「エディンバラ フリンジ」審査のないフェスティバル──ベンのトピックス
みなさん、ベンのトピックスにおかえりなさい!
7月は曇りが多かったけど、8月になってめっちゃ暑くなってきた。と、同時に2019年のフェスティバル・シーズンに突入です!今週、ベンはサマーソニックに行ってきます。そのことも、この連載で書きますね。
イギリスもフェスが多い国です。グラストンベリーは終わったけど、レディング&リーズ・フェスティバルやクリームフィールズなどの大きな音楽フェスはまだこれから。
で、 今回のトピックはもベンが何回も行ったことあるし、誰でも楽しめて……個人的に強い“つながり”があるフェスティバルのことを書きます。
イギリスで毎年8月に開催する
「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」
「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」は、フェスティバルじゃなくて、フェスティバルから発生した別のものなんです。
……ちょっとよくわからないですよね。理解してもらうためには、まず歴史を説明させてください。
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話のはじまりは1946年からです。戦後のイギリスで、たくさんの演出家とかインプレサリオ(歌劇やバレエの興行団体)が、芸術や音楽、演劇を通じて平和を願う国際的なフェスティバルを催そうとしたのがきっかけです。
でも、ロンドンはどこも復興中という状況。開催するのに他に場所はないかと、景色が美しくて15万の観光客を受け入れられるような大都市を探しました。そして選ばれたのが、スコットランドの美しい首都エディンバラ。
翌47年、「エディンバラ国際フェスティバル」が開催されます。ファインアートの展覧会にクラシック音楽の演奏会、オペラの公演……、さまざまな芸術が市内の劇場やコンサートホールで上演。国内外から大勢の観客が集まり、「エディンバラ国際フェスティバル」は大成功となります。
で、ここからがポイント。そんな大勢のオーディエンスがホテルなど帰っていくのを逃すまいと、賢いアマチュア俳優やミュージシャンがオフィシャルなものとは別に、周辺エリアでのパフォーマンスを始めたんです。次の年(1948)からは、フェスティバル開催地の周辺にさらにパフォーマーが現れるようになり、「fringe(フリンジ)=周辺、町外れ」っていう言葉が使われるようになったんです。
それが、「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ(通称:エディンバラ・フリンジ)」ってこと。
初期のエディンバラ・フリンジに集まったのは、アマチュア、セミプロ、プロに関係なく演劇をする人たちが中心。地元や隣のグラスゴーからきた俳優さんは一部で、多くはイギリス国内のほかの大学生たち(毎年8月だから、学生たちは夏休み)。エディンバラ大学の学生寮やYMCAは、彼らに泊まる場所と食糧を準備してくれました。
ベンの個人的な強い“つながり”はここにあります!
うちの祖父母(現在80代後半で、結婚して60年以上!)は、1953年にオックスフォード大学の演劇ソサエティのメンバーとして、ここで演劇デビューしました。
この祖父母のおかげで、ベンは幼い頃から演劇に関心をもつようになったんです。能楽や歌舞伎はあまり分からないけど、シェイクスピアやモリエールだったら、かなり詳しいんですよ。
今回、おじいさんにこの記事を書くことを連絡したら、下の写真を送ってくれました。
左はもちろんベンのおじいさんで、右の3人のうち、シャツにカーディガンを着ているのがおばあさんです。
その後の数十年で、「国際フェスティバル」も「フリンジ」もパフォーマンスの数はトンデモなく増えたし、その後にできた小さなイベントやお祭りもあわせて、フェスティバル(ズ)はエディンバラの街全体をあげたものになってしまいました。
エディンバラ・フリンジも、ちゃんと管理するために「エディンバラ・フリンジ・ソサエティ」が設立されるまでに成長。観光客がおもしろい公演はどれなのか興味をもつようになったので、ジャーナリストたちがコメントやレビューをつけるようにもなりました。ちなみに、ベンのおばあさんは、有名な劇評家からGoodレビューをもらったことを今でも誇りにしています!!
フリンジも含めて大盛況なフェスティバル
70年代、80年代になっていくと、エディンバラ・フリンジはクラシック音楽や伝統的な演劇から内容が変わっていきます。スケッチ(日本でいうコント)やスタンドアップコメディが主流になっていくんです。
誰でも出られるオーディションのないフェスだから、政治を風刺したものや、ブラックなオチだったりシュールなネタの“オルタナティブ・コメディ”が中心。才能のある若いコメディアンをスカウトするのに最適な場所のひとつにもなりました。
例えば、Mr. ビーンで有名なローワン・アトキンソンは、76年のエディバラ・フリンジで賞をもらって全国的に注目されるようになりました。テレビドラマ『Dr.HOUSE』などで知られるヒュー・ローリーと女優のエマ・トンプソンが所属していたコメディ・グループは最初のペリエ賞(喜劇賞)を獲得。マイク・マイヤーズとロビン・ウィリアムズも有名になる前にここでパーフォマンスをやってました。
日本のパフォーマーもけっこういるんですよ。90年代では、電撃ネットワークは毎年大人気でしたし、サイレントコメディが人気の“が〜まるちょば”も頻繁に参加。最近では日本人ブレイクダンサーもよく見ます。
行けば必ず楽しい最高の旅になりますよ
エディンバラ・フリンジのユニークなものにしているのは、オーディションが全くないこととパフォーマーに制限もないこと。そういうアナーキー感はスゴい楽しいんですよ!
無料イベントも、有料イベントもある。好きなように値段を支払うイベントもあります。アバンギャルドなクレイジー系パーフォマンスと伝統的な演劇が同じ区域でやってることもある。パンクバンドとオペラ歌手とバレエダンサーとベリーダンサーとパントマイマーを1日で見ることだってできる。朝は子供向けの楽しいショーをやってるかと思えば、夜じゃないと不適切なヤバいショーもあったり。
僕は何回もエディンバラ・フリンジに行ったことあるけど、毎回ぜんぜん違う経験をしてきました。まあ、英語が通じない人には、スタンドアップコメディーは難しいかもしれないんだけど、スゴい数のパフォーマンスがあるので、どんな人でも何かしら楽しめるものが必ずありますよ。
イギリスの最もキレイな都市(史上最高のイギリス映画のひとつ『トレインスポッティング』の撮影地ですよ!)で、幾千ものパフォーマンスを堪能するのは、最高な旅になるんじゃないですか?
ここにアップした公式PR動画からだけでも多彩さがわかるはず。ベンは、この動画を見ていたらイギリスに帰りたくなりました!