『クレイジージャーニー』出演者が語る、むき出しのスラム街・ファベーラ

慣れてくると「この線だな」ってのが見えてくる(丸山)

丸山

ところで、なぜいっぱいある国の中でブラジルだったんですか?

伊藤

話すと長くなるけど、スペインにいるとき周りにブラジル人がいて、なんか俺、スピリットがバチンと合ったんだよね。ヨーロッパの人たちにあんまり興味ないなと思ったんだよ。

バルセロナで写真を勉強したのね。街はきれいなんだけど、でもなんかここでいいのか?みたいなのがあったのよ。会社辞めるのすげえ大変だったしさ。俺、写真でこれから生計立ててかなくちゃ!って気合い入ってるときに、なんかスペイン人たちのディスコで女の子をナンパする話とか、どうでもいいやって。俺はもっと心意気としては高いというかさ。だからお前らに興味ねえわって思ったんだよね。

いきなりブラジルに行く勇気とか、正直俺もなかったから。普通に日本で野球やってサラリーマンやって、そういう感じだったからさ。だからヨーロッパでワンステップ。まあ、言葉くらいは覚えておこうって。当時24歳くらい、もう一回言葉から覚えてやろうって思ってた。

丸山

その結果たどり着いた先がブラジルだった。ブラジルって2世、3世で日系人はいっぱいいるけど、こっちから移り住んだ日本人って、実はそんなにいないんですよね。

実際僕が行ったときも、伊藤さんのことを知ってる人、結構会ったんですよ。直接面識なくても「ファベーラに住んでる日本人でしょ?」みたいな。だから意外とね、噂になるというか、それぐらい小さい町ですよね。

伊藤

まあそうだね、すごいちっちゃい。

丸山

でもあの中で、あそこで暮らし続けて、トータル何年ファベーラにいたんですか?

伊藤

まあ引っ越しとかしてるけどね。10年。一人で5年、あと嫁さんと5年ぐらい。

丸山

奥さん、よくオッケー出しましたね。

伊藤

いやまあ、うちの嫁は意外と強いんですよ。俺と関係なくブラジル住んでたりしたし。高校のときにタイに留学してたりとかしてるし。

丸山

そういう人だったら行くかもしれないけど、やっぱり普通に日本で生まれ育ってる人を、ブラジルに連れていくのって、まだハードル高い感じがするんですけど、実際、行ってみたら楽しいじゃないですか。

伊藤

うん、楽しい。

丸山

最高に楽しいと思うんですよ。だから俺はもっとブラジルの面白さを伝えたほうがいいと思ってる。もちろん僕の立ち位置から「全然危なくないですよ」とは言いづらいし、「やっぱり危険じゃないか!」っていう、契約違反みたいな感じにはなりたくないので、全部いつも言うようにしているんです。

©DAISUKE ITO

『クレイジージャーニー』出演時に撮影したファベーラのギャング
(伊藤大輔写真集『ROMÂNTICO』より)

丸山

住んでみた伊藤さんに聞きたかったんですけど、サンパウロはいいですよね、ほぼ大都会。リオも一部を除いてほぼ普通に楽しめますよね。そこがね、いまいち伝わってないかなっていうのもあるんですよ。実際、治安で問題になるような地域って、伊藤さんから見て、このへんだよなって、大体もう分かりますよね?

伊藤

治安がいいか悪いかって、究極、治安が悪いエリアでもちゃんとそこの場所を理解していたら、どこが危ないかって分かるようになるもの。ピンポイントにあそこへ行っちゃまずいとかって、ちゃんと分かっていれば大丈夫って話であって。

丸山

そうなんですよね。

伊藤

そうそう。だからメディアで紹介するような一元的な情報だけじゃなく、住民の人たちも、「きのう銃撃戦があったよ」みたいに楽しんでると言ったらちょっと表現が悪いけど。

丸山

アトラクション的な感じ?

伊藤

のときもあるんだよね。ほとぼりが冷めた次の日とかに「あそこの屋根の上にヤツらがいたんだ」とか、情勢を話してるんだよね。今あいつがやられてどうのとか、そういう話をしてて、まあ楽しんでいるところもちょっとあるよね。でも、それこそイカれた、リオでも郊外の危険なエリアとかはね。俺でももう入りたくないもん。

丸山

いやまあ、露骨にそうですからね、僕が『クレイジージャーニー』の取材で行ったような所はね。映画『シティ・オブ・ゴッド』の舞台になった場所。もう分かりやすく危ない所なんで。

伊藤

本当に戦車とか、そういうレベルだったりするんでね。番組の取材でも、いくらこっちがキャラクター作って頑張ったって、頑張りが利かないようになってんじゃん。

丸山

まあ実際問題、慣れてくると、「ああ、この線だな」っていうのは見えてくるんですよね。あ、警察の言ってるこの線がここだなっていうのは分かって、そうするとそこさえ越えなければ契約上、警察は全力で一応守ってくれるから。そこは越えない。彼らの流儀に合わせてやっていれば、僕は基本的に大丈夫だなと思っているんですよ。

伊藤

大丈夫。だって向こうもケガとかされたら困るわけだから。そこはちゃんと分かってるよね。

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