格安で「大変身」を起こす手段、のはずが……
エレガントに、アイコニックに、スタイリッシュに。
モードに手を出してあれこれし始めると、とにかくお金がかかるものですが、抑えられるところは安く済ませておきたいのが本音です。そんななか、先日「H&M」が発表した新作は、目の肥えたファッショニスタにも刺さり得る……気がしました。
先日の新コレクションの発表も含め、「サステナブル」や「ファストファッション」の枠組みを超えた先進的なスタイルへと向かっている同ブランド。
「バルマン」に「ヴェルサーチ」、「イザベル・マラン」etc…これまでも幾度にわたってハイファッション界とのコラボレーションが実施されてきましたが、さすがに「ミュグレー」は意外でした。
というのも、これまでの(というか他のあらゆるヘリテージ系)ブランドと比べて、ここまで尖りまくったスタイルは異色と言えるものです。
巨匠である故マンフレッド・ティエリー・ミュグレーの時代から、エレガンスに限界までエッジィさを求めたスタイルではありましたが、現デザイナーのケイシー・カドワラダーによって再誕。他の追随を許さない、唯一無二のスタイルを貫いています。
シルエットからディティールの隅々まで凄まじくアイコニックなコレクションの数々は、ある意味かなり着用に勇気がいるものばかりで、これが商業用にカジュアルアイテムを量産している他のブランドとは一線を画している点でもあります。
ひとつ着れば「ブランド物」とアピールできるロゴ系商品やバッグ等とは異なり、根本的に着用難易度が非常に高く、下手に取り入れれば“服に着られる”状況になりかねないでしょう。
さて、そんなブランドとコラボをするというのは、ある意味H&Mが「対応できるレベル」になってきた、ということでもあるはずです。
先日の「Re-Enchantment Story」では、かなりモダンでゴージャスなスタイルを発表し、サステナ文脈を突き詰めることで独自にさまざまな路線への対応を証明して見せています。
コラボと言えどもあくまで「ファストファッションの範疇」だったH&Mでしたが、そろそろ本格的に変革が起きつつあるのだと思います。これなら、先の「抑えられるところは安く」の候補にもなり得るのではないでしょうか。
なお、コラボ展開に伴って、カドワラダー色全開のめちゃくちゃかっこいいローンチムービーも公開されています。
いかにも彼(またはミュグレー)らしい前衛的なムービーですね。ちなみに、流れている音楽は1998年にスターダスト(ダフトパンクのメンバー)が発表した名曲『Music Sounds Better with You』のアレンジ。
シャイガールやアルカといったハイパーポップのアーティストが集い、このキャンペーンのために制作したのだそうです。映像・音楽ともに、プロジェクトへの気合いが感じられます。
しかも、コラボのテーマは「ミュグレーの遺産」。
アーカイブを参考し、ファッションマニアたちがブランドの歴史にまつわるアイテムを手に入れる機会を提供することを目標としているそうですから、(H&Mファンへの)手加減なし、全力のアバンギャルドが展開されることでしょう。
なお、カドワラダーは本コレクションについて「真のミュグレーにしようと決めた」ともコメントしています。これは期待できそう!
ということで、今回は学生の身でありながらモードに憧れてしまった筆者の“秘密兵器”であるH&M価格で手に入るミュグレーご紹介するつもりでした。
……ところが。
上の箇所まで記事を書いたしばらく後、H&Mのオンラインストア上で正式な値段が発表されました。
さすがはこのクオリティと言ったところで、発表された値段はH&M価格を遥かに凌駕し、なんとアウター類では優に5万円を超えてきたではありませんか。
諸々重なって金欠が痛手の筆者でしたが、不幸中の幸い(?)、発売を思い出してオンラインサイトを確認した頃にはほぼ全商品が完売。結論としては、被りを恐れるどころか、何も手に入れずに済んだのでした。
まあ、出費は抑えられたし、エッジィを狙って誰かと被ることもなかったので、吉ということにしましょう。それでは、また次回!(笑)
「おやつなトピック」って?
Z世代のインターンから、この道うん十年のベテラン編集者まで、TABI LABO“ナカの人”がリレー形式で担当するコラムです。