モノを持たないって、もう古い。GXがアップデートする「その先の暮らし」

最近よく耳にするようになったグリーントランスフォーメーション(GX)」という言葉。なんとなく重要そうだけど、「ビジネス用語っぽくて難しそう」「自分の生活にはあまり関係ないかも…」なんて思っていませんか? 

実はこのGX、私たちの暮らしをもっと創造的で、より豊かなものへと導いてくれる、未来のキーワードなんです。 

この記事では、そんなGXの基本から、私たちの生活にどう関わってくるのか、そして世界で始まっているワクワクするような新しい動きまで、わかりやすく解説していきます。 

まず知っておきたい「GX」の基本 

GXという言葉の輪郭を捉えるために、その基本的な意味から、なぜ今重要なのか、そしてよく似た言葉との違いを、一つずつ見ていきましょう。 

GXとは「経済成長」と「環境」を両立させる大きな変革のこと

GXとは、石油や石炭といった化石燃料から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーへ切り替えていく大きな流れのこと。「環境のために我慢する」のではなく、環境にいい選択をしながらも新しいビジネスや暮らしの豊かさをつくり出していくことがポイントです。 

たとえば── 

・服を“着倒す”のではなく、リメイクして新しい価値にする 
・フリマアプリ(「メルカリ」、「ラクマ」)で服や家具を売って循環させる 
・リペアサービスやDIYでお気に入りのスニーカーを直して使い続ける 
・シェアオフィスやシェアサイクルを使って「持たない暮らし」を楽しむ 

こんなふうに「これまでの当たり前をアップデートすること」そのものがGXなんです。 

なぜ今「GX」が注目されている? 

GXへの関心が一気に高まった大きなきっかけは、2020年に日本政府が「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」と宣言したことです。これは単なるスローガンではなく、国の未来戦略として世界に約束したものであり、企業や自治体の行動指針にもなっています。 

ただし、温室効果ガスをゼロにするというのは「電気自動車に乗り換える」など一つの行動だけで解決できるものではありません。電気をどうやって作るか、都市のインフラをどう変えるか、食べ物や服をどのように生産・流通させるかといった社会全体の仕組みを見直す必要があります。 

この文脈の中でGXは、単に「環境にやさしい選択をしましょう」という話ではなく、社会のあり方そのものをどう作り変えていくかという挑戦を意味しています。そしてそれは国や企業だけではなく、私たち一人ひとりの暮らし方や価値観にも直結していくものなのです。 

よく聞く「カーボンニュートラル」との違いは? 

ニュースやSNSで「カーボンニュートラル」という言葉を見かけることも多いと思います。これは、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること、つまり“最終的なゴール”を指しています。 

いっぽうでGXは、そのゴールにたどり着くために、社会や経済の仕組みを丸ごと変えていこうという大きな挑戦のプロセスです。 

イメージとしては、以下のような関係性です。 

・カーボンニュートラル=「ゼロにしたい」というゴール地点 
GX=「そこに行くための地図やルート、準備」 

たとえば山登りでいうなら、「山頂を目指す」というのがカーボンニュートラル、「どの道を通り、どんな道具を揃え、誰と登るか」というのがGXだと考えるとわかりやすいでしょう。 

GXで、ライフスタイルはどう変わる? 

GXは決して大企業や国だけのテーマではありません。私たち一人ひとりの「買う・使う・捨てる」の日常がどう変わっていくのか、そのヒントを見ていきましょう。 

「買う」ではなく「修理して長く使う」が当たり前に 

これまでの社会は「壊れたら買い替える」が前提でした。でも、GXの時代は「直して使う」「長く愛する」が基本になっていきます。 

EUではすでに「修理する権利」を保障する法律が動き始め、メーカーも長寿命設計や修理可能な製品づくりを求められています。さらに「デジタル製品パスポート」が導入されれば、服や家電に“プロフィール”がついて、素材や製造背景、リサイクルの可否まで一目でわかるようになります。 

これにより、消費者はただデザインや価格で選ぶのではなく、その背景にあるストーリーまで含めてモノを選ぶようになる。GXは、そんなモノの選び方の価値観も変え始めています。 

エネルギーを「つくる側」になるという選択肢 

GXが大きな変化をもたらすもう一つの領域が、エネルギーとの関わり方です。
これまで私たちは電力会社から一方的に電気を買うだけでしたが、これからは「自分たちでエネルギーをつくる」選択肢が広がります。
 

ドイツでは「エネルギー共同体」という仕組みが広がり、地域住民が出資して太陽光や風力の発電所を共同で運営しています。余った電気を地域に売ることで利益も循環し、エネルギーを地域の財産にしています。 

日本でも、家庭用ソーラーパネルや、シェア型の小さな発電所をコミュニティで持つといった動きが少しずつ広がっています。たとえば「友だちとシェアして使う」感覚に近く、音楽やサブスクをシェアするのと同じように「エネルギーをみんなでつくって分け合う」未来です。 

「無駄にしない」がもっと楽しくなる社会へ 

GXの本質は「環境にやさしいから仕方なく我慢する」ではなく、暮らしをより豊かに、より楽しく変えていくことにあります。その象徴的な領域のひとつが「無駄をなくす」という考え方です。 

フランスでは2016年に、スーパーマーケットでの食品廃棄を原則禁止する法律が施行されました。余った食品は廃棄せず、寄付やリサイクルに回すことが義務づけられています。日本でもフードシェアアプリや、食材の“レスキュー販売”が広がり始めており、「食品ロスをなくす」ことが社会の共通認識になりつつあります。 

そして「無駄にしない」は、もはやネガティブな制限ではありません。廃材をアップサイクルしてインテリアにする、リメイク古着をファッションに取り入れる、リフィル(詰め替え)を前提としたコスメブランドを選ぶなど、Z世代にとっては「個性を表現する手段」や「新しい楽しみ方」に変わっています。 

つまりGXは、「無駄を減らす」ことを目的にとどめず、それをきっかけに新しい文化やライフスタイルを生み出す挑戦でもあるのです。 

知っておきたい、国内で動き出しているGXの実践例

ここまで紹介したように、GXは「買い方」「エネルギーの関わり方」「無駄をなくす工夫」といった私たちの日常の延長線上で進んでいます。

では、社会全体を巻き込んだ取り組みとしては、日本ではどんな動きがあるのでしょうか? その代表例が、豊かな再生可能エネルギー資源を持つ北海道です。 

日本随一の「再エネ資源地」北海道

環境省の調査によれば、北海道は太陽光・風力・中小水力の導入ポテンシャルが全国1位。加えて地熱資源も豊富で、まさに“再生可能エネルギーの宝庫”と呼べる地域です。 

このポテンシャルに早くから注目し、地域と連携しながら動き出しているのが投資会社の「スパークス・グループ」。2012年から北海道で再エネ発電所の開発・運営を行い、地域とともに「エネルギーの地産地消モデル」を模索しています。  

スパークスが特徴的なのは、単に「資金を投じる投資会社」として動いているのではなく、地域の人たちと一緒に未来をつくるパートナーでありたいと考えている点です。地元の声を聞きながら「どんなエネルギーの使い方が、その土地に合っているのか」を対話し、試行錯誤を重ねています。 

北海道の自然の力を、北海道の人々の未来につなげる。そのために一緒に汗をかく──。スパークスが掲げる想いには、そんな人間味のあるストーリーがあります。 

グリーン水素でつくる、新しいエネルギーの流れ

その象徴的な取り組みの一つが、2025年から苫小牧市で稼働している「グリーン水素」の実証事業です。 

グリーン水素とは、石油や石炭ではなく、太陽光や風力、バイオマスといった再生可能エネルギーを使って水を分解し、取り出す水素のこと。製造の段階でCO₂を排出しないため、“究極のクリーンエネルギー”として世界的にも期待されています。 

苫小牧市では2025年から実証事業が始まり、再エネ電力を使って水素を製造し、圧縮・貯蔵・輸送までを地域内で一貫して行います。こうして生まれた水素は、ボイラーやストーブ、燃料電池などで活用され、日常の暮らしにまで広がっていく予定です。 

この取り組みの意味は、単なる「新しい燃料の実験」ではありません。エネルギーを外から買うのではなく、自分たちの地域でつくり、循環させるという仕組みを形にしている点にあります。化石燃料に依存せず、地域の資源で暮らしを支えること──それこそがGXの目指す未来の姿なのです。 

規制改革、金融特区──GXは制度もアップデートしていく

GXを進めていく上で欠かせないのは、新しい技術や事業だけではありません。社会全体のルールや制度をアップデートしていくことも重要です。

2024年、北海道・札幌市は「GX金融・資産運用特区」に指定されました。これは、北海道が持つ豊富な再生可能エネルギー資源を活かしつつ、GX関連の産業や金融機能を集積させ、アジアの中でも存在感を発揮できる地域にしていこうという国の取り組みです。

この特区では、再エネや水素などGX分野への民間投資が後押しされるほか、スタートアップ育成雇用創出も期待されています。つまりGXは「電気のつくり方」を変えるだけでなく、「投資の仕組み」や「金融の流れ」まで巻き込んで、新しい社会の土台をつくろうとしているのです。

こうした制度改革や金融面での支援を含め、技術・暮らし・制度が三位一体となることで、地域発のGXは本格的に広がっていきます。

未来をつくるのは、私たち一人ひとり 

GXは、環境や経済の話にとどまらず、社会の仕組みそのものを新しいかたちへと変えていく大きな挑戦です。北海道で進む再生可能エネルギーや水素の実証、制度や金融のアップデートは、その先駆けに過ぎません。 

大切なのは、こうした動きが“未来をつくる主役は誰か”を問いかけていること。国や企業のプロジェクトに任せきりではなく、これから長く社会を担っていく私たち自身が、その変化をどう選び取り、どんな社会を望むのか。GXの未来は、その意思と行動にかかっているのではないでしょうか。 

 

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