“ヘボい”ロボットだけが集まる「ロボコン」が相当ヤバい

ロボットのコンテスト(いわゆる「ロボコン」)といえば、専門知識を学んだ学生たちが、高度な技術でハイレベルな戦いを繰り広げることでお馴染み。彼らにとって、ロボコンはいわば“甲子園”のような存在。一世一代の大勝負の場。

ところが、そんな輝かしい大会とは裏腹に、「ヘボコン」なるものが開催されているらしい……。

技術力の低い人あつまれ!

プぁと地 / YouTube

技術力の“低い”人限定のロボコン、それが「ヘボコン」。その名の通り、ヘボいロボットが戦うコンテストだそう。

高度な技術なんてまるでない人たちが脆弱なロボットを持ち寄り、おぼつかない足取りでロボット相撲を繰り広げる。ルールは単純。ロボットが転倒するか、土俵から出てしまうと負けとなるトーナメント戦。

通常のロボコンであれば、言うまでもなく誰もが戦いを勝ち抜き、勝者となることを目指す。しかし、ヘボコンにおいてはそうとは限らない。

技術力が低いことが尊ばれる同コンテストにおいて、優勝者は雑に扱われるというのだからオモシロい。なんなら、会場投票で決められる「もっとも技術力の低かった人賞(通称:最ヘボ賞)」を受賞することこそが、何よりも栄誉あることなのだそう。ここで勝ち負けにこだわるのはむしろ“愚行”、ということか。

過去の出場ロボットには、魔改造されたバービー人形が高速回転するもの、「からあげクン」の空き箱から手足が生えた奇妙なもの、ただひたすらに動かないよう重量一点勝負に徹したのもの……などなど。“ヘボ”とは銘打ちながらも、そこは情熱と愛情の結晶たちが土俵を賑わしてきたそうだ。

多種多様な発想から生まれた個性的なロボットたちを見ていると、技術力の高さこそないものの、制作者の狙いだったりかける思いが伝わってきて、不思議とコチラも熱くなる。

磨き抜かれたその技巧が仇となる!?

ところで、ヘボコンにおける重要なルールがある。それが「ハイテクノロジーペナルティ」と呼ばれるもの。

お察しのとおり、“技術が高度すぎる”とされるロボットは、ペナルティ対象となってしまうという独自ルールだ。ハイテクノロジーだと判定される理由はいくつかあるそうで、リモコンによる遠隔操作や、センサーやタイマー含む人工知能、そのほか、主催者が高度と認めたもの

ただしこれには例外も。

市販品をそのまま利用した場合や、自分で実装した機能でもうまく動いていない場合にはペナルティ対象とはならないらしい。ルールまでもがなんだかなぁ。でも、これぞまさしくヘボコン、ヘボこそ正義!というわけだ。

“出来損ない”こそが魅力

ヘボコンを企画・主催する石川大樹氏によると、肝心のロボットは現場に着いた途端、動かなくなったり、少しの衝撃で壊れたりするものも。さらには前進するにしても、スムーズにはいかなかったり。こうしたロボットは一般的には「価値がない」とされるが、出来のいいロボットにはない魅力を秘めていると強調する。

たとえば今、あなたの目の前で、1歳になったばかりの赤ちゃんがおぼつかない足取りでよちよち歩きをしている。あどけない姿に深い愛情を感じるのではないだろうか。赤ちゃんへ感じる愛おしさと等しく、思い通りに機能しているか定かでないものの、なんとか戦おうと奮闘するロボットたちの姿は、石川氏に言わせると“愛おしい”存在。

さらに、ヘボさの魅力はロボットだけに留まらず、ロボットの制作者である人間の魅力でもあるそうだ。ヘボい制作者は、たとえば雑に作業してしまったり機能を一度もテストしなかったり、なんなら途中で諦めたり。そんな「人間の弱くヘボい部分」が透けて見える、それも含めてヘボコンらしい。

どう?この世界観。

生産性が求められるいま、
あえて「不完全さ」で勝負したい

昨今のロボットの進化は凄まじく、人間のあらゆる問題を解決しようと常に前進を続けている。定型業務は効率化され、情報はすばやく処理、労働生産性を向上させる存在として、これからも社会により浸透していくだろう。

そんなロボット・AI全盛の時代に、あえて“不完全でヘボい”ロボットと向き合うこと。そのことにも、もしかしたら重要な価値があるのではないだろうか?

出来損ないのロボットは、どこか人間に愛着を持たせ、弱さを楽しむコミュニケーションの場となりうる。生産性向上が求められがちな現代において、生産性のない無駄を楽しんでみてるのもアリかもしれない。

 

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ちなみに、「ヘボコン2024」へのエントリーは5月15日(水)まで募集中。これを期に、あなたも内なるヘボさで勝負してみてはいかがだろう。もちろん、他人のヘボをひと目見に行くだけでも価値ありだ。

『ヘボコン2024・イベント概要』

【日時】2024年6月29日(土)17:30 開場

【会場】東京カルチャーカルチャー(渋谷)

詳しくは公式サイトをチェック

Top image: © iStock.com/JulPo
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