『クレイジージャーニー』出演者が語る、むき出しのスラム街・ファベーラ

俺、将棋の“歩”になろうと思ったのよ(伊藤)

伊藤

『GONZALES IN NEW YORK』を読んで、はじめの方に書いてあったのかな。ニューヨークのことを書くって、結構勇気いるみたいなこと書いてありますよね。ニューヨークに住んでる人って、今いっぱいいるじゃん。だけど、いろんな所を見てきたから、俺だからこそ書けるニューヨークみたいなことを書いている。ああ、なるほどなと思った。それをちゃんと明らかにして書くって。なんかほら、ニューヨークってちょっと住んでるヤツだと「そこも知らねえのかよ」とか、そういうこと言いがちじゃん?

丸山

言いがちです、はい。

伊藤

だからすごいプレッシャーもあると思うんだよね。ブラジルなんて住んでる日本人がまずもって少ないからさ。だからそこは王道のニューヨークで、あえて「住んでいないからこそ書ける」ってのを公言して書くって、結構斬新だなと思った。

丸山

いや、ありがたいですね、そう言っていただけると。書くとき本当にドキドキしましたよ。でも、なるべく行ける所は行ったし、やれることはやったつもりです。今年に入ってまた2回行ってたんですけど、それぐらい、やっぱり好きな町ではある。そういう意味では、このときよりも情報とか見方とかがアップデートされてるところもあるけど、でもこのときはこのときのまとめ方で。

なるべくウソをつかないというか、抱え込まないようにオープンにすると、意外と伝わることがあるかなと思ってたんです。そのさらけ出す作業が、このニューヨーク本を書くときに最初にやったことなんです。

©MARUYAMA GONZALES

ニューヨークは街全体がキャンバスのよう
(丸山ゴンザレス『GONZALES IN NEWYORK』より)

丸山

自分がいかにカッコつけないかという。このニューヨークに対して、こういうふうに思っているんだとか、こういうふうに憧れを抱いていたけど、それが自分では気恥ずかしくて出せなかった時代があったとか。

素直に憧れのまま、ニューヨークでもどこでも留学してりゃよかったのに。僕はそのとき変に意地を張って、アジアの旅にハマっていったりとか。あ、アジアの旅はそれなりに楽しかった。だからハマっていったけど、でも留学するか、旅に出るかって迷ったときに、僕は旅のほうを選んじゃったとか。そういう、とにかく自分の中にあったいろんな選択肢を書くっていうのが、この本の中で一番最初に重視したことかな。

伊藤

ピュアにね。

丸山

はい。でも、伊藤さんも、そういうところ、あるんじゃないですか。結構こういうことを、みんながこれを言ったら引くのかな?とか。そういうことをもしかしたら思っているかもしれない。でも、関係なくズバッと言うじゃないですか。それって、結構勇気いりません?

伊藤

まあ俺、何も考えてないから。何も考えないフリとかしてるんじゃなくて、本当にそんなに考えてないかも。

丸山

でもそんなこと言うけど、伊藤さんは県内随一の進学校の出身なんですよ。宮城県では。

伊藤

いやそんな……もう何年前の話だよ(笑)。いやいや、それはいいんだけどさ。

丸山

伊藤さんって、大学のときからカメラやってたんですか?

伊藤

いや、日本で全然写真なんかやってなくて。さっきも言ったようにサラリーマンが嫌で、辞める理由でつい「カメラやる!」って言っちゃったんだよね(笑)。それか、何も言わないか、どっちかだと思ったの。最後にしらばっくれて辞めるか。

だけど、なんかいっぱい聞いてくるから、もう「俺、カメラやるから辞めます」って、はっきり言ったんだよね。そのときもなんとなく自分にはあったのね。ああ俺、やっぱり足使って働きたいなって。俺やっぱりブルーワーカーだわと思ったし、なんかデスクに座ってとか、あまり向いてないなと思って。

丸山

やっぱり行動するほうがいい?

伊藤

うん。暑苦しいこと言えば俺、将棋の“歩”になろうと思った。最前線で。今やってるようなこと。最前線でやっぱりほら、言葉も話せて、笑顔とこう、向こうの敵意、分かんないけど、交せたりするわけじゃない。そこの最前線感が、なんかちょっとかっこいいっていうか……ほら、自分がさらにむき出しになってくるじゃない。やっぱり大声を張り上げないと、最前線で。そこの相性が良かったのかな。

丸山

相性の良さはありますよね。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。