藤

分かるでしょう?そういう感じ。ここじゃ言えないけど。だって道で声かけたら捕まっちゃいそうじゃない、日本だと。

丸山

本当にそういう感情の発露っていうか、感情をストレートに表に出せるっていうのは、海外を取材しているといいですよね。

伊藤

そう。本気で怒ったこととか、やっぱり意外とないんだと思うんだよね。日本にいると。

丸山

めちゃくちゃ怒ってますけどね、海外行って。よく冷静に取材しているとか言われるんですけど、感情むき出しのところは全部カットされてるだけ。

どっちかと言えば、僕の場合は怒るっていう感情ではなく、むしろ笑っちゃうんです。ときどきロケでもゲラゲラ笑ってたりする。周りもなんとなくそう見えているらしいんですけど、ディレクター陣が「カットしていないVTRをそのまま流したら、ゴンザレスさんの頭のおかしさというのは多分番組を通して視聴者に伝わるけど、それはテレビとして流せない」って言われました。

伊藤

なるほどね。もうマニアック過ぎちゃって。

丸山

そう。面白いことっていうか刺激なんでしょうね。「やべー」って笑っちゃうんです。だから、そういうので僕が怒るとかもあるし、でもどっちかというと起きた現象に対して感情がダイレクトに働くという部分で、やっぱり海外のほうが面白いというのはありますね。「こんなこと起きるかよ!」って、もう笑っちゃうのが多い。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。