日本人ギタリスト「T-cophony」が世界を驚愕させている。

誰もが一度くらいは、路上ライブなどでアコースティックギターを弾きながら歌うミュージシャンを目にしたことがあるのではないでしょうか。右手を上下にジャカジャカとかき鳴らし、乾いた音色を響かせる。

もしあなたが「アコースティックギター」と聞いてそんなイメージを持っているとしたら、きっと彼の演奏に驚くはず。

ソロプレイとは思えない 
「T-cophony」の神業

ダブルネックギターと呼ばれる、2つのネックがついた特殊なアコースティックギターを、まるで複数人で演奏しているかのように奏でる彼は「T-cophony(ティーコフォニー)」という日本人ギタリスト。

数年前に人気バラエティ番組で生演奏を披露して話題になったので、もしかしたら「あっ!」と思い出した人も多いかもしれません。

海外からも絶賛の声

彼は滅多にメディアに出ることがなく、インターネットで動画や音源などを公開。その数300曲以上!海外からの反応も多く、その神業的な演奏と癒しのサウンドに魅了される人が増殖しているんです。

カナダの世界的ロックバンド「Walk Off The Earth」がSNSで彼を絶賛したことも話題になりました。その共有された動画は、わずか2週間で200万回以上も再生され、今なお世界中の人々が称賛のコメントを投稿しています。

これは彼の代表曲のひとつで、前述のTV番組でも披露された曲。

彼の音楽は、心の奥底をくすぐるような切なさと、それでいて元気が湧いてくるような不思議な感覚に陥る世界観が特徴的。

ダブルネックではない演奏も、まるで打楽器のような弾き方。「本当にひとつのギターなの?」と思ってしまうほどの音の数と表現力に驚かれます。

ここまででも「T-cophony」の魅力は伝わったかもしれませんが、一変してハードロックのような激しいドラムに電子音楽を混ぜたような近未来的なサウンド、そこに特徴的なアコースティックギターの音色を融合させたものもあるんです。

ギターは父親からの
誕生日プレゼントだった

ライブ活動も極端に少なく、あまり人前に出ないことでも知られ、彼の人間性を垣間見ることはなかなかできません。もしかしたら彼のファンであっても、そのバックボーンを知る人は多くないかもしれません。

一昨年、活動10周年を迎え、それを記念して発表されたドキュメンタリー・フィルム『It's me』を見ると、これまで明かされていなかった彼の音楽に対する想いや生い立ちについて知ることができます。

音楽好きの両親によって、つねに音楽が流れる環境で育った彼がギターに目覚めたのは意外にもそれほど早くはない、14歳でした。たまたま家のクローゼットから埃をかぶったエレキギターを見つけたのがきっかけだそうです。

じつはそのギターは彼が幼少期に父親から誕生日プレゼントにもらったもので、何年も興味を持たず放置していたことへの罪悪感から、それを機に触るようになったようです。

そのギターで、彼はまるで水を得た魚のように曲作りに没頭します。

やがてエレキギターが壊れたことで、電気コードを繋げなくてもいいアコースティックギターをメインに使い始めます。「T-cophony」の名が広まり始めたのは、ちょうどその頃でした。

演奏に驚いた知人が、彼にインターネット上で動画を公開するように勧めたそうです。2005年、それが瞬く間に世界に広がり、注目を集めることとなりました。

3歳のときの病が
後遺症に

彼は3歳の頃に脳梗塞を患い、全身麻痺になったことも明かしています。その後、奇跡的に回復したようですが、いまだに左脳の血管が詰まった状態。一方で、特殊な感覚に悩まされているとも言います。

普段見慣れた場所が、突然初めて来た場所のように感じる現象。それが1日に数回起こり、そのたびにその異常な感覚に耐えなくてはならないのです。それをうまくコントロールするために、今いる場所や光景を変えられるような、自分にとって影響力のある曲を作るようになったそう。

たしかに、昔大好きだった曲を聴くと、懐かしい気持ちになりその時代にタイムスリップしたような感覚に陥ることがあります。彼が言う「光景を変えられるような曲」と言うのは、そういうことなのかもしれません。

イヤなことがあった日は、たとえ自分の部屋にいたとしても、どんよりとしてしまいます。そんなときに好きな音楽を聴いて感情を和らげられたら抜け出すことができます。それがまさに音楽の魅力ではないでしょうか。

「自分と似た境遇の人がいたら、その空間から抜け出すことができる、特別な曲を見つけて欲しい。もしあなたが楽器を演奏することができるなら、自分で曲をつくることをお勧めします。そのほうが、もっと自由になれるから」

その音色は
小鳥も魅了する!?

これは、1年ほど前に公開されたもので、広場でひとり、アコースティックギター1本でさらっと1曲を演奏しています。いつもの神業的なプレイを見せてくれるかと思いきや、今回は何か様子が違います。

その音に合わせるかのように、どこからともなく小鳥の可愛らしいさえずりが、まるで曲に合わせて歌っているかのようにも聞こえてきます。そして演奏が終わった瞬間!…見てのお楽しみです。

おまけにもうひとつ。

「じつはこれまでソロ活動がメインでしたが、新たなプロジェクトとして、カホン奏者とのデュオを始めました」

とのこと。ぜひチェックを。

Licensed material used with permission by T-cophony, (Facebook), (YouTube)
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。