世界を変えようとする美術家の佇まいは、まるで哲学者のようだ。
2008年、ニューヨークのイースト川に4つの滝をつくった男がいる。彼の名前は、オラファー・エリアソン。このデンマークの現代美術家は、21世紀の現代アートに最も影響をおよぼす1人として知られている。
オラファーの作品は、光や空間、水、鏡、霧、影という自然現象や素材を巧みに使い、常に鑑賞者の知覚に問いかけながら「体験」を創出するインスタレーションが特徴だ。ここでは、そんな彼の素顔に迫るドキュメンタリー映画『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』を紹介していこう。
制作費17億円のアート作品
55ヵ国、140万人以上が目撃したと報告されている「ザ・ニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズ」。高さ最大36mから毎分13万リットルの水が流れる滝は、オラファーのパブリックアートでも最大規模だそうだ。
「ニューヨークという巨大な空間に見合う作品を作りたい」という意志のもと、2年もの歳月をかけて制作されたらしい。じつに制作費は約17億円、その経済効果は75億円以上とも言われている。
人は世界を変えることができる
本作品は、メインとしてニューヨークの滝プロジェクトを取り上げているが、オラファーの哲学、生き方、そして、世界中を飛び回るプライベートな姿なども収録されている。
日本にほぼ文献がないとされるオラファーの芸術論に触れるだけでも、観る価値はあると言える。
「アートは世界を変える一つの手段であり、人は世界を変えることができる」という言葉をはじめとして、随所に散りばめられた芸術論や理論はとてもユニーク。アーティスト自らの言葉を使って観客に語りかけるスタイルに、いつの間にかのめり込んでしまうことだろう。
『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』
2017年8月5日(土)よりアップリンクほか全国劇場ロードショー。公式サイトはコチラ。
© Jacob Jørgensen, JJFilm, Denmark