まるでビクトリア朝時代にタイムスリップした気分を味わえる?オランダの「ディケンズ・フェスティバル」
オランダ東部に位置する昔ながらの都市、デーフェンテル。
ここでは毎年、小説家チャールズ・ディケンズの世界を舞台にした盛大なお祭り 「デーフェンテル・ディケンズ・フェスティバル」が開催される。
コロナ禍で一時的に中断されていたが、今年ついに復活を果たした。
チャールズ・ディケンズは、ヴィクトリア朝時代を代表するイギリスの小説家。オランダの古都であるデーフェンテルとは縁もゆかりもなく思えるが、このイベントは結構な歴史を持っている。
フェスティバルの起源は1991年。チャールズ・ディケンズの作品が好きだったEmmy Strikなる人物が、「ヴィクトリア朝時代を再現したパーティー」を個人的に催したのが始まりだったそう。
創設者に代わって娘のLiesbeth Veldersが想いを受け継ぎ、今では12万5000人が訪れる世界最大のチャールズ・ディケンズの集いへと成長。
33年目を迎えた今年も、ヴィクトリア風の衣装を身にまとった1000人近くのボランティアが芸を披露したり、お菓子を売ったりと大賑わいとなった。
興味深いのは、世界観の再現度。
なんと、フェスティバル参加者は「現代的なテクノロジー機器」の使用が禁止。当時の世界観の再現は隅々にまで行き届いており、チャールズ・ディケンズが作品を通して伝えてきた「貧富の差」も忠実に表現されている。
また、ディケンズ作品を読んだことのない子どもや若者が楽しめるよう、実際に著作のキャラクターが登場する演出も。62歳のWessel Lindeboomさんは、『クリスマスキャロル』の主人公であるスクルージを演じて来場者を出迎えた。
物語に触れる喜びや、そこから得られる啓蒙は時を超えて人間の心を動かすものだ。AIによる侵害や読書離れが進む今、こうした「文学の力」を見直す動向は強まってきている。
デーフェンテル・ディケンズ・フェスティバルは、文学の社会的な影響力を示す例と言えるだろう。本イベントが目指すように、古典を通して、文学の意義を考え直してみるのもいいかもしれない。