5000km離れた都市間を繋ぐ「巨大ポータル」が、思わぬ大混乱を招く結果に……

2024年5月、アイルランドのダブリンと米ニューヨークそれぞれに、両都市を繋ぐ「巨大なポータル」が出現した。5000kmも離れた両側の市民が互いに顔を見合わせ、リアルタイムで通信できるように。

2つの都市を繋ぐという画期的なプロジェクトだが、開始からわずか1週間も経たないうちによもや大混乱を招いてしまい、一時中止にまで追い込まれたという。

一体、何が起きたのか……?

リモート国際交流

© FOX 5 New York/YouTube

そもそもこのポータルは、リトアニア人アーティストBenediktas Gylys氏によるもので、パブリックアートプロジェクトの一環。

偏見や対立を超えて人々を結びつける橋」としての役割を果たすために、彫刻作品として設置されたポータルは約11トンもの重量。SFドラマ『スターゲイト』から着想を得て制作したという。

ダブリン側、NY側、どちらもあえて人通りの多い場所に設置されたポータル、最初は互いに戸惑いながらも不思議そうに画面を見つめ合ったり、手を振ってみたり。Gylys氏の思惑通り、徐々に新たな交友関係が生まれようとしていた。

しかし、それも束の間……。

ポータルから生まれた"カオス"

どれだけ高機能なテクノロジーが発達しても、それを悪用しようとする人の存在は避けられないのが世の常。

やがて緊張が解けてきたダブリン側で、何を思ったのか2020年に射殺されたラッパーへの言及を示す「RIP POP SMOKE」というメッセージを掲げたり、「9.11(アメリカ同時多発テロ事件)」の画像をどアップで見せつけたり。一部の人々がモラルに欠けた行為を始めたのだ。

ニューヨーク側も負けじと、これに対抗。

男性がパンツを下ろしたり、成人向けSNS「OnlyFans」でモデル活動をするAva Louiseさんは公然とブラを外すなどの行動に出たものだから、現場はもはや“カオス”と化してしまった。

ダブリン側ではすぐさま警察が出動する騒ぎに発展し、理由は明かされていないものの「治安維持を脅かす事件」を起こしたとして、逮捕者まで出たという。

これで収まるかと思えば、公の場(しかもダブリン側は治安が悪いエリアだった)に24時間設置されていることも相まって、夜が深まるにつれカオスは混沌を極めるばかりに。

こうして制作者の思いとは裏腹に、設置からわずか1週間で500万もの人々が訪れたといわれるポータルは、一時閉鎖に追い込まれたのだった……。

© rare insults/X

両都市間に生まれた、新たな溝

「偏見や意見の相違を乗り越えるための、統一の架け橋」として設置されたポータルは、奇しくも新たな“溝”を生むという、皮肉な結果となってしまった。

こうした騒動を受けSNSでは、ポータルの設置場所に対して議論が生まれており、同月に報じられたラッパーのDrakeとKendrick Lamarの故郷であるトロントとコンプトンが最適だったのでは?という意見も。

ところで、すぐさまポータルは撤退していくのかと思いきや、現在、監視役のガードマンを配置し今年秋まで設置を継続していく予定だという。

SNSの発達にともにない、顔を出さずともヘイトや誹謗中傷を書き込めてしまう現代。ポータルの画面に映るお互いが遠く離れた場所にいて、この先二度と会うことがないとしたとしても……。顔を晒してまでリスペクトに欠けた行為をしてしまうということに、疑問符を投げかけたい。

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