交通事故のとき、お互いの記憶が曖昧になるのはなぜか?
自信がある人もない人も、脳の体操「記憶力テスト」の時間です。今から、動画内で流れる15の単語を記憶して、書き出してみてください。
答え合わせと一緒に、ヒトの記憶のメカニズムについて少し勉強してみましょう。
それでは、記憶した15ワードを書き出してみてください。
さて、いくつ
覚えていましたか?
正解は、画像の下へ。
SOUR、NICE、CANDY、HONEY、SUGAR、SODA、BITTER、CHOCOLATE、GOOD、HEART、TASTE、CAKE、TOOTH、TART、PIE
人によっては、お菓子の名前が連続していたことから連想して「SWEET」など、なかった単語を書いてしまう人もいるようです。
これは「過誤記憶(False memory)」と呼ばれる現象で、実際には起きていないことを起きたかのように思い出してしまうことを指します。
ダース・ベイダーの台詞を
間違えて覚えていたり…
過誤記憶(False memory)は例えば、「モノポリー」のキャラクターが片眼鏡をかけていると勘違いしたり、ダース・ベイダーの「ルークよ、私がお前の父親だ」という台詞を「違う、私がお前の父親だ」と覚え間違えていたり、白雪姫の魔女が唱える「鏡よ鏡」という言葉を「魔法の鏡よ」と、記憶違いしているようなことを言います。
曖昧な記憶に
間違った情報が上書きされる
でも、どうしてこのような「記憶違い」が起きるのでしょうか。
私たちの脳は、詳細な部分まですべてを覚えられるわけではありません。例えば好きな人と一緒に遊びに行ったとき、彼がどんな色の帽子を被っていたか、というような点は曖昧になっているかもしれません。
しかしその曖昧な記憶は、誰かからその話を改めて聞くなどして新しい情報を得ることによって、完全なものになっていきます。
その過程で記憶の細部は置き換えられ、間違った情報も真実として受け取ってしまうために「過誤記憶」が作り出されるのです。
交通事故を想像してみましょう。
とっさのことで記憶が普段以上に曖昧になっているところに他人の話が入ってくるので、正しい記憶が形成されず、人によって証言が食い違うことがよく起こります。
他人の記憶を
コントロールできる!?
また、過誤記憶は人為的に作り出すことも可能です。「ショッピングモールの迷子実験」という有名な実験では、被験者の家族から聞いた本当のエピソード3つに1つだけ「ショッピングセンターで迷子になったことがある」という虚偽を混ぜ、被験者がそれを真実と思い込むかどうかを試しました。
すると被験者の25%が、そのエピソードを真実として思い込んだそうです。
さてこのビデオの冒頭には、下記のロゴがありましたよね。そのあと動画がどんな風に始まったか覚えていますか?
…実はこの動画、最初にロゴなんてありませんでした。この話を聞いて「ロゴがあった」と思ってしまった人は、「過誤記憶」を体験したというわけです。
人の記憶はとても曖昧で、しかしとても興味深いものです。その性質を理解すれば、間違った記憶に振り回される機会も減るかもしれません。