氷河の消滅によって「新奇な生態系」が出現……?
気候変動により世界各地で氷河が消失しており、特に北極は他地域に比べて2倍の速度で温暖化が進んでいるという。
「Nature」誌に掲載された研究結果によると、南極とグリーンランドを除く氷河で覆われた地域の半分は、今世紀末までに消失する可能性があると言う。また、わかりにくい表現だがその規模はなんと、ネパールとフィンランドを合わせた大きさ(約48万5700㎢)に匹敵するそうだ。
アメリカ・モンクトン大学の生物学教授、ニコラ・ルコント氏は「温室効果ガスの排出量が大幅に削減されなければ氷河の消失はかなり早く起こり、生態系の急速な変化も促進されるだろう」と警鐘を鳴らしている。
以下の動画は、住宅や樹木が溶け出す氷河に飲まれていく様子。これは津波や河川の氾濫ではなく、紛れもなく「氷河の消失」が生んだ結果だ。
そしてルコント氏は、「氷河の消失が進むにつれて新奇な生態系が形成され、氷と極寒の大気に依存する種を絶滅させる生息地が出現する可能性がある」と述べた。
氷河には寒冷な環境にもかかわらず、野生動物を含め多様な微生物が生息しているがこれはすなわち、氷河は「生物のいない世界」ではなく、微生物群集を含む一つの「生態系」とみなすことができる。
しかし、科学者たちの見解によれば、種の大幅な減少と個体数の減少が予想されており、氷河の近くに生息する種は絶滅する可能性が特に高いとのこと。それと言うのも、急速に進む温暖化と種の適応・進化の位相が完全にズレているため、ヨーロッパのアルプスやヒマラヤのような極寒気候の地域では、これらの種は逃げることができないようだ。
彼らの研究によれば、溶ける氷河によって残された生息地は78%が陸上、14%が海洋、8%が淡水に分類される。
ということは、被害を受けるのはわれわれ人間も同じ。氷河の消失は水源の確保や洪水現象にも大きく関与しているため、遠い国で起きていることが私たちの生活範囲にまで及んでくるのは、もはや時間の問題。
地球は悲鳴を上げ、こうして私たちに何かを伝えようとしているのでは……?