この「バングル」が、バングラデシュの妊婦を救う
バングラデシュは、妊産婦の死亡率が高い国のひとつ。2015年ユニセフの発表によると、日本の妊産婦死亡率が13,400人に1人なのに対し、バングラディッシュは240人に1人と約56倍です。
その原因のひとつとして「一酸化炭素中毒」があります。とくに農村部では、まだ十分にインフラが整っていないため、家事をする中で発症してしまうんだそう。
そんな現状を打破するための「バングル」が登場しました。
妊婦を救う
エキゾチックな「バングル」
「Coel」と名付けられたバングルは、一見すると普通のアクセサリーのよう。しかし中にスピーカーとLEDが組み込まれた、れっきとしたウェアラブルデバイス。
主な機能は、一酸化炭素の濃度が一定量を超えると、音声とLEDでアラートを出してくれる、というもの。
バングラデシュの農村部では、現在も煮炊きに、木炭や木材、動物の乾燥したフンなどが使用されていて、換気が不十分な屋内で煮炊きなどをしていると、高濃度の一酸化炭素に長期間さらされ続けてしまうことに。
これが、死産や胎児の先天的な異常を引き起こす原因になってしまうと言います。
またバングラデシュの地方では、十分な医療や助産婦指導を受けられないという、妊娠や出産についての知識不足も深刻な問題。そこで「Coel」は、栄養指導や生活改善のアドバイスを音声を流したり、定期的に診察を受けるよう促したりする機能も備えました。
最終目標は
女性が主体性を持つこと
開発元の「Grameen Intel Social Business Limited」によると、今回「女性に警告を鳴らす」機能にフォーカスしたのには、狙いがあったそう。
バングラデシュでは、文化的背景として家父長制があり、未だに女性の立場が弱いという問題があります。経済的にも役割的にも男性が主体を握っているこの地域では、女性が主体的にモノを買うことが難しいのです。
「だからこそ、女性だけが日常的に身に着けるバングルとして開発したんだ」
と、COOのパペル・ホーク氏。
Coelの広告動画でも、女性自身が買うのではなく、夫が妻への「贈り物」として渡しています。それはやはり、男性が財布を握っているという風潮を無視することができないから。
それでもGrameen社は、このCoelを手にした女性が、自分の身とお腹の赤ちゃんを守るために主体的な行動を促すための一助になれば、と販売を決定しました。
「Coel」は今後バングラデシュを皮切りにインド、ネパールでも販売予定。価格も12~15ドル(1,300円~1,600円)と、一般的なウェアラブル端末と比べてかなり価格を抑えています。
確かに「どんなにアドバイスやアラートがあったところで、結局は必要な栄養を摂るための食材を買ったり、換気扇を設置したりするお金がないと意味がないのでは」という指摘もあります。
しかし「Coel」を身につけることで、女性たちが自分で自分を気遣うよう意識付けすることはできますし、またこのデバイスの存在自体が、彼女たちの現実を世に知らしめるきっかけにもなりうるのではないでしょうか?