ポートランドの意思を継ぐ、廃材レスキューという考え方(長野)
ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが、世界に向けて「MOTTAINAI」を提唱してはや10年。「MOTTAINAI」のは、何も水や電気だけのことじゃない。私たちが住むこの家も…?
空き家をめぐる決まりごと
2015年5月、日本で「空き家対策特別措置法」が施行された。誰も管理していない空き家は、指導・勧告・命令という段階を経て、市町村が「代執行」=強制的に取り壊せるようになったのだ。中には倒壊のおそれがある物件もあるので一概に否定はできない。だけど、2030年には空き家率が30%を超えるぞ、やれ壊せ! というのは、正直、違和感もある。
その翌年、2016年7月。アメリカ・ポートランドで、これとは真逆と言っていい条例が制定された。それは、築100年以上の建物は、手作業でしか解体できないというもの。重機NG。築100年というのは相当な年月だけど、この根っこには、
01. 古い家はなるべく活用する
02. 壊す場合は資材を再利用できるように工夫する
という精神があるんだろう。
ポートランド発の
「リビルディング・センター」
こんな条例をも作ってしまうポートランドは、世界的に有名な建築建材のリサイクルショップ「The ReBuilding Center」がある都市でもある。リビルディングセンターでは、廃材のリサイクルや販売はもちろん、地域のコミュニティ作りを目的に、工作クラスなども行われている。
そしてこのセンターの公式認定を受けたショップが、日本に1件だけある。その名も「ReBuilding Center JAPAN」。2016年9月、長野県諏訪市にオープンした。
見捨てられたものに
もう一度価値を
「ReBuilding Center JAPAN」を運営しているのは、かつて空間デザインユニット「medicala」として活躍していた東野唯史さん、華南子さん夫妻。
日本各地を転々としながら空間デザインの仕事をしていた東野さん夫妻は、その間に古い建物の解体現場に何度も出会ったという。
そして、廃材をレスキューすることで、見捨てられたものに価値を見出し、もう一度世の中に送り出して、次の世代につなげていきたい、と思うようになったのだとか。
廃材のレスキューは
思い出のレスキューでもある
身近なものは「もったいない」と思うけれど、古い家具、ましてや建物となればスケールも大きく、なかなか「もったいない」の意識にはつながりにくいのかもしれない。
けれど、廃材だって資源だ。
それに、水や電気とは違って、そこには思い出がつまっている。廃材をレスキューすることは、積み重ねられた年月に対しての敬意。消え去ってしまうかもしれない大切な思い出に、「もったいない」と手を差し伸べることなのかもしれない。