この映画はアル・ゴアからあなたへ託された1通の手紙だ。
2006年に公開された『不都合な真実』は、アカデミー賞を受賞して、世界中で大ヒットを記録したドキュメンタリー映画だ。語り手は、ノーベル平和賞を授与されたアル・ゴア元副大統領。気候変動および、地球温暖化をテーマにした映像は、賛否両論で様々な議論を呼んだ。
あれから、10年が経過した。想定外の豪雨、気温50度を越える酷暑、人々を襲う台風、洪水ー。僕たちを取り巻く環境が、深刻な状態に陥っているのは誰の目にも明らかだ。続編となる本作品『不都合な真実2:放置された地球』では、思わず息を飲む衝撃的なシーンが数多くある。まずは、こちらの映像をチェックして欲しい。
肌で感じられるようになった
気候変動
グリーンランドで気温上昇によって破裂する氷河、一面の氷河融解によって海になっている光景。長年に渡り環境問題に取り組んで、幾度となく悲惨な状況を目の当たりしてきたゴアではあるが、その厳しい表情は非常に印象的だ。
でも、それは、まさに氷山の一角に過ぎない。インドで溶けたアスファルトに足を取られる女性、洪水により沈んだ車から危機一髪で助けられるルイジアナ州の人々、フロリダの道では海水魚が泳いでいる様子、フィリピンでは観測史上最強の台風によって屋根に逃げる男性、アリゾナ州を襲うSF映画のような豪雨…。それらをニュース映像で見た人は多いと思うが、どこか遠い国で起きている災害だと捉えていたフシはないだろうか。
しかし、もう、目を覆うことも、耳を塞ぐこともできなくなった。今年、東京では、連続21日間に渡って雨が降り続き、九州北部では気象観測史上最大級の1時間に100mmを超える集中豪雨に見舞われた。2010年の夏には、記録的な高温が続き、日本国内で1,700人もが熱中症で亡くなっている。誰もが、異常な気候変動を肌で感じているはずだろう。
揺るぎない信念に基づく行動
ゴアは、気候学の第一線にいる科学者を定期的に訪ね、助言を求めている。科学者たちは、他者がほとんど目にする機会がないような急速な変化を観察しているからだ。ゴアは科学者たちの声を代弁して、世界に緊急メッセージを発しているのだ。
また、ゴアは、『不都合な真実』の公開後、「クライメイト・リアリティ・リーダーズ・コース」というトレーニング・プログラムをテネシー州で開催した。このプログラムは、他者にも自身の言葉で話せるようになることを目的として、世界中で実施されているのだ。本作でも、ゴア自身がマイアミ、ヒューストン、北京、マニラなどでトレーニングを実施する様子が映し出されている。
僕は、この2つの活動の繋がりがとても気になった。それは、ゴア自身が、将来を見据えて、真実を話す勇気、そして、その能力取得を懸命に人々に伝えようとしているとも捉えることができるからだ。
彼は69歳だが、いまだに、全身全霊で地球温暖化に取り組んでいる。前作より、激しい口調で訴えている本作。そして、世界中で奮起するゴアの姿には、胸を打つものがある。見えない敵と戦い続けるスタンスには、揺るぎない信念をも感じることができる。それは、次のゴア自身の言葉が如実に語ってもいる。
「人間の知恵と情熱により、気候変動による危険は乗り越えられる」
COP21における
ゴアの知られざる役割
本作の1つのハイライトは、2015年にパリで行われたCOP21(気候変動組枠組条約締約国会議)だ。COP21がはじまる前、パリの街がテロ攻撃に巻き込まれ130人もの無実な人が命を奪われたことを記憶している人は多いだろう。パリが悲しみに暮れる中、会議ははじまるが、インドが、化石燃料による発展途上国の発展を維持する権利を主張した後、話し合いは行き詰まることになる。
インドの主張はこうだ。「アメリカは石炭を燃やしながら経済成長し、都市も繁栄する。インドや他国もそのチャンスがあっていいのではないか?」
ここまでは、衆知の事実だが、この時、ゴアが重要な役割を担って、最後の一瞬まで必死で交渉を成立させることは、映画製作者も含めて、知る術はなかった。具体的には、ゴアはフランスの外務大臣と国連気候変動枠組条約長に会いに行き、最新の代替エネルギーを利用できるようにインドを説得することに協力を仰ぐ。そして、世界銀行にインドでの太陽光発電インフラのために10億ドル(約1,121億円)ローンを組んでもらうように話を進めるのだ。同時にアメリカ最大の太陽光発電製品・プロバイダーであるソーラーシティ社との取引をする。これが引き金となってインドを説得することに成功するのだ。
そんな舞台裏が覗けるのも、見どころの一つとなっている。
『不都合な真実2:放置された地球』
2017年11月17日(金)より、TOHOシネマズ みゆき座ほかで絶賛上映中。
公式サイトは、コチラ。
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