「日本の駅はうるさい」世論を一変させた、あの「メロディ」
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
「発車メロディ」誕生の日
海外の人たちが「日本人らしさ」と称えるもののひとつに発車メロディがあります。そう、出発を告げるあの音楽です。
今日、3月11日は東京を代表するターミナル駅(JR新宿駅、JR渋谷駅)に発車メロディが導入された日。それは1989年のことでした。
乗降客数の多い両駅での使用により、発車メロディは東京を中心に日本全国へと広がりをみせ、今日に至ります。
2000年以降に生まれた人たちからすればあまり馴染みがないかもしれませんが、それ以前は非常ベルのような電鈴と呼ばれる警告音が一般的。
目覚まし時計を想像してみてください、ジリジリジリ……と暴力的な音がホームに轟く。発車を知らせる合図ですし、安全面を考慮しても、たしかにそれはそれなのかもしれません。
でも、電鈴をノイズと感じていた人は少なくなかった。
発車メロディのはじまりを調べていますと、作家で元朝日新聞記者の本田勝一氏が朝日新聞に寄せたコラム「騒音に鈍感すぎないか」(1987年11月13日付)に行き当たります。
氏は記事内で「日本の駅のアナウンスはうるさい」と批判。大きな反響を呼び、ついには翌年8月JR千葉駅で発車ベルが廃止に。これをきっかけに発車ベルの見直しが進みます。そして、代案として登場したのが「発車メロディ」だったのです。
開発にあたってJR東日本が協力を求めたのは、楽器や半導体、音響機器を手がけるヤマハ株式会社。発車メロディのシステム開発をすすめ、89年3月、ついに新宿、渋谷のターミナルステーションでお披露目となりました。
「けたたましい警告音」から「耳にやさしい通知音」へ。
国鉄分割民営化から2年、JRにとっても一大事業だったに違いありません。それまでのスタンダードが大きく変わった出来事でした。
発車ベルがメロディに変わる大改革から早30年。2000年ごろからは、ご当地ソングを使用した「ご当地発車メロディ」や、地域にゆかりのある作曲家や歌手による楽曲提供、さらには映画やドラマなどの主題歌など、各路線各駅ごとに趣向を凝らしたメロディが採用されていますよね。
こうした駅それぞれの発車メロディは訪日外国人たちに人気があるとかで、スマホに録音したり、発車メロディが流れるキーホルダーをお土産にしたりと、交通インフラの音を楽しんでいるみたい。
ちなみに、海外ではこうした発車メロディは珍しいようで。日本を模して台湾鉄道ではメロディが流れますが、ここまで全国に浸透しているのはやはり日本だけのようですね。
さあて、ふだん何気なく耳にしている発車メロディ。聴いただけでどこの駅に自分がいるかわかりますか?
「あ〜、えっと、どこだっけ?」ってきっとなるはず。よろしければ自身の“鉄道愛”をお試しくださいませ。