壊れたおもちゃの移植手術。「Second Life Toys」が教えてくれる命の意味とは?
子どもが大切にしていたぬいぐるみの脚がもぎれたり、耳がちぎれたり、破れてしまったら……。あとはもう、捨ててしまうだけでしょうか?
大切なおもちゃを「修理」ではなく、「移植手術」という方法で新たな生命を吹き込むというプロジェクトがあります。直すという意味では同じ。けれど、この“表現の違い”こそが大きなポイント。
誰かと協力しあい、
命をつなぐ「ぬいぐるみ」
また一緒に遊びたい──。
その想いに応えるこのプロジェクト「Second Life Toys」は、修復が必要なぬいぐるみを預かり、もう遊ばなくなって寄付してもらった別のぬいぐるみとの間で、「おもちゃの移植手術」を行うことにより、また子どもたちと一緒に遊べるよう命を吹き込むというのがコンセプトです。
たとえば、こんな感じに。
鼻が取れてしまったゾウに移植したのはリスのしっぽ。
両腕がほつれたクマでしたが、今では力強いサルの腕が。
左耳を失ったクマには、ネコの耳が。
胸ヒレを失ったクジラは、シカの耳が丁度いい大きさだったようです。
ちょっと色はヘンだけど、取れてしまったとさかの代わりをカエルの手がしてくれています。
クジラのぬいぐるみに着けられたのは、なんとコウモリの羽根。まるで空想の中の生きものみたいに生まれ変わりました。
これらは、移植手術を受けてきたぬいぐるみたちの一例。では、どうやっておもちゃとおもちゃのオペは行われているのでしょう。
おもちゃを通じた
「移植」の疑似体験
たとえばこのキリンのぬいぐるみ。破けた左前脚から綿が出てきてしまいました。でも、このキリンをとっても大切にしていた女の子がいます。また一緒に遊びたい。彼女はサイトを通じて「Second Life Toys」に修復の依頼をしました。
こちらは、もう遊ばなくなった子どもが「ドナー」となり寄付してくれたぬいぐるみ。女の子のキリンのために、このピンクのぬいぐるみがひと肌脱いでくれたのです。
スタッフの手によって丁寧に移植手術(修復)が行われ、失ったキリンの脚が新たに付け加えられました。
もちろん、元の通りの網目模様という訳にはいきません。それでも、新たな命を宿したキリンは、無事に女の子の元へ帰ることができました。後日、女の子はドナーとして提供してくれたピンクのぬいぐるみの持ち主に、感謝の手紙を送りました。
移植を待つ人間と、ドナーとなる提供者。それが「おもちゃ」というだけで、現実の臓器移植の現場と何ら変わることはない。臓器移植について親子で考えるきっかけをつくりたい。ここにキャンペーンの本当の目的がある訳です。敢えて「移植手術」という言葉を並べる理由もまさにそれ。
ドナーとレシピエント
臓器移植の実態。
まずは、知ることから
移植医療の普及・啓発を続ける「グリーンリボンキャンペーン」のディレクター雁瀬 美佐さんは言います。
「日本では今、移植を待つ人がおよそ14,000人ほどいます。その中でも臓器提供を受け『移植手術』を行える人は、年間300人程度。わずか2%ほどの人しか救われていないという現状は、世界と比較しても、日本は非常に遅れていると言わざるを得ません」
「Second Life Toys」プロジェクトを通じて、まずは遊びの中から子どもたちにも移植への関心を深めてもらいたい、とも。
ドナー提供への意識を高めるために、まずは知ることから。現在、キャンペーンサイトでは、ドナーとなるおもちゃの「寄付」と、移植によるおもちゃの「修復」希望を受け付けています。興味のある人は、こちらから。