ひたすら新聞記事を解説するTikTokerがバズっているらしい
あなたが最後に新聞を読んだのはいつだろうか。
もしあなたがZ世代の若者なら、「新聞」という言葉を耳にした時、お年寄りが電車の中で片手に読んでいる景色が眼に浮かぶかもしれない。SNSの台頭によってあらゆる媒体が変化を迫られたが、若者の“新聞離れ”は特に深刻と言えるだろう。
そんな中、あるTikTokerがその現状を変えようとしている。
TikTokerが「ジャーナリズムの救世主」に?
ケルシー・ラッセル(@kelscruss)は、Z世代に向けて「新聞媒体の魅力」を発信しているクリエイター。TikTok上の動画投稿を通じて、わずか数ヶ月のうちに約10万人ものフォロワーを獲得した敏腕だ。
ケルシー・ラッセル(Kelsey Russel)
コロンビア大学院で教育社会学を専攻する23歳。大学院に通いながら、TikTokで「新聞解説系」コンテンツクリエイターとして活躍する。世界の最新情報を取り上げる記事を自らピックアップし、解説する動画を通じて、紙の新聞を発行する意義を見出す。
動画の内容は至ってシンプル。
10分間、彼女が面白いと思った新聞記事について、Z世代に向けて語る。最初にアップした動画は「自分への誕生日プレゼントに、初めて『ニューヨーク・タイムス』紙を定期購入した」というものだった。
23歳の誕生日祝いをきっかけに、彼女のTikTokerとしての活動がスタート。目的は、「新聞を普及するため、記事を読んで学んだことを記録すること」だという。
NYT紙の記事について20本以上ものコンテンツを撮影した後、ラッセルは他の出版社の新聞にも手を出し始めた。
彼女の動画は、新聞記事の内容だけでなく出版社の歴史についても詳しく解説しており、Z世代にとっての「新聞紙の入門」とも言える存在だ。
投稿には、以下のようなコメントが寄せられている。
"all of us in journalism trying to figure out how to get people to care about news and she just saved journalism in like a 30 second video" ー「ジャーナリズムで働く私たちが世間にニュースへ関心を持ってもらうために試行錯誤している中、彼女はたった30秒の動画でジャーナリズムの救世主となった」
"Ugh I love that you appreciate the paper - I’m going to ask this for my next gift. It’s so refreshing reading it and getting a phone break"ー「紙媒体へ感謝している姿勢は素敵と思う。次の誕生日プレゼントにこれ(新聞のサブスク)を頼むことにする。携帯から離れて新聞を読むと気分がスッキリするよね」
"I’ve wanted a subscription to the NYT but I also don’t wanna know about the bad stuff happening in the world anymore 🫠"ー「私もNYT(ニューヨークタイムス)のサブスクが欲しかったけど同時に、世界で起きている悲惨な出来事についてこれ以上知りたくないな🫠」
再び“新聞の力”が必要とされている
ラッセルは、現代の若者が新聞やニュースを避ける傾向にあるのは「悲惨な記事を目にすると、不安感や無力感につながるため」と主張する。
逆に、若者の情報源となりつつあるSNSでは、アルゴリズムによってユーザーの好みに添った“都合の良い”コンテンツばかりが流れてくる傾向がある。さらに、最近の調査では、若者にとってTikTokはGoogleに迫る情報ソースと見なされていることも明かされている。
だからこそ、TikTokで新聞に関する情報を得られる彼女の動画には、特別な価値があると言えるだろう。
変わらずに紙を愛読しているお年寄りも、デジタルネイティブなZ世代も。
情報が溢れかえって整理が難しくなってきた今、世界が再び“新聞の力”を必要としているのかもしれない。