囚人に学ぶ、筋力トレーニング――ベンのトピックス

突然ですが、フィットネスジムって高くないですか? 

日本の平均月収はたしか32.5万ぐらい。対して、ジムの月会費の相場は1万円以上。給料の3%以上となります。しかも、今のように寒い季節にはジムに行くモチベーションがあがらない人も多いでしょう。

東京に負けず劣らず物価が高いロンドンでは、ジムにお金を払いたくないという人が増えています。

だから、僕は今「プリズナートレーニング(囚人筋トレ)」に注目しています。

これは刑務所内のような状況(ジム設備なし、高価なサプリメントなし、狭い部屋)でできるワークアウトメソッドのことです。

はじまりは、チャールズ・ブロンソンでした

© Naomi Nemoto

この人が、プリズナートレーニングの元祖とされる「イギリスで最も危ない、最も維持費のかかる囚人」チャールズ・ブロンソンです。

1974年、ブロンソンは22歳の時、郵便局に強盗に入り禁固7年を宣告されました。

当時のイギリスの刑務所は劣悪な環境でした。ボクシングが得意だったブロンソンは、看守や囚人とよくファイトし、何度も暴動を煽るなどやりたい放題。刑期は何度も延長されました。彼は、現在まで人生の3分の2を刑務所で過ごしている人物です。当然、外の世界のことはよくわからない。

ところが、99年頃からブロンソンは、その犯罪歴以外のふたつの側面で有名になります。ひとつはクリエイティブなアウトサイダー・アーティストとして(彼のアートについてはここでは置いておきましょう)、もうひとつがマッチョなワークアウトの実践者として。

ブロンソンのメソッドに関しては、02年に彼が上梓した『Solitary Fitness(独房のフィットネス)』の宣伝文がわかりやすい。

「俺の本を買ってくれれば、たるんだ腹をなくす方法、そして太く強い腕とありえないほどのスタミナを作る方法を教えよう!サムソンにステロイドはいらない、ヘーラクレースに300£のスニーカーはいらない」

この本のメッセージは、高価なフィットネスジムでのワークアウトがすべてだと考えていた人々にインパクトを与えました。

じつのところ、この本の出版以前にも受刑者とワークアウトのつながりはありました。92年にはマイク・タイソンが刑期を終えてカムバックを果たしたし、ロバート・デ・ニーロもマッチョなカラダを作るために、受刑者のようなミニマムなワークアウトを実践していました。

とはいえ、ブロンソンの『Solitary Fitness』は、それらをはじめて体系だって世に送り出しました。しかも、徹底的にユニークなかたちで。

スポーツジム以外の選択肢

さて、チャールズ・ブロンソンと彼によるプリズナー・トレーニングは、イギリスでは話題となりましたが、世界に広まったのはもう少し後のことです。理由はブロンソンの悪名がイギリス国内のみのものだったから。

ブロンソンが元祖だとすれば、それを広めたのはアメリカのポール・ウェイドです。彼もまた刑務所内でカラダを鍛え、09年に『プリズナー・トレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』という本をリリースしました。

この本は日本語版も出ていますし、今では類似本もいくつかリリースされています。

もしかすると、今年あたり世界的にこのプリズナー・トレーニングのトレンドがやってくるんじゃないかと僕は考えています。

相変わらずInstagramでは、鍛えられたボディやその過程をアップするトレンドがあるなかで、フィットネスクラブ以外の選択肢が求められてくるはずです。健康的でミニマルな刑務所内でのワークアウト――プリズナー・トレーニングは、カラダを鍛えたい人にとって最適だと思うのです。

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