あの遊園地の記憶は、メリーゴーランドと共に。栃木・小山に残る笑顔の遺産
小さな頃、よく遊んだ思い出の場所は、大人になっても大切な場所。たとえそこが無くなってしまったとしても。
昔、ここに、遊園地があったんだ
栃木県小山市にある人気のショッピングモール「おやまゆうえんハーヴェストウォーク」。買い物から食事、映画館や温泉施設まであって、週末には小山市民を中心にたくさんの人で賑わいます。
今も昔も、大人も子どもも楽しめる場所。
だいぶ形は変わったけれど、ここは、ショッピングモールができる以前から小山っ子の笑顔で溢れていた場所なのです。
というのも、かつてここには「小山ゆうえんち」という遊園地がありました。小山ゆうえんちは1960年に開園し、残念ながら2005年2月に閉園してしまったのですが、ハーヴェストウォークの敷地内を歩いていると、今も当時の空気を残す「あるもの」に出会うことができます。
このメリーゴーランド
だけが残された
それは、このメリーゴーランド。もともとは神奈川の横浜ドリームランドという遊園地にあったものだそうです。2002年にドリームランドが閉園した時、小山ゆうえんちが引き取ったとのこと。2層式のアンティークで、同じ型のものがフランスにあるんだそうですよ。
もちろん、まだまだ現役で稼働。土日祝日は大人300円、3歳以上の子ども200円、平日は、誰でも無料で乗ることができます。
そして、現在このメリーゴーランドの運転係を務めている「ふくいさん」は、せっかくのアールヌーボー(20世紀初めのフランスでの芸術運動に影響を受けた手工業)様式なんだからと、このメリーゴーランドの雰囲気にふさわしいアコーディオンの曲を流しているんだとか。
もとの音楽は
「小山ゆうえんち〜♪」でした
もともとは、“小山ゆうえんち〜♪”っていう昔テレビCMなどで使われていたテーマ曲が流れていたそうですが、ふくいさんの選曲は、フランスのアコーディオンの名手、ダニエル・コランとギタリストのドミニク・クラヴィックのもの。伺ってみると、
「アコーディオンとギターのコラボが、フランスのストリートミュージックですから」
とのこと。
「次の回の曲をちょっと聞いていってくださいよ。オススメのCDをかけるんで。“パリ、街角のアコーディオン”(ダニエル・コラン)にしましょう」
と言って準備に向かった後、あ、やっぱり“ラ・セーヌ”(90年代録音のもの)にしましょう、と言って嬉しそうにCDをセットしてくれました。
ふくいさんの選んだ曲を聴きながら目の前でメリーゴーランドが回るのを眺めていると、シャンソンにはあまり詳しくないけれど、とてもいい気分になりました。そしてだんだんと、小山ゆうえんちの開園当時にタイムスリップしたような気持ちになっていきます。曲の向こうには、子どもたちの笑い声。
さすが、音楽を愛する人の選曲。この後もシャンソン談義、音楽談義に花が咲きました。ちなみにCDは、ハーヴェストウォーク内のTSUTAYAでお買い求めください(但し注文制/レーベルは「リスペクトレコード」)、とのことです(笑)。
「僕も昔デートで行きました」
by カフェ・フジヌマのオーナー
日が暮れてくると、メリーゴーランドの雰囲気はさらにグッとよくなります。きっと昔は小山っ子がこぞってデートに使っていたんでしょうね。同じハーヴェストウォーク内に店舗を構えるカフェ・フジヌマのオーナーさんも、小学生の時にダブルデートで来ましたよ、と言っていました。
せっかくなので私も乗ってみましたが、すっかり童心にかえってしまい、降りた後はちょっとスキップしたい気分でした。好みの馬やライオンを選んでまたがって、たった2、3分間回っただけで、大人も子どもも幸せな気持ちになれるのって、実はすごいことなのかもしれません。
小山を最も代表する場所のひとつで、みんなが大好きだった場所、小山ゆうえんち。
その遊園地は、今はもうないけれど、みんなが笑顔になった記憶は全部このメリーゴランドが覚えていて、今も思い出とともに回っているんだと思います。
東京にもメリーゴーランドはたくさんあるけれど、なんとなくまたこのメリーゴーランドに乗りに来たいと思いました。その時このメリーゴーランドは、私がワクワクしながら乗ったことも覚えていてくれるんでしょうか。
住所:栃木県小山市喜沢1475
TEL:0285-20-1616
営業時間:平日11:00〜12:00/13:00〜18:00、土日祝日10:00〜19:00
(営業時間内で、00分、15分、30分、45分と15分置きに運行します)
定休日:なし(天候により、運転を中止することがあります)