Jiffcy 開発者 西村成城氏に聞く “ジフる”ザルファ世代のインサイト

テキスト通話アプリ「Jiffcy」(ジフシー)は、声を出さずにテキストのみで通話感覚のコミュニケーションを楽しめる新しいスタイルのサービスだ。ユーザーの9割以上が学生を占め、Z世代とアルファ世代の中間にあたるザルファ世代から大きな共感を得ている。

Z世代の代名詞であるInstagramやTikTok、BeRealのようなSNSではない。音声通話もできるメッセージアプリであるLINEやDiscordとも少し違う。もちろん電話でもない。

「Jiffcy」が掲げる「テキスト通話」は、電話のように相手を呼び出し、相手が応答するとテキストチャットがはじまる。入力中の文字もリアルタイムで表示され、自分や相手の状況によらず、まるで対面で会話しているようなコミュニケーションができるという。

今回、Jiffcyの開発者である株式会社穴熊の代表取締役CEO・西村成城氏に、「Jiffcy」の開発を通じて得られたザルファ世代のインサイトについて聞いてみた。

西村成城(にしむら まさき)

株式会社穴熊 代表取締役CEO。1995年生まれ。大学在学中の2016年に個人事業主として起業し、2018年に株式会社穴熊を設立。2023年4月に「Jiffcy」を完全招待制でリリースし、2024年7月に一般公開。『日経クロストレンド』の「未来の市場をつくる100社【2025年版】」に選出。

App Store:Jiffcy(ジフシー)

©株式会社穴熊

「電話はハードルが高い」から生まれた“テキスト通話”という発想

── テキスト通話アプリ「Jiffcy」を開発するきっかけとなった出来事はありますか。

大学在学中の2016年に起業して、大学の授業の口コミサイトやアプリなどを作るようになりました。エンジニアとしてアイデアを形にするのは楽しかったものの、10年、20年先を真剣に考えるようになった時に、実は悩んでしまって。

「世界中の人に使われるサービスを作りたい」と思いながらも、うまくいかず、落ち込んでしまったタイミングにコロナが直撃しました。一人暮らしで、なかなか人と会えず、仲のいい友だちと会話したい気持ちはあった。でも、自分にとって電話はハードルが高かったんです。

── 電話はハードルが高いですか?「Z世代は電話が苦手」と言われることもありますが、落ち込んで誰かと会話したい時、仲のいい友だちにかける電話も躊躇してしまうものでしょうか。

友だちだからといって、いきなり電話するって、結構ありえないことです。相手の時間を奪ってしまう可能性があるから、「迷惑になっちゃうかな」と感じてしまいます。

私は1995年生まれなので、定義によってはギリギリZ世代ですね。Z世代は、幼い頃からスマホに触れてきたデジタルネイティブで、「電話が苦手」というよりは、コミュニケーションにおいて相手に配慮ができる、相手に配慮することを重視している世代だと感じています。

電話をかける前には、LINEで「今、話せる?」とメッセージを送りますが、相手からすぐに返信がくるわけじゃない。例えば、6時間後に相手から「今なら話せるけど、どうしたの?」みたいなメッセージが来てしまい、必要以上に深刻な用事を抱えてる雰囲気が出て気まずくなってしまうことって、ありませんか?

── ありますね(笑)。「いきなり電話はありえない」と考える人の視点に立つと、いきなり以外の方法で電話をかけるプロセスって、確かにかなり面倒ですね。

はい。その経験から、仲いい人とじっくり深い話をしたいけど、最適なツールがないことに気づき、「テキストだけど電話のような、リアルタイムの深いコミュニケーションに価値あるんじゃないか」と考えるようになりました。

試しに友だちにアイデアを伝えた上で、「キリがいいところまで絶対にトークから抜けない」というルールを設けてLINEでメッセージのやり取りをしてみたら、すごく会話が盛り上がって、いつもとは違う深い感覚が得られたんです。

── なるほど。スマホの向こう側にいる相手に迷惑がかかっていないと知っていて、リアルタイムでトークの時間を設けることに合意できていたから、安心して会話も弾んだんですね。

そうなんです。LINEは相手にいつでもメッセージを送れて、お互いが好きなタイミングでメッセージを読んで返信できるから便利なんですけど、あえてそこをなくしたら、別の価値が生まれるのではないか、と。

最初に試作したのは、アプリを開いたら友達に通知が届き、暇な人が応答してチャットが始まるというもの。通知だけではチャット相手が現れないこともあり、電話と同様の音と通知で相手を呼び出す機能を後付けすると、「声を出さずに通話するような感じがする!」とユーザーから教えられ、そこで自分が本当に欲しかったものが明確になったんです。そんなふうに、テキストなのに通話感覚のコミュニケーションができるサービスとして「Jiffcy」が生まれました。

お互いにとって負担なく、心地よく「つながってる感」を実現

── 開発者として、Z世代とアルファ世代の中間である「ザルファ世代」が「Jiffcy」を選ぶ理由を何だと考えますか。

電話のように相手を拘束せず、LINEのように既読・未読やレスの遅れを気にする必要もない。彼らのインサイト「本物のコミュニケーションをしたい」と「相手に配慮したい」の両方をバランスよく満たしているからだと考えています。

── 角度を変えて再度伺うのですが、「仲の良い人とじっくり話したい」という初期衝動は、「声を聞きたい」とは異なる感覚だったのでしょうか。

単純に「声を聞きたい」ではなく、「つながってる感が欲しい」なのかもしれません。相手とつながってる感覚があれば、声が聞こえなくても別にいい感じはありますね。

ただ、当然、ユーザーによっては、相手の声を聞きたい時もあると思うんです。例えば、付き合いたてなら照れくさい感じで電話したいじゃないですか(笑)。でも、相手と仲良くなったら、「Jiffcy」でテキスト通話する方が楽だし、愛情もちゃんと伝わります。テキスト通話は、お互いにとって過剰じゃない、心地いいコミュニケーションなんです。

非対面でも間を察するザルファ世代の“超”サイレント・コミュニケーション

── なるほど。声は出さずとも、気持ちがつながるのですね。ちなみにユーザーからのフィードバックで印象的だったものはありますか?

「Jiffcy」を使っている理由を聞いたところ、「彼氏と喧嘩にならないから」という方がいました(笑)。

── ん!「喧嘩にならない」って、どういうことですか?

「Jiffcy」のテキスト通話では、2段のメッセージボックスの上段に相手が入力するテキストがリアルタイムで表示され、相手の入力テンポや間から感情を汲み取ることができるんです。リアルな会話のように相手が冗談で言っているのか本気で言っているのかきちんと伝わるし、テキスト通話なら相づちも可視化されます。逆に相づちがないことで、「相手を不機嫌にさせてしまったかな」ということにも気づけます。

── テキストの入力テンポや間で相手の感情まで汲み取ってしまうんですね。ザルファ世代、恐るべし!

元々、Z世代やアルファ世代は、テキストコミュニケーションに慣れていて、会話の間をコントロールする、間を察するスキルに長けているんです。LINEの返信が早過ぎたら、なんかちょっとストーカーみたいだから、あえてワンテンポ返信を遅らせてみたり。

そこまで配慮しても、LINEで可能な表現力には限界があって、誤解が生じることがあります。冗談で言ったつもりが、怒っていると思われて「怒ってるの」「怒ってない」「怒ってるじゃん」「いや、怒ってないよ」みたいなすれ違いから、本気の喧嘩に発展することもありますから。

── なるほど!LINEってもはや社会インフラとして欠かせないものだけど、未読とか既読とかを気にしすぎてマイクロストレスの原因になっていた部分もあるかもしれませんね。

私たちの世代にとって、LINEは電話帳のような存在かもしれません。中学の頃の友だちと連絡取りたいならLINEで探すし、一斉連絡もするし、日常生活に欠かせないことは、これからも変わらないと思うんです。ただ一周回って、LINEが来すぎるから未読無視が当たり前の状態になっているかもしれない。返信し続けないといけない地味なストレスから逃げるために「Jiffcy」を使っているという人もいますね。

ただ、「Jiffcy」はすごく親しい人同士でしか使わないんです。カップルと、家族と、いつも一緒にいる友だちだけ。ユーザーは、そういうふうに使い分けています。逆に親しくない相手と使うと、とても気まずくなるんです。親しくない人との会話特有の「シーン」とする瞬間が可視化されてしまう(笑)

── ザルファ世代は、親しい相手に配慮しながら、より繊細に感情を汲み取った深いコミュニケーションするために、賢く使い分けをしているんですね。「最近の若者は電話もできないのか!」と思い込んでいる大人にこれ伝わってるかな(笑)

あまり伝わってないと思うんですね(笑)。それに、ただのエンタメとして認識されるのは違う。リアルタイムのテキスト通話は、Z世代やアルファ世代に、より実用的でベターな新しいコミュニケーションの形を提供していると考えています。

愚痴と恋バナも気まずくならない。親密で本質的なつながりを強化

── 「Jiffcy」ではどのようなトピックの会話が交わされることが多いですか?

大きく分けて2つあります。ひとつが実用的なコミュニケーションです。例えば、「課題って何ページだったっけ?」「コンビニ寄るけど、何かかって行こうか?」のような会話です。もうひとつが、愚痴と恋バナですね。

── 愚痴と恋バナ!それは気になりますね。

愚痴と恋バナは、特にLINEで失敗しがちなトピックですので「Jiffcy」に向いていると思います。例えば、テンポよく会話が進んでいる時にノリで「今日、〇〇先生マジ最悪だったよね」とLINEを送った後、相手からすぐ返事が来ないと、ガチ感出ちゃうじゃないですか。

恋バナも「〇〇くん、ありかも」って、さっきの流れだから冗談で言ったのにみたいな……。翌日既読ついても、本気っぽい雰囲気になっちゃう。「Jiffcy」はお互いに挨拶して消えるので、心配する必要がないんですよ。

── Jiffcyのユーザーの間で、新しい言葉は生まれていますか?

「Jiffcy」でテキスト通話をかけることを「ジフる」と言いますね!

── 「ググる」「タグる」「トクる」の次は「ジフる」ですか。

はい。「テキスト通話をする」という表現のは長すぎるので、ユーザーの間では「今夜、ジフるね!」のように普通に使われています。

また、会話を終えるときはお互い「じゃ」とだけ送って別れる文化ができています。「さようなら」「またね」よりもシンプルな、2文字の別れの挨拶です。こうした独自の表現が生まれるのは、コミュニティが成熟している証かなと思っています。

── 「Jiffcy」を通じて、ザルファ世代のコミュニケーションにおいて価値観の変化を感じることはありますか?

これからますます分断が進んでいくなかで、親しい人とはもっと親しくなろうとするし、親しくない人とはもっと距離置いてもいいよね、と。テキストであれ、ビジュアルであれ、音声であれ、ごく親しい人との親密で本質的なつながりを強化するタイプのサービスが選ばれるようになってくると考えています。

暴走族って、多分、仲間意識すごく強かったと思うんですよね。そこから数十年経ってソーシャルメディアが生まれて、世界中の人とつながれるようになって。「狭い集団の仲間意識ってダサい」って感覚があったと思うんですが、世界が拡大し続けた結果、原点回帰として自分にとって身近な仲いい人を大切にしたいという気持ちが加速していくのではないでしょうか。

── 今後の「Jiffcy」の展望について教えてください。

今後は、海外展開を本格化していきます。特にアメリカ市場での展開を強化していく予定です。今は「Jiffcy」のユーザーである高校生や大学生と一緒に、むしろ彼らから学びながら新しい機能も検討中で、世界に広めていこうと考えています。

── 今日はインタビュー、ありがとうございました。じゃ!

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。

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