【新潟県】築100年の木造家屋に出現した「巨大な泡」のアート作品

アートは見るだけの時代じゃない。空間と現象に“意味”を見つけるアート体験を——。

世界中で絶え間なく生み出されているインスタレーション・アートに焦点をあて、現役美大生である筆者が、今もっとも気になる作品を独自の視点をおり混ぜご紹介していくシリーズ企画。

第2回目は、新潟県で現在開催中の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」より、中国人建築家が手がける作品をご紹介。

自然と建築、新たな“共鳴点”を探る
インスタレーション

©MAD Architects, photo by Zhu Yumeng
©MAD Architects, photo by Zhu Yumeng

タイトル:『野辺の泡』
アーティスト:マ・ヤンソン / MADアーキテクツ

まるでチューインガムをぷくっと膨らませたような、木造家屋から広がる謎の白い物体。この作品は、新潟県十日市町に位置する室野集落にある、築100年の古民家の一部に設置されている。

作者に言わせると、人間が呼吸するときの軽やかさ半透明さを模倣した「泡」なんだそう。周囲の自然に溶け込む有機的な泡の中はドーム状の大きな空間となっているようだ。

内部に入ると、うっすらと見える外の景色が、私たちの感覚を曖昧にさせる。

©MAD Architects, photo by Zhu Yumeng

作品が設置された古民家は、2016年からアートギャラリー「中国ハウス」という名で中国の芸術的表現と文化交流の中心地として活用されてきた。

幾年と集落のなかで存在してきた古民家、その存在が“伝統の象徴”と化していくことを逆らうかのように、『野辺の泡』が新たな活力を家屋へと吹き込んでいくことで、脱象徴化を図ろうとしている。作品にはそんな意図があるそうだ。

アーティスト:マ・ヤンソンの世界

© madarchitects / instagram

『野辺の泡』の作者でありアトリエ系建築事務所「MADアーキテクツ」ファウンダーのマ・ヤンソン(馬岩松)は、“中国建築界の雄”として知られる人物。世界各地で巨大施設や高層タワーを手がける氏の建築や作品は、どれも意図的に確保された大きな空間が存在するという特徴がある。

© madarchitects / instagram

マ・ヤンソンのインスピレーションの根源にあるもの。それは、「地があり、天があり、その中間に人間がいる」という中国伝統の世界観。

古来中国の考え方によると、「空」の存在が人間の想像力を羽ばたかせてきたらしい。ところが、経済発展が飛躍的に進んだこの30年のあいだに、建築においては物理的性質こそが重要視され、「空という想像性の源に対して意識が薄まってきてしまった」と、マの思慮を『AXIS web』が伝える。 本来、建築とは多様な人々のライフスタイルを演出する舞台であり、建築家は素材や技術で空間を創造する必要がある。というのが彼の信念のようだ。

©MAD Architects, photo by Zhu Yumeng

こうした彼の空間に対する意識と、日本の昔ながらの家屋との融合が、今作品の背景に込められていることを知ると、あの「泡」の内側だけでなく、家屋も、さらには室野集落から眺める空にまで目を向けて作品に触れてみる必要がありそうだ。

なお、同作品は11月10日まで公開されているので、機会があればぜひ訪れてみてはいかがだろう。

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』

【会期】2024年7月13日(土)-11月10日(日) 火・水定休
※一部作品施設は定休日が異なる
【公開時間】10:00〜17:00(10月11月は10:00-16:00)
※作品によって公開日・公開時間が異なる場合あり
【会場】越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)

 

展示情報

【作品番号】D401
【公開時間】10:00〜17:00(10月11月は16:00まで)
【料金】[中国ハウス入館料]一般400円、小中学生200円 (期間によっては作品鑑賞パスポートや共通チケットを販売)
【休館】祝日を除く火水定休、冬季

 

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現役美大生がいまもっとも気になる
インスタレーション・アート

Top image: © MAD Architects, photo by Zhu Yumeng
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