ファストファッションは「ヴィンテージ」。元値15ドルのショーツが招く論争

13年前に「FOREVER 21」で販売されていたショーツが、フリマサイトでヴィンテージ品として出品され、物議を醸している。

@kaym0neyyy

These depop sellers must be stopped

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© kaym0neyyy/TikTok

話題のきっかけとなったTikTokによると、当時$15で販売されていたショーツの額は、「Depop」にてなんと$298に。

出品者は、この値上がりについて、「今年のコーチェラでバズっていた『Charlotte Russe』 のヴィンテージショーツと似ているから」と推察したが、ネットには「こんなのありえない!」「FOREVER 21と“ヴィンテージ”が同じ文面に存在していいわけない」など、非難のコメントが溢れかえっている。

 

「ヴィンテージ」に宿るもの

アンティーク鑑定の専門家によると、正式な“ヴィンテージ”とは洋服の場合、製造から20年〜100年以上経っているものを指すらしい。しかし、現在では「古くて価値のあるもの」と認められさえすれば、ヴィンテージを名乗ることができるようだ。

では、このレオパード・ショーツはどうなのだろう。

ここでひとつ振り返りたい事件がある。11年前の「ラナプラザの悲劇」を覚えているだろうか?

© fash_rev/Instagram

2013年4月、バングラデシュ・ダッカでファストファッションブランドの下請け工場が入る「ラナプラザビル」が崩壊。2500人以上の負傷者と1100人以上の死者を出した、あの事故である。

ビルのオーナーは脆弱な耐震性、劣化からの崩壊の危険性があると知りながらも、利益追求のために従業員に労働を強制。結果、多くの命が犠牲となった。アパレル業界の利益追求が招いた惨事は、ファストファッション業界最悪の事故と呼ばれ、以来、私たちは「安くて早い」ファッションからの脱却を図ってきたはずだった。

が、その反省されるべき文化が今、「価値あるもの」として市場に再登場している──。

もちろん、どんな服も長く着ることは大切。だが、ファストファッションをヴィンテージと形容し、“受け継ぐべきもの”かのように後世に残すことは、果たして賢明といえるのだろうか。

選び方だけじゃない、“遺し方”も

エシカルであること、サステイナブルであることがイケているとされる昨今、ヴィンテージセカンド・ハンドといったワードを様々な場面で見かけるようになった。しかし、残念ながらそうしたワードは形骸化しつつあるように思えてならない。

SNSの発達はトレンドサイクルを年々加速させている。私たちがつい5年前に着ていた服が、α世代にヴィンテージと謳われる日もそう遠くないかもしれない。そのとき私たちが循環させるべき価値とは、いったいなんなのだろう?

服の選び方だけでなく、“遺し方”も問われている。

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