「入場料徴収」を決定したヴェネツィア。その現状とは?
「アドリア海の女王」こと、ヴェネツィア。
“水の都”の愛称でも親しまれるなど、街中が運河で張り巡らされ、その美しい街並みを目当てに、人生で一度は訪れたい観光地とも言われるほどだ。
また、「東京ディズニーシー」の一部エリアがヴェネツィアをモチーフとしているなど、日本人にとっても馴染みある風景なのではないだろうか。
しかし、そんな女王が今、危機に瀕しているという。
観光地として栄えることは決して悪いことではないが、何事もやりすぎは良くないものだ。事実、現地住民は悲鳴をあげているという。
ヴェネツィアに、いったい何が……
ヴェネツィアには、年間およそ3000万人もの観光客が世界中から押し寄せるという。その多くが本島、いわゆる“ヴェネツィアらしい景観”を求めてやってくる。
本島の面積は、東京都千代田区のほぼ半分ほど。いっぽうの3000万人という数は、2018年の年間訪日外国人とほぼ同じ数であるから、その異常さがわかるだろう。
そして、押し寄せた観光客が運河にゴミを投げ捨てたりすることにより、地元住民が生活できないほどに水が汚染されるなど、問題は深刻だ。
コロナ禍で観光客が激減した際には、運河が劇的に綺麗になり、地元住民も感動したというニュースは記憶に新しい。それがわずか1年余りで……なんとも皮肉なものだ。
いずれにせよ、いわゆるオーバーツーリズムな状況に耐えかね、本島では過去50年間で12万人もの人々が移住することを選択し、人口が5万人を下回ることも時間の問題だという。
だが、ヴェネツィアも黙ってはいない
この状況に、ヴェネツィア市も黙ってはいない。
今月5日、日帰り観光客を中心に、5ユーロ(日本円で約790円)を入場料として徴収すると市が発表、ニュースは瞬く間に世界中で報じられた。
じつはこの施策、かなり前から検討されていたもののようで、コロナの収束とともに実施が決定されたようだ。
ヴェネツィアでは、過去にも住民専用の水上バスを運行したり、大型クルーズの入港を禁止するなど様々な手を打ってオーナーツーリズムへの対策を打ってきたが、とうとう入場料の徴収へと踏み切ったようだ。
施策がどこまで機能するか、注目だ。
これからの旅行、一考してみませんか。
コロナが明け、旅行という人生の醍醐味が復活しつつある今、私たちには何ができるだろうか。
日本という観光大国に生きる以上、オーバーツーリズム問題は決して他人事ではない。渋谷のスクランブル交差点やハチ公には、記念撮影をする外国人観光客で溢れ、「ここどこの国だっけ……?」と錯覚してしまうほど。
今回のヴェネツィアの入場料という施策を受け、個人的には「もっとお金とってもいいんじゃない?」とも感じた。
しかし、どうだろう。
ヴェネツィアの本心は、これ以上観光に来ないで欲しいということなのだろうか?
むしろ、このような形で“オーバーツーリズムへの警鐘”を鳴らし、ヴェネツィアのみならず世界中の観光客に対して何かメッセージを送りたかったのではないだろうか。
このニュース、あなたならどう捉えるだろう?