未来の大陸にて、哺乳類は「ほぼ確実に絶滅」する──超大陸パンゲア・ウルティマの環境予測が発表

強烈な太陽エネルギーが降り注ぎ、毒ガスが充満し、絶えず火山が噴火する極暑地帯……地球の将来は、このディストピア系SF映画のような景色かもしれない。

9月に『Nature Geoscience』誌に掲載された新たな研究が、将来の地球の姿と、そこでの生物の未来を予測する。いわく、超大陸パンゲアへと戻った大地にて、ほぼ全ての哺乳類が絶滅すると考えられているらしい。

パンゲア大陸とは

パンゲア大陸は、2億年以上前に存在したとされる、全ての陸地が集約された超大陸のこと。

プレートテクトニクスによって存在していたすべての大陸が衝突したものであり、現在の6大陸の元でもある。

完成した頃の大地は火山活動が盛んで、それ以前の時代(古生代)を生きていた生物の95%以上が絶滅したほど過酷な環境だったそう。その後も生物の多様性は乏しく、特に内陸部は海から遠過ぎたため、荒れた砂漠が広がる不毛の地と言える状態だったようだ。

現在は考えられないほどの異世界だが、20億年にわたって大陸は動き続け、数億年に一度の周期で超大陸を形成してきた。つまり、周期が満ちれば、世界は再び「一つの大陸」に戻るのだ。

地獄のような環境が、未来に再び。そしてその世界には、人類の居場所は無いかもしれない。

数億年後、世界は再び一つに。
パンゲア・ウルティマ」大陸の誕生

約2億年前に分裂し、パンゲア大陸は現在の6大陸となったわけだが、現在もこれからも、プレートの流動は続いていく。

「大陸サイクル」と呼ばれるこの理論によって、次のサイクル=2〜3億年後には、地球の陸地は再び元の姿に戻ると考えられているのだ。

未来の陸地は、全ての大陸が合体した、かつてのパンゲアに近い姿になることが予想される。これが、「パンゲア・ウルティマ(またはパンゲア・プロキシマ)と呼ばれる次の超大陸である。

流れとしては、まずアフリカの北上が進み、ユーラシア大陸と合体する。さらに大西洋の海嶺が沈んで南北のアメリカ大陸が引き寄せられ、ユーラシア・アフリカと融合。

オーストラリア、南極も東アジア部分に衝突し、すべての大陸が合体するシナリオが予想されている(オーストラリアと南極は独立した大陸になるとする理論も)。

© Algol/YouTube

新大陸は、哺乳類にとって絶望的な環境

ブリストル大学のAlexander Farnsworth教授率いる研究チームは、スーパーコンピュータを使ってこの大地の環境を予測した。

簡潔に言うと、パンゲア・ウルティマの気候は哺乳類にとって「極めて過酷」なようだ。

内陸のほとんどが沿岸部から遠のいて極度に乾燥する上、気温は40〜70°Cにまで上昇。植物の生育条件を満たせず砂漠化する上、地表の下ではマグマが蠢き大量の二酸化炭素が排出され、太陽の放射エネルギーも増加……絶望的だ。

一方の沿岸部は、極端な海面蒸発によって凄まじい湿度となるため、これもまた哺乳類には厳しい環境の模様。

「湿度があまりにも高いと、哺乳類は発汗による体温調整ができず、臓器が煮え上がるほどの体温になってしまいます。」Farnsworth教授は語る。

人間を含む哺乳類の耐性から考えると、この大陸における居住可能エリアは全体のわずか8〜16%程度しかないという。現在は最も過酷である北端や南端といった極地が、むしろ唯一の救いになるかもしれない。

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ただし、そもそもこれは「2億年後」の話。
私たちには“いま考えるべきこと”がある

来たるパンゲア・ウルティマは、現在の生物からすると恐ろしい状況だが、これがやってくるのは早くとも2億年後、想像もつかないほど先の未来だ。

「今から2億5千万年前を振り返ると、悠然たる現在の山脈は一つも存在せず、生物圏も完全に異なる。私たちが知る地球とは、全くの別物です。」構造地質学者のMarcia Bjornerud氏は説明した。

絶望の新大陸が来るのは遥か先で我々にはほぼ無関係だし、遠い未来世界の話は、面白くて興味をそそるトピックであろう。

だが、人為的な気候変動に直面している今、我々が注意すべきことは他にもある:如何にして、これを「遠い未来の話」に留めておくかだ。

環境問題の深刻化により、同様の大量絶滅が今後一世紀以内に引き起こされる可能性は迫っている。

気温は上昇を続け、木々が消え、CO2濃度が上昇し、オゾン層の破壊で太陽エネルギーも増加……パンゲア・ウルティマの環境は、いま我々が考えるべき問題を喚起させる。

2億年後の大変化を乗り越えられるかは分からないが、一世紀後の破滅を食い止めることはできるはずだ。ただ”考えるべきこと”を考えていれば。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。