ギンガとモニカ・サウマーゾは、2019年のハイライトになる

「ブラジル音楽」と聞いてみんながイメージするものはなんだろう?

羽飾りをつけた女性ダンサーと賑やかな打楽器が乱舞するカーニバルのサンバか、はたまたカフェのBGMなどですっかり定着した感のあるボサノヴァだろうか。あるいは、クラブでよくかかるアシッドでダンサブルなブラジル音楽かもしれない。

うん。どれも間違いじゃない。

ブラジルという広大でカオティックな大地の音楽の一部だ。しかし、そこには世界でも最高級の音楽性と歌心を備えた宝石のようなミュージシャン、そして彼らが紡ぎ出す音楽が数多く存在する。4月に来日する、ギンガとモニカ・サウマーゾは、そんなブラジルの無形音楽遺産を代表する存在だ。

筆者は大学生の時から本格的にギターと作曲を始めた。そんな自分にとって、ギンガというとんでもないギタリスト、作曲家は、ファーストアルバムから常に追いかけ続けているアイドルのひとりでもある。YouTubeなどで映像を見ても、仰け反ってしまうような瞬間が多々ある。

その押さえ方あり!?

© Xandugo Bittencourt

例えばこの映像。ギンガには珍しいボサノヴァの名曲『小舟』のカバーなのだが、そのギターのハーモニーの妙といったら!最初のコードの押さえ方からもう……。

© violaoibericocd

ギンガの、作曲家やギタリストとしての魅力全開のインストゥルメンタルナンバー『指一杯に』。

彼は、おそらく世界で最も複雑で美しいギターのハーモニーとメロディを紡ぎ出す、異形の天才作曲家、そしてギタリストだ。ヴィラ・ロボスやアントニオ・カルロス・ジョビンに比肩しうる異才であり、歌も味があって筆者は大好きだ。

ブラジル音楽には、ジョアン・ジルベルトのボサノヴァに代表されるように、クラシックギター(ポルトガル語でヴィオラゥン)と歌、つまり弾き語りで音楽をつくる、という文化がある。

ギンガはそんなブラジル音楽のスピリットを継承しつつ、従来のブラジル音楽にはなかった(もしくはそれを発展させた)ハーモニーとメロディを「発明」した。ブラジル音楽をひとつ別の段階に押し上げた天才、と言って差し支えないと思う。

Jazzシーンのアイドル、エスペランサ・スポルディングや、バークリー音楽院、世界中の才能あるミュージシャンから尊敬され、深い教養やアカデミズムを感じるギンガなのだが、じつは音楽もギターも全て独学、譜面すら読めない、というから仰天してしまう。

日本でブラジル音楽を代表する歌姫と共演!

そんな彼と4月に共演するのは、母性と慈愛に満ちた声を持ち、抜群の音程のセンス、音楽性を備えた現代のブラジル音楽を代表する歌姫である、モニカ・サウマーゾ。筆者にとってのモニカの声は、ブラジリダーヂ(ブラジル的)そのものだ。

常にポリシーのあるレパートリーを歌い、ビシッと筋の通った活動で、ギンガやエドゥ・ロボといった、偉大な作曲家たちから絶大な信頼を得ている。彼女の憂いを含んだ深い声は、ブラジルの感情表現でいうところのサウダーヂ(郷愁と訳されることが多いけれど、もう少し複雑で広義の感情がある)をたっぷりと感じる。

ポップスシンガーだったら、サラ・ヴォーンやシャーデーに通じる、琴線に触れるハスキーさがあり、Jazz女性シンガーファンならイチコロでやられてしまう魅力があるだろう。

© roger b

Edu Loboエドゥ・ロボの名曲「ベアトリス」歌うモニカ。問答無用の歌声だ。

© Acordes do Rádio

ギンガの名曲『ゼーへのショーロ』。これが日本で聴けるかもしれない!

そんなブラジルの至宝であるふたりが、日本にやってくる!それも、クラウドファウンディングによって、彼らのアルバムを日本でつくる、というのだ。本国ブラジルでさえ、ふたりの名義でつくられたアルバムはまだない。そして、今回同行する管楽器奏者たち、これがまたとんでもなくすばらしい。この機会を見逃すわけにはいかないのだ。

© Ricardo Silveira

ひとりは、テコ・カルドーゾ。そのフルートを、ブラジルを代表するギタリスト、作曲家の一人であるドリ・カイミの名曲『Amazon river』で。各種サックス、そして各種フルートのブラジルを代表する奏者であり、ブラジルの女性シンガーソングライター、ジョイスのバンドで活躍していた。とくにアルト、バスを含むフルートの妙技は圧巻、というほかなく、世界的に見てもトップ奏者のひとりだろう。

© Instrumental Sesc Brasil

もうひとりは、ナイロール・プロヴェッタ。アルトサックス、クラリネットといった木管楽器の達人で、その甘いベタつかないセクシーな音色が絶品。動画は、ブラジルの作曲家ピシンギーニャの名曲をプロヴェッタのクラリネットで。この気品がたまらない。ジョイスのバンドでも、テコと二管で活躍していた。

© Auditório Ibirapuera

今回来日する予定の4人での演奏も!

そんな音楽大国ブラジルを代表するミュージシャンが日本に集結する奇跡に、今からワクワクしている。それに、アルバムを手掛けるエンジニアは筆者のアルバムでもお世話になっている、サイデラ・マスタリングのオノセイゲン氏だ。坂本龍一のアルバムなどで名前をご存知の方も多いでしょう。これほどの面子を呼べる日本の懐の深さはすばらしいと思う。

自分も「Saigenji / サイゲンジ」という名義のミュージシャンとして、今も絶え間無く創作活動ができているのは、彼らのようなミュージシャンを擁するブラジル音楽のインスピレーションがあるおかげだ。

ギンガが爪弾くコードから、モニカの歌声から、自分の曲も生まれてくる。フレッシュな天才を輩出し続けるブラジルでも、ギンガとモニカ、そしてテコやプロヴェッタは、特別な才能を持つトップランナーたち。

インターネットでブラジル音楽とのアクセスが容易になったとはいえ、ブラジル音楽の魅力は生の音でこそ、つまりライブでこそ本領を発揮する。歌の、ギターの、管の、楽曲の、そう、音楽の息遣いをぜひライブ会場で感じてほしい。

ギンガとモニカのライブは、音楽好きなら絶対にマストの、今年のハイライトになるはずなのだ。

Top image: © Thais Gallart-Acervo do Violão Brasileiro

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