今や狂信、「アメリカン・ドリーム」が米国人を殺している
先日発表された『World Happiness Report 2024(世界幸福度報告書)』にて、アメリカが統計開始以来はじめてトップ20から転落。昨年の18位から23位へと、わずか1年で大きく順位を落とした。
原因は、歯止めを知らないインフレーション?それとも不安定な世界情勢?
色々と考えられるが、どうやら最も有力なのは“アメリカン・ドリーム”らしい。
アメリカン・ドリームが私を苦しめる
ロックバンドのGreen Dayが今年1月にリリースしたアルバム『SAVIORS』。
ファーストトラックの題は「The American Dream is Killing Me」──アメリカン・ドリームが私を苦しめる、というものだった。
アメリカン・ドリームといえば、「努力すれば誰もが華やかな生活を手に入れられる」というような、米社会の理想。
モチベーショナルな概念として認識されているはずだったが、昨今では、寧ろこの教えのせいで「幸せは後からやってくるもの」と考える人が増えているという。
幸せをお預けにして頑張りつづけた結果、“今ある幸せ”を感じられなくなってしまった──そんな人々が、先の調査で「自分は幸せでない」と回答した、という寸法か。
このトキシックな現象は、心理学の用語で「到着のファラシー(Arrival Fallacy)」と呼ばれる。
目標のために努力をしても、期待していたほどの喜びや達成感を得られずにがっかりしてしまう現象。
成功を収めても満足できず、すぐに次の目標に飛びつく……この繰り返しが、感じられるはずの幸福すらも蒸発させてしまうのだ。
ファラシーを抜け出す、
“Z世代的”幸福論
到着のファラシーは、設定した目標が外的な要因である場合、特に名声やお金、地位などである場合に起きやすいという。
こう聞くと、これはアメリカにとどまらず、現代社会における普遍的な課題であると言えるのではないだろうか。世間的な評価に迫られて窮屈になってしまう気持ち、今を生きる誰もがピンとくるはずだ。
となると、幸福度を上げるためには、まず根本的な考え方を見直すことが重要になる。
ここで役に立ちそうなのが、Z世代の幸福論。
経済が不安定で賃金も下がり続ける昨今、一昔前にもてはやされた華やかな暮らしは、そもそも非現実的。
そんな時代に生きるZ世代たちは、「経済的な豊かさや社会的な評価」ではなく「(精神的な)自分自身の豊かさ」に幸福を見出しているようだ。例えば、推し活によって熱量の矛先を愛するモノに向ける、とか。
あまり健全に聞こえないかもしれないが、少なくとも、得られるかも分からない社会的な名声に圧倒されるよりはコントローラブルだ。そして結果的に、アメリカン・ドリーム的なイズムからも抜け出せるだろう。
未来の幸せのために今を積み重ねるのではなく、自分らしい“今”を楽しむ。
もしも理想の将来に囚われて焦燥を感じてしまうなら、新しい価値観を取り入れつつ、あなたらしい幸せを見つけてみて。