史上もっとも売れたゲーム「テトリス」は、プラトンの理想主義そのものだ。
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
「テトリス」誕生
GTAよりもマイクラよりも、あのスーパーマリオよりも。世界でもっとも売れたゲームといえば、ゲーム史上もっとも有名でもっとも単純(?)なゲーム。
それが『テトリス(Tetris)』です。
落ちゲー(落ち物ゲーム、落ち物パズル)の元祖とも呼ばれるテトリスは、ソビエト連邦(現ロシア)のコンピューター技術者アレクセイ・パジトノフ率いる3名のチームによって開発。その最初のバージョンが誕生したのが、39年前の今日のこと。
ソビエト社会主義共和国連邦科学アカデミー(現・ロシア科学アカデミー)のコンピューター部門で働いていたパジトノフは、音声録音ソフトなどの開発に携わるかたわら、コンピューターゲームの開発にも取り組んでいたそうです。
当時はまだ冷戦の最中。西側諸国から検閲をかいくぐりやってきたコンピューターゲーム『パックマン』などのように、大衆を熱狂させるゲームをつくりたい。ところが、当時の科学アカデミーのマシンは、キャラクタユーザーインターフェース(CUI)と呼ばれる文字や記号の配列しか表示されない、かなりアナログなものだったとか。
アトラクティブなグラフィック制作は厳しい状況のなか、パジトノフはオリジナルのゲーム開発を進めました。圧倒的なハンディがありながらパズルに着想を得たテトリスはプログラマーたちを夢中にさせ、病みつきになる“なにか”を秘めていたようです。
4つの正方形を組み合わせてつくられたテトロミノ状の7種のブロックピースが、フィールド上方からランダムに落ちてくる。これをパズルのように組み合わせて列を消していくという、至極単純なゲーム性。
なのに、どういうわけか一度やると抜け出せなくなるような中毒性があり、みな病みつきになっていく……。タイルを埋め合わせていくだけのゲームに心奪われる人々。
その事実について、米メディア「Motherbord - VICE」では、こう解説しています。
「プラトンの理想主義をそのまま実現したような、原始的で純粋なゲーム性が知識人たちの心をガッチリつかんだ」。
いささか誇大な表現にも思えますが、複雑さのすべてを排除し、論理的思考と判断力でプラトニックにパズルのおもしろさのみを追求したゲーム。もしかしたら、そこに没入感にも似たある種のトランスを感じてしまうのかもしれませんね。
ともあれ、こうして1984年6月6日、科学アカデミーによって正式にリリースされた「テトリス」。その後、世界中で一大ブームを巻き起こしたのは周知の事実ですよね。
もちろん、日本でも。
アーケードゲーム版が登場すると、『インベーダーゲーム』以来の空前のヒットを記録しました。とんでもない速さで落下するブロックを涼しい顔で回転させる“テトラー”が出現。
さらにはプレイし続けることで脳が鍛えらえれ効率的に物事が行えるようになる「テトリス効果」や「テトリス脳」なる概念まで登場したりと、一塊の人気ゲームブームに収まらない、まさしく空前の社会現象となったわけです。
さて、最後にご紹介するのは、「テトリス」誕生の知られざる歴史に迫ったドキュメンタリー動画。
冷戦下の旧ソ連のプログラマーによって開発されたゲームが、いかにして西側諸国へと伝播し、空前の大ヒットとなったのか?
往年のテトリス世代ならずとも興味がもてる内容です。少々長いコンテンツですが、お時間あるときにご覧になってはいかがでしょうか。